Sunday, October 2, 2016

世界一過酷なオリンピック選考会の結末

フィギュアスケート ソチ・オリンピック観戦ガイド (ワールド・フィギュアスケート別冊)

世界一過酷なオリンピック代表選考会となった2013年の全日本では、長かった3日間の戦いもついに終盤を迎え、いよいよ女子フリーの最終滑走者を残すのみとなりました。

【3日間にわたる死闘の幕引き】

この全日本の戦いを締めくくるのは、ショートで素晴らしい演技を見せてトップに立ち、オリンピックでも優勝候補として期待される真央ちゃんでした。

「ピアノ協奏曲第2番」に乗せてこの全日本最後の演技が始まり、音楽とともに緊張が高まっていく中、勢いよく挑んだ冒頭のトリプルアクセルはステップアウトし、2本目のトリプルアクセルはシングルになってしまいました。

しかし続くトリプルフリップを決めて立て直し、後半もダブルアクセル-トリプルトウループのコンビネーション、さらにトリプルサルコウと立て続けにジャンプを決めていきました。

続くトリプルフリップからのコンビネーションは2回転が1回転になってしまいましたが、最後のトリプルループを鮮やかに決めると、クライマックスでは観客の手拍子とともに全身を大きく使った迫力あるステップで演技を締めくくりました。

本調子ではなさそうでキスアンドクライでも元気がない表情だったのが気になりましたが、126点台という得点で最終順位は3位となり、ショートでの貯金とフリーでのミスを最小限に抑えた演技で無事に表彰台に上がることができました。

ラフマニノフ : ピアノ協奏曲 第2番 | 第3番 (Rachmaninov : Concertos pour piano 2 & 3 / Boris Berezovsky (piano), Dmitri Liss (direction), Orchestre Philharmonique de l'oural) [輸入盤・日本語解説書付]

こうして長い長い3日間の戦いが終わり、いよいよソチオリンピックの代表発表を残すのみとなりました。

【選ばれし者と選ばれざる者それぞれの想い】

この時点でオリンピック代表が決まっていたのは、男女シングルでは全日本優勝者の羽生くんと明子ちゃんだけだったので、その他の選手がどうなるかハラハラしながら代表発表の時間を迎えました。

シングルの選手はまず女子の発表となり、全日本女王の明子ちゃんの名前が呼ばれて拍手が起こり、続いて真央ちゃんの名前が呼ばれると歓声が上がり、最後に佳菜子ちゃんの名前が呼ばれて再び歓声が沸き起こりました。

女子は全日本のトップ3選手が無事に選出され、いよいよ最後は男子の発表となり、まず全日本王者の羽生くんの名前が呼ばれて拍手が起こり、続いて町田くんの名前が呼ばれると歓声が上がりました。

そして3枠目は誰だろうと緊張感が高まる中、最後に高橋大輔と名前が読み上げられた瞬間、これまで聞いたこともないような割れんばかりの大歓声が沸き起こり、会場中のファンが喜びを爆発させている様子に圧倒されました。

この日は男子の試合がなかったにもかかわらず、会場中がD1SKと書かれたタオルで埋め尽くされ最大級の歓声に包まれるのを目の当たりにして、大ちゃんがどれだけ多くのフィギュアファンに愛されているかというのを肌で感じることができました。

続いて四大陸選手権は小塚くんと織田くんが代表に選ばれ会場からおおーと歓声が上がりましたが、世界選手権はオリンピックと同じメンバーとなることが発表され、このときオリンピックにも世界選手権にも出られない小塚くんと織田くん、そして彼らのファンはどんな気持ちだろうと思うと切なくなりました。

そしてオリンピックと世界選手権の代表選手がリンクに登場し、次々とリンク中央で挨拶していきましたが、明子ちゃんに続いて名前を呼ばれた真央ちゃんはリンクに上がるとそのまま代表選手達のところへ行ってしまい、明子ちゃんに指摘されて慌ててリンク中央に戻って挨拶したところで会場からは笑いが起きました。

さらに続いて登場した佳菜子ちゃんもそのまま代表選手の列に並んでしまい、再び指摘されて挨拶しに戻るというコントのような展開に、会場は大爆笑となりました。

続く羽生くんと町田くんはしっかりと挨拶を忘れずに登場し、最後に大ちゃんの名前が呼ばれると誰よりも大きな歓声で迎えられ、こうして代表選手がリンクに出揃いました。

そして選手それぞれが自分の言葉で抱負を話し、代表選手の生の声を聴けて感激していましたが、シングルの選手で最後に話した大ちゃんは言葉を詰まらせ、まだ思いを整理しきれていない様子が印象的でした。

こうして初めての全日本の生観戦は幕を閉じましたが、この大会はそれぞれの選手にドラマがあり、オリンピック代表を勝ち取った選手はもちろん代表を逃した選手の魅力も知ることができて、私にとって最も心に残る大会となりました。

特に小塚くんの7拍子に乗せた軽快な滑りが楽しめるショート、美姫ちゃんのノーミスで復活を印象付ける渾身のショート、織田くんの猫足着氷の鮮やかなジャンプで魅了するフリー、そして知子ちゃんのどこを切り取っても美しく洗練されたフリーを観られたのは本当に幸せでした。

この全日本は選手層が厚く厳しい戦いとなりましたが、この代表選考の厳しさがこれだけ多くの心に残る演技を生んだとも思えるので、この場で素晴らしい戦いを見せてくれた選手全員に感謝しています。


こうして過酷な代表選考を経てついに迎えたオリンピックで、最も印象に残った演技について次回はお話しします。

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