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Wednesday, January 18, 2017

おそロシア時代の到来を確信した演技

パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 オリジナル・サウンドトラック

オリンピックシーズンの集大成となった2014年の世界選手権を3日間現地観戦し、男子はソチオリンピックの金メダリストである羽生くんが激戦を制し、羽生くんのスケート人生において大きな意味を持つワールドのタイトルを勝ち取る瞬間を目の当たりにしましたが、女子フリーだけは現地で観られなかったので自宅で見届けていました。

女子はショートで世界記録を更新した真央ちゃんを始め、カロリーナ・コストナーやユリア・リプニツカヤなどオリンピックのメダリスト達が注目を集める中、女子フリーで目を引いたのはソチオリンピックにも出場していなかったロシアの若手、アンナ・ポゴリラヤでした。

【ロシア女子の脅威を感じた演技】

「パイレーツ・オブ・カリビアン」の迫力ある音楽に乗せてポゴちゃんの演技が始まると、15歳とは思えない大人びた雰囲気と独特のオーラに惹きつけられ、冒頭のトリプルルッツ-トリプルトウループを鮮やかに決めると、さらに畳みかけるようにトリプルループ-シングルループ-トリプルサルコウの3連続も見事に決めました。

序盤から高難度ジャンプが続く見ごたえのあるプログラムにあっという間に引き込まれていき、2本目のトリプルルッツも軽やかに決めると、長い手足を生かしたスピンや全身を大きく使ったステップで惹きつけ、そのダイナミックな演技は曲の迫力にも負けておらず大器の片鱗を感じました。

そして神秘的な曲調に変わり後半に入ると、トリプルループに片手を上げたダブルトウループをつけて美しく決めて、さらにダブルアクセルを決めるとスタイルの良さが映えるスパイラルで魅了し、2本目のダブルアクセルとトリプルフリップも決めて恐るべき安定感を見せました。

続いて美しいレイバックスピンを披露すると再び迫力ある曲調に変わり、最後は長い脚を高速で勢いよく回すド迫力のスピンで、手足が長すぎてコントロールしきれていない様子でしたが、粗さがありながらも15歳とは思えない堂々たる演技で観客を魅了しました。

【ロシア女子の台頭を確信した瞬間】

この「パイレーツ・オブ・カリビアン」は迫り来る恐ろしさを感じるような曲調のプログラムでしたが、ダイナミックな演技で曲負けしないオーラを放つポゴちゃんにただならぬものを感じ、また後半の神秘的な曲調では15歳とは思えないほど妖艶で謎めいた雰囲気に惹きつけられ、このプログラムにはロシア女子の底知れぬ怖さと魅力が詰め込まれているなと感じました。

この圧巻の演技で131点台という高得点を叩き出してフリーでは3位となり、総合得点は4位で惜しくも表彰台を逃しましたがフリーの技術点では優勝した真央ちゃんを上回ってトップとなり、このシーズンのオリンピックと世界選手権ではロシア女子は2枠しかありませんでしたが、ポゴちゃんのこの演技を観てこれから女子はおそロシアの時代がやってくるなと確信しました。


ここまで2014年の世界選手権について振り返ってきましたが来週からヨーロッパ選手権を観戦する予定なので、次回からはヨーロッパ選手権についてお話ししたいと思います。

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Monday, January 16, 2017

日本の観客の恐るべき適応能力の高さ

Vol. 7-Crime Scene

2014年のソチオリンピックの後にさいたまで行われた世界選手権では、3日目の男子フリーで日本男子が壮絶な優勝争いを繰り広げ、ショート3位の羽生くんがフリーで追い上げてショート1位の町田くんと0.33点差でトップに躍り出るというドラマチックな展開となりましたが、羽生くんに続いてショート2位のハビエルが登場しました。

日本男子を破って優勝する可能性のあるハビエルに対し、アボットのときと同じように会場から大声援が送られるのを見て、日本の観客は何て温かいんだろうと感動し、生で観るのはNHK杯以来となるハビエルのフリーを楽しみにしていました。

【会場を盛り上げるエンターテイナーの演技】

「ピーター・ガン」のリズミカルな音楽に乗せてハビエルの演技が始まり、冒頭の4回転トウループを鮮やかに決めると、4回転サルコウはオーバーターンになりながらも何とかダブルトウループをつけ、トリプルアクセルも決めて順調な滑り出しを見せました。

そしてコミカルな曲に乗せてスピンとステップを披露し、妖しげな曲調に変わると会場の興奮が徐々に高まり、サックスの旋律に合わせた色気あふれる振付で「ヒュー!」と歓声が上がる中、後半の4回転サルコウを軽やかに決めました。

しかしトリプルルッツ-ダブルトウループのルッツがシングルに抜けてしまい、「あー・・・・・・。」と残念そうな声が会場に響く中、続くトリプルループは綺麗に決めて立て直すと、トリプルフリップ-シングルループ-トリプルサルコウの3連続も決めました。

再びコミカルな曲に変わると会場から手拍子が上がり、リズミカルな音楽に合わせた手拍子で盛り上がる中スピンとコレオシークエンスを披露し、トリプルサルコウも見事に決めると、最後のスピンが終わる前から会場は大歓声に包まれました。

NHK杯のフリーでは妖しげな曲調になると私自身戸惑いを隠せず、他の観客も戸惑っていたからか会場はあまり盛り上がりませんでしたが、この世界選手権では観客も大歓声で見せ場を盛り上げていて、日本の観客は適応能力も素晴らしいなと思いました。

初めてNHK杯でこのフリーを観たときはオリンピックシーズンにとんでもないプログラムを持ってきたなと感じていましたが、この世界選手権でさらに完成度を高めたフリーを改めて観てみると、最初から最後まで様々な展開があってワクワクするプログラムだなと感じ、試合とは思えないほど楽しんでいる自分がいました。

【激戦を勝ち抜いた価値ある優勝】

ハビエルはこの誰もが楽しめるフリーで179点台という高得点を叩き出し、最終結果は羽生くん優勝、町田くん2位、ハビエル3位となりました。

この世界選手権ではソチオリンピックの金メダリストである羽生くんが0.33点差で辛うじて優勝を勝ち取り、これから羽生くんの時代がやってくるんだろうなと思っていましたが、まさかこの後2シーズン続けて世界選手権で優勝を逃すとは思わず、今となってはこのとき優勝しておいたのは羽生くんにとって凄く大きかったなと思います。

Harlem Nocturne (Instrumental) (1996 Digital Remaster)

こうして男子の激しい戦いが終わり私は一度さいたまを離れますが、自宅でお茶の間観戦した女子フリーで印象に残った演技について次回はお伝えします。

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Friday, January 13, 2017

世界のトップを争う日本男子の黄金期

改訂版 - ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2014年ISU世界選手権 Beautiful Moments of ISU World Figure Skating Championships 2014 Saitama Japan (Beautiful Moments of Figure Skating)

オリンピックシーズンにさいたまで行われた2014年の世界選手権では、3日目の男子フリーで町田くんが2シーズンかけて熟成させた「火の鳥」を見事に演じ切り、最後にして最高の「火の鳥」を観ることができましたが、その町田くんと優勝を争う羽生くんの登場で会場は再び熱気に包まれました。

ソチオリンピックの金メダリストとしてこの世界選手権に臨み、誰もが優勝候補の筆頭だと思っていましたが、ショートでは珍しく4回転トウループで転倒してしまい、ショート1位の町田くんとは7点差のショート3位でフリーを迎えました。

【逆転優勝を狙って死力を尽くしたフリー】

「ロミオとジュリエット」の激しい旋律に乗せて羽生くんの演技が始まると、冒頭の4回転サルコウを何とかこらえ、続く4回転トウループを鮮やかに決めると、トリプルフリップも決めて順調な滑り出しを見せました。

穏やかな曲調に変わって後半に入ると、トリプルアクセル-トリプルトウループを何とかこらえ、2本目のトリプルアクセルは両手を上げたダブルトウループをつけて美しく決めると、続くトリプルループも綺麗に決めました。

しかしトリプルルッツの着氷で乱れてしまい、ヒヤッとしましたがシングルループとトリプルサルコウを何とかつけてコンビネーションにつなげると、最後のトリプルルッツも見事に決め、見せ場のイナバウアーで会場は最高潮の盛り上がりとなりました。

【2シーズンで見せた急成長と強さの秘訣】

演技を終えると力尽きたのかそのままリンクにしゃがみ込み、2シーズン前のロミオとジュリエットでも最後にばてていたのを思い出しましたが、あれから2シーズンでとんでもない成長を見せたなと思うと感慨深く、会場も総立ちで羽生くんの勇姿を称えました。

このフリーではこらえるジャンプが多かった印象ですが、1年前の世界選手権のフリーでもジャンプをこらえながらも何とか最後まで滑りきっていたのが印象的で、それまで試合でなかなか決まらなかった4回転サルコウを、2年連続で世界選手権のフリーで降りるというのは驚異的だなと思いました。

そして初出場の世界選手権から3年連続でフリーのジャンプを全て降りていてピークを合わせるのが上手いなと感銘を受けましたが、世界選手権ではショートで出遅れてフリーで挽回するというパターンが続いていて、ソチオリンピックでは金メダルだったもののショート1位で迎えたフリーでミスが続き不本意な演技となってしまったので、追われるより追う立場になったときに底力を発揮するんだなと羽生くんの強さの秘訣を見た気がしました。

この渾身のフリーで191点台という高得点を叩き出し、総合得点は282.59点で町田くんと何と0.33点差で辛うじてトップに躍り出るというとんでもない逆転劇を見せ、町田くんの心情を思うと少し切なさも感じましたが、世界選手権で日本男子が優勝争いを繰り広げるという歴史的瞬間に立ち会えるなんて凄く幸せなことだなと思いました。


こうして男子フリーでは日本人同士で激しい優勝争いを繰り広げる中、もう一人の優勝候補の登場で会場が再び熱気に包まれる様子は次回お話しします。

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Wednesday, January 11, 2017

空中戦に突入した今でも恋しくなる演技

改訂版 - ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2014年ISU世界選手権 Beautiful Moments of ISU World Figure Skating Championships 2014 Saitama Japan (Beautiful Moments of Figure Skating)

オリンピックシーズンを締めくくる2014年の世界選手権がさいたまで行われましたが、3日目の男子フリーではアボットの渾身の演技にアメリカかと思うほどの大歓声が沸き起こり、どの国の選手にも惜しみなく声援を送る日本の観客の温かさを肌で感じ、いよいよ日本男子が登場する最終グループを迎えました。

まずはショート1位でフリーを迎える町田くんが日本男子の先陣を切って登場すると、2年前のスケートアメリカで「火の鳥」を滑る姿を目の前で見ていた私は、あのときのスケアメと同じ衣装で登場する姿にこみ上げてくるものがあり、2シーズンかけて磨き上げてきた「火の鳥」の完成形が見られることをただただ願って見つめていました。

【2シーズンかけて熟成させた火の鳥の最後】

いよいよ激しい音楽に乗せて「火の鳥」の最後の演技が始まり、冒頭の4回転トウループを何とかこらえると、2本目の4回転トウループはダブルトウループをつけて綺麗に決め、続くトリプルアクセル-トリプルトウループも鮮やかに決めました。

そして優しい曲調に変わって後半に入り、2本目のトリプルアクセルを何とかこらえると、足換えキャメルスピンでは鳥が羽ばたくように右手をひらひらと優雅にはためかせ、トリプルループはオーバーターンになりながらも何とかこらえました。

こらえるジャンプが続いて心配になりましたが、続くトリプルルッツは美しく決めて着氷後も両手をくるくると華麗に回す振付で魅了し、トリプルフリップ-ダブルトウループ-ダブルループの3連続も軽やかに決めると、最後のトリプルサルコウも見事に決めました。

ジャンプを無事に終えてすでに感極まっていましたが、全日本でもジャンプを全て決めたものの最後のコレオシークエンスの途中でつまずいてしまったので最後まで油断できず、コレオシークエンスから最後のスピンまで無事に終えるのを見届け、フィニッシュポーズを見てようやく「火の鳥」が完成したんだと感無量でした。

【2年間の成長とこだわりを感じさせる演技】

フィニッシュとともに大歓声が沸き起こり、会場は総立ちで町田くんの勇姿を称え、私も2シーズンかけて完成させた「火の鳥」の最後を見届けることができて感激し、天井席でしたが立ちあがって精一杯拍手を送りました。

この演技が観られただけでも満足でしたが、184.05点という全日本より高い得点でパーソナルベストを更新し、2年前のスケアメでは154.17点だったことを思うと、あれから2シーズンが経ち再び同じ衣装で滑って30点も高い得点を出すなんて夢のようでただただ胸がいっぱいでした。

ワールド・フィギュアスケート 55

そして何よりもこの作品がやっと完成したなと思えたのは予定通りのジャンプを全て飛んだ上で、キャメルスピンで右手をはためかせたりトリプルルッツの着氷後に両手を回したりといった細かいところまで洗練された演技ができたというのが大きく、特に町田くんの「火の鳥」ではトリプルルッツに限らずジャンプ着氷後に独特の振付が盛り込まれているところが大好きで、さらに美しいキャメルスピンでは最初からレベル3の構成でレベルよりも芸術性を大事にしているんだろうなというこだわりを感じました。

あれから男子フィギュアはどんどん進化していき、今や様々な種類の4回転が飛び交う空中戦に突入し、さらにスピンやステップでもレベル4を揃えることが求められるというとんでもなくハイレベルな時代となりましたが、そんな現在の男子ではなかなか見られないような芸術性を追求していた町田くんの演技が今でも時々恋しくなります。

JOE HISAISHI CLASSICS 3:ウィリアムテル序曲/亡き王女のためのパヴァーヌ/組曲「くるみ割り人形」/火の鳥 1919版

こうして町田くんの「火の鳥」の完成形を見届けた後、さらにドラマチックな展開を迎える様子は次回お伝えします。

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Monday, January 9, 2017

選手の心を動かす日本の観客の温かさ

ザ・レジスタンス

オリンピックシーズンの集大成となった2014年の世界選手権では2日目の女子ショートで真央ちゃんが世界記録を更新しましたが、世界一の実力がありながらオリンピックでその実力を発揮できない不器用さが美姫ちゃんと重なり、こういう不器用さも日本女子の愛すべきところだなとしみじみと感じ、いよいよ3日目を迎えて勝負の男子フリーへと向かいました。

日本男子が控える最終グループを前に、第3グループで現役最後の試合としてこの世界選手権に臨むジェレミー・アボットが登場し、会場はアメリカかと思うほどの大歓声に包まれ、演技前にはおじさんの大声での声援に拍手が起きるのを見てアボットの人気を実感しました。

【現役最後と決めた選手の渾身の演技】

「エクソジェネシス」の優しい旋律に乗せてアボットの演技が始まり、冒頭の4回転トウループを見事に決めると、続くトリプルアクセルは何とかこらえてダブルトウループをつけ、トリプルフリップも決めて順調な滑り出しを見せました。

そして音楽が盛り上がってきたところでダブルアクセルを決めると、続くトリプルアクセルも見事に決め、さらに畳みかけるようにトリプルサルコウを決めると、音楽とともに会場の興奮も高まっていきました。

さらにトリプルルッツ-トリプルトウループ-ダブルトウループを決めると、最後のダブルアクセル-ダブルトウループも決めて、再び優しい曲調になると立ち止まって手をつく独特の振付で歓声を呼び、演技が終わる前から会場は総立ちでとんでもない歓声に包まれました。

【点数以上の感動を呼んだ選手】

壮大な音楽に乗せて畳みかけるようにジャンプを決めていく様子は、アボットのスケート人生の集大成を見ているようで、こんなに感動して幸せな気分になる演技はなかなか観られないなと思い、私も立ち上がって全力で拍手を送りました。

しかし得点は166点台と思ったほど伸びず、アボットも首を横に振って納得していない様子がスクリーンに映り、良い演技だったにもかかわらず得点が伸びないというのはジュベールで何度も経験してきましたがやはり切なく、天井席だったから最初のジャンプは4回転に見えたけど実は3回転だったのかななどと想像を巡らせていました。

改めて確認してみるとやはり最初のジャンプは4回転でしたが、オリンピックのショートで激しく転倒してフリーでトリプルループを飛べなかったときと同様この世界選手権でもトリプルループの代わりにダブルアクセルを2回飛んでおり、さらにトリプルルッツからの3連続でも回転不足を取られ、オリンピックでの怪我がまだ響いているのかなと感じました。

しかし現役最後と決めた試合で自分の力を出し切れたことが何よりも素晴らしく、特にアボットは体が大きく手足が長いのに無駄な動きがなく洗練された印象で、これまで体の大きな選手はダイナミックな演技が得意な印象がありましたが、長い手足を見事にコントロールしてあれだけ繊細な演技ができるのがアボットの凄さだなと思いました。

そしてこのシーズンで現役を引退する予定だったアボットはこの世界選手権のフリーで大歓声を受けたことで現役続行を決め、演技前に声援を送っていたおじさんはアボットのお義父さんだったことを後で知りましたが拍手していた観客は全て知っていたんだなと思うと、日本の観客は知識だけでなくどの国の選手にも温かいところが本当に素晴らしく、選手の心を動かす大きな原動力になるんだなと感銘を受けました。


こうして最終グループを前にすでに会場は最高潮の盛り上がりを見せていましたが、いよいよ日本男子が登場する最終グループを迎える様子は次回お話しします。

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Friday, January 6, 2017

世界一のスケートと愛すべき不器用さ

改訂版 - ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2014年ISU世界選手権 Beautiful Moments of ISU World Figure Skating Championships 2014 Saitama Japan (Beautiful Moments of Figure Skating)

オリンピックシーズンの集大成となる世界選手権が全日本と同じさいたまで開かれるということでチケットを何とか確保し、初日は男子ショートの最終グループの途中からしか観られませんでしたが、素敵な演技をいくつも観ることができて短くも充実した時間を過ごし、いよいよ2日目を迎えて期待を胸に女子ショートへと向かいました。

ソチオリンピックで金メダルを争ったアデリナ・ソトニコワとキム・ヨナが不在の世界選手権で、女子の注目は何といっても真央ちゃんでしたが、ソチオリンピックのショートではミスが続いて信じられない順位に沈んでしまったので、ここであのときの悔しさを晴らすことができればいいなと願っていました。

【オリンピックの雪辱を果たすショート】

「ノクターン」の軽やかな音楽に乗せて真央ちゃんの演技が始まり、明るいピアノの音色とは裏腹に会場は冒頭のトリプルアクセルに向けて緊張感が高まっていきましたが、トリプルアクセルを見事に決めると割れんばかりの大歓声が沸き起こり、会場が一つになった気がして鳥肌が立ちました。

続いてトリプルフリップも鮮やかに決めるとそのまま流れるようにスピンに入り、後半のトリプルループ-ダブルループも軽やかに決めると、ステップではこぼれ落ちるピアノの音を一つ一つ拾っていくような柔らかい表現が心地よく、最後のスピンまでピアノのきらきらした音色と一体化して曲の世界観を見事に表現していました。

【軽やかに塗り替えられる世界記録】

会心の演技に会場は総立ちで歓声を送り、花やぬいぐるみが雨のように降り注ぐこの日一番の盛り上がりを見せましたが、トリプルアクセルを入れた高難度のプログラムにもかかわらず、最初から最後まで流れるような演技で曲の世界観に自然と溶け込んでいたのが何よりも凄いなと思いました。

そして78.66点という得点が発表されると会場は再び割れんばかりの大歓声に包まれましたが、私はこれまで聞いたことのない得点に「もしかして世界記録?」と何となく感づき、あんなに軽やかな演技で世界最高得点が出せるなんて信じられないとあっけにとられつつ、もしこれがオリンピックでできていればという思いもこみ上げてきました。

こんなにさらっと世界記録が出せる真央ちゃんはこのとき間違いなく世界一の女子スケーターだったと思いますが、前回バンクーバーオリンピックで銀メダルに終わった後の世界選手権で優勝していたこともあり、美姫ちゃんと同様なかなかオリンピックにうまくピークを合わせられないもどかしさはありますが、そんな不器用なところも日本女子の愛すべきところなのかなと感じました。


こうして女子ショートでは真央ちゃんの世界記録更新という歴史的瞬間を目の当たりにしましたが、翌日の男子フリーでさらなるドラマを目撃する様子は次回お伝えします。

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Wednesday, January 4, 2017

フィギュアを純粋に楽しむということ

クロックス

ソチオリンピックは真央ちゃんの渾身の演技に感銘を受け、フィギュアへの向き合い方を考え直す大きな転機となりましたが、オリンピックシーズンの集大成となる世界選手権が日本で開催されるということで、激しいチケット争奪戦に加わり女子フリー以外は何とかチケットを確保することができました。

しかし初日は大学の卒業式と重なってしまい、東北地方に住んでいた私は卒業式が終わると急いで家に帰って支度を済ませ、慌てて新幹線に乗り込み世界選手権が行われるさいたまへと向かいましたが、途中で乗り換えを間違えかなりの時間をロスしてしまいました。

車内で初日の男子ショートの滑走順を見つめながら、もう最終グループ前の町田くんの演技には間に合わないなと諦め、せめて最終グループの羽生くんの演技に間に合えばいいなと願いつつ、前回全日本を観に行ったときの記憶を頼りに新幹線と電車を乗り継ぎ何とかさいたまスーパーアリーナに到着しました。

【会場に入って感じた違和感】

会場に入ると羽生くんのショートの曲が聞こえ、入口から遠い天井席を取ってしまった自分を恨みつつ、急いでエスカレーターに乗り自分の席へ向かうとちょうど演技が終わるところで、演技後の観客の様子で何かあったんだなとわかりました。

ノーミスの演技ならもっと会場は盛り上がってたはずだろうと思いつつ、演技の振り返り映像を見ると4回転で転倒しているところが映り、ああこのミスがあったからかと納得し、この転倒を見なくて済んだのはある意味ラッキーだったのかなと思うことにしました。

しかしミスがあっても91点台の高得点で2位につけ、さすがソチオリンピックの金メダリストだなと思いつつ、1位は町田くんだったらいいなと願いながら、次のペーター・リーベルスの演技を迎えました。

【ソチオリンピックで最も印象に残った男子の演技】

ソチオリンピックの男子は優勝した羽生くんも含め、どの選手もミスが出る大混戦となりましたが、そんな中で個人的に一番印象に残ったのは、リーベルスさんのショートの演技でした。

「クロックス」の美しく疾走感のある音楽と爽やかなブルーが映える綺麗なグラデーションの衣装が凄く好みで、音楽から衣装までまさに私の理想を具現化したようなこの作品を、オリンピックという大きな舞台で4回転からのコンビネーションを含め全てミスなくこなし、それほど名前の知られていなかったリーベルスさんの鮮烈な演技が男子では一番輝いて見えました。

その作品を生で観られるということで期待していると、曲が流れた瞬間からオリンピックの記憶が走馬灯のように蘇り、4回転トウループなどのジャンプでミスはありましたが、綺麗な音楽や衣装を純粋に楽しむというフィギュアを観始めた頃の初心を思い出させてくれる素敵な演技でした。

続いてハビエルが得意のコミカルな曲に乗せて4回転サルコウを鮮やかに決めると、その後もミスなくこなし96点台の高得点で2位につけ、さらに最終滑走のハン・ヤンもトリプルアクセルに4回転トウループと迫力あるジャンプを次々と決めて、ノーミスの素晴らしい演技で男子ショートは幕を閉じました。

そして最終結果が映し出されたスクリーンを目を凝らして見てみると、町田くんが何と98点台というとんでもない得点でトップに立っていて、見届けることはできなかったけど無事良い演技ができたんだなと一安心し、男子ショートは少ししか観られませんでしたが素敵な演技をいくつも観られて幸せな気分で会場を後にしました。


こうして短くも充実した時間を過ごすことができた男子ショートを終え、翌日から本格的に観戦する様子は次回お話しします。

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Monday, January 2, 2017

本当の意味でのフィギュアファンとは

改訂版 - "Beautiful moments of figure skating Winter Olympic Games Sochi 2014 (Revised Edition)' ソチオリンピック2014年フィギュアスケート写真集 (Beautiful moments of figure skating Winter Olympic Games Sochi 2014)

世界一過酷なオリンピック代表選考会となった2013年の全日本を経ていよいよ2014年のソチオリンピックを迎えましたが、大好きな美姫ちゃんがいないオリンピックを観るのは初めてで、特に女子は誰を応援するというわけでもなくフラットな目線で観ていましたが、ショートでは予想外の展開に驚きを隠せませんでした。

それは金メダルが期待されていた真央ちゃんが冒頭のトリプルアクセルで転倒してしまい、さらに最後のトリプルループからのコンビネーションがダブルループに抜けてコンビネーションにできず、立て続けのミスで得点を大きく失い、ショート16位という信じられない順位に沈んでしまったことでした。

トップの選手達とは20点近く離されてしまい、金メダルどころか表彰台すら絶望的な状況でフリーを迎え、第2グループという誰も予想していなかった滑走順で登場した真央ちゃんを、テレビの前で固唾を呑んで見つめていました。

【背水の陣で臨んだ決死のフリー】

「ピアノ協奏曲第2番」に乗せて真央ちゃんの演技が始まり、冒頭のトリプルアクセルを見事に決めると、続くトリプルフリップ-トリプルループのコンビネーションも決め、さらにトリプルルッツも決めて順調な滑り出しを見せました。

そしていよいよ大事な後半に入り、ダブルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションを決めると、続くトリプルサルコウも鮮やかに決めて、畳みかけるようにジャンプを次々と決めていく真央ちゃんに夢中になっていました。

さらに盛り上がる音楽とともに緊張感が高まる中、トリプルフリップ-ダブルループ-ダブルループの3連続も決めていよいよ最後のジャンプ、トリプルループを見事に決めると鳥肌が立ち、最後のステップはあまりに神々しく一人の人間が神になる瞬間を目撃している気がしました。

しかし演技が終わり涙する真央ちゃんを見て、ああやっぱり人間なんだなと思って涙がにじみ、演技後しばらく言葉を発しなかった実況のアナウンサーが、「これが浅田・・・・・・真央です。」と絞り出すように言った言葉が頭から離れませんでした。

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2014年 3/13号 [雑誌]

女子では誰も飛んでいなかったトリプルアクセルにショートから果敢に挑み、フリーでは全種類のトリプルジャンプを入れるという史上最高難度のジャンプ構成を見事にやってのけ、確実に勝ちに行く構成ではなく自分のこだわりを守り抜く構成を選んだ真央ちゃんは、誰よりもアスリートらしいアスリートだなと思いました。

【フィギュアに対する意識が変わった瞬間】

この圧巻の演技で142点台と自己最高得点を叩き出し6位まで順位を上げましたがもう得点や順位などはどうでもよく、演技後には杉浦アナが涙声で言葉を詰まらせながら話していたのが印象的で、真央ちゃんの人気はトリプルアクセルが飛べるからとか純粋で可愛らしいからとかそんな単純なものではなく、苦しみもがきながらも自分を貫き続ける姿が多くの人の心を動かしてきたんだなと実感しました。

私はフィギュアを観始めたときからずっと美姫ちゃんに夢中でしたが、美姫ちゃんへの思い入れが強すぎるあまり他の女子選手の演技としっかり向き合っていなかった気がして、これまでの私はフィギュアファンではなく美姫ちゃんファンだったのかなと感じ、これからは全ての選手と向き合う本当のフィギュアファンになりたいなと思わせてくれた真央ちゃんの演技でした。

ラフマニノフ : ピアノ協奏曲 第2番 | 第3番 (Rachmaninov : Concertos pour piano 2 & 3 / Boris Berezovsky (piano), Dmitri Liss (direction), Orchestre Philharmonique de l'oural) [輸入盤]
ラフマニノフ : ピアノ協奏曲 第2番 | 第3番 (Rachmaninov : Concertos pour piano 2 & 3 / Boris Berezovsky (piano), Dmitri Liss (direction), Orchestre Philharmonique de l'oural) [輸入盤]

こうしてフィギュアに対する見方が変わったオリンピックを経て、オリンピックシーズンの集大成となる世界選手権の観戦に臨む様子は次回お伝えします。

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Sunday, October 2, 2016

世界一過酷なオリンピック選考会の結末

フィギュアスケート ソチ・オリンピック観戦ガイド (ワールド・フィギュアスケート別冊)

世界一過酷なオリンピック代表選考会となった2013年の全日本では、長かった3日間の戦いもついに終盤を迎え、いよいよ女子フリーの最終滑走者を残すのみとなりました。

【3日間にわたる死闘の幕引き】

この全日本の戦いを締めくくるのは、ショートで素晴らしい演技を見せてトップに立ち、オリンピックでも優勝候補として期待される真央ちゃんでした。

「ピアノ協奏曲第2番」に乗せてこの全日本最後の演技が始まり、音楽とともに緊張が高まっていく中、勢いよく挑んだ冒頭のトリプルアクセルはステップアウトし、2本目のトリプルアクセルはシングルになってしまいました。

しかし続くトリプルフリップを決めて立て直し、後半もダブルアクセル-トリプルトウループのコンビネーション、さらにトリプルサルコウと立て続けにジャンプを決めていきました。

続くトリプルフリップからのコンビネーションは2回転が1回転になってしまいましたが、最後のトリプルループを鮮やかに決めると、クライマックスでは観客の手拍子とともに全身を大きく使った迫力あるステップで演技を締めくくりました。

本調子ではなさそうでキスアンドクライでも元気がない表情だったのが気になりましたが、126点台という得点で最終順位は3位となり、ショートでの貯金とフリーでのミスを最小限に抑えた演技で無事に表彰台に上がることができました。

ラフマニノフ : ピアノ協奏曲 第2番 | 第3番 (Rachmaninov : Concertos pour piano 2 & 3 / Boris Berezovsky (piano), Dmitri Liss (direction), Orchestre Philharmonique de l'oural) [輸入盤・日本語解説書付]

こうして長い長い3日間の戦いが終わり、いよいよソチオリンピックの代表発表を残すのみとなりました。

【選ばれし者と選ばれざる者それぞれの想い】

この時点でオリンピック代表が決まっていたのは、男女シングルでは全日本優勝者の羽生くんと明子ちゃんだけだったので、その他の選手がどうなるかハラハラしながら代表発表の時間を迎えました。

シングルの選手はまず女子の発表となり、全日本女王の明子ちゃんの名前が呼ばれて拍手が起こり、続いて真央ちゃんの名前が呼ばれると歓声が上がり、最後に佳菜子ちゃんの名前が呼ばれて再び歓声が沸き起こりました。

女子は全日本のトップ3選手が無事に選出され、いよいよ最後は男子の発表となり、まず全日本王者の羽生くんの名前が呼ばれて拍手が起こり、続いて町田くんの名前が呼ばれると歓声が上がりました。

そして3枠目は誰だろうと緊張感が高まる中、最後に高橋大輔と名前が読み上げられた瞬間、これまで聞いたこともないような割れんばかりの大歓声が沸き起こり、会場中のファンが喜びを爆発させている様子に圧倒されました。

この日は男子の試合がなかったにもかかわらず、会場中がD1SKと書かれたタオルで埋め尽くされ最大級の歓声に包まれるのを目の当たりにして、大ちゃんがどれだけ多くのフィギュアファンに愛されているかというのを肌で感じることができました。

続いて四大陸選手権は小塚くんと織田くんが代表に選ばれ会場からおおーと歓声が上がりましたが、世界選手権はオリンピックと同じメンバーとなることが発表され、このときオリンピックにも世界選手権にも出られない小塚くんと織田くん、そして彼らのファンはどんな気持ちだろうと思うと切なくなりました。

そしてオリンピックと世界選手権の代表選手がリンクに登場し、次々とリンク中央で挨拶していきましたが、明子ちゃんに続いて名前を呼ばれた真央ちゃんはリンクに上がるとそのまま代表選手達のところへ行ってしまい、明子ちゃんに指摘されて慌ててリンク中央に戻って挨拶したところで会場からは笑いが起きました。

さらに続いて登場した佳菜子ちゃんもそのまま代表選手の列に並んでしまい、再び指摘されて挨拶しに戻るというコントのような展開に、会場は大爆笑となりました。

続く羽生くんと町田くんはしっかりと挨拶を忘れずに登場し、最後に大ちゃんの名前が呼ばれると誰よりも大きな歓声で迎えられ、こうして代表選手がリンクに出揃いました。

そして選手それぞれが自分の言葉で抱負を話し、代表選手の生の声を聴けて感激していましたが、シングルの選手で最後に話した大ちゃんは言葉を詰まらせ、まだ思いを整理しきれていない様子が印象的でした。

こうして初めての全日本の生観戦は幕を閉じましたが、この大会はそれぞれの選手にドラマがあり、オリンピック代表を勝ち取った選手はもちろん代表を逃した選手の魅力も知ることができて、私にとって最も心に残る大会となりました。

特に小塚くんの7拍子に乗せた軽快な滑りが楽しめるショート、美姫ちゃんのノーミスで復活を印象付ける渾身のショート、織田くんの猫足着氷の鮮やかなジャンプで魅了するフリー、そして知子ちゃんのどこを切り取っても美しく洗練されたフリーを観られたのは本当に幸せでした。

この全日本は選手層が厚く厳しい戦いとなりましたが、この代表選考の厳しさがこれだけ多くの心に残る演技を生んだとも思えるので、この場で素晴らしい戦いを見せてくれた選手全員に感謝しています。


こうして過酷な代表選考を経てついに迎えたオリンピックで、最も印象に残った演技について次回はお話しします。

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Friday, September 30, 2016

一皮むけて大人の選手に成長した瞬間

ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年ISUグランプリシリーズ - ロステレコム杯Beautiful moments of ISU Grand Prix Cup of Rostelecom Moscow 2013 (ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年ISUグランプリシリーズ - ロステレコム杯Beautiful moments of figure skating)

オリンピック代表を決める最終選考会となった2013年の全日本では、最終種目の女子フリーも最終グループとなり、現役最後のシーズンとして臨んだベテラン勢の演技に一喜一憂しながら、それぞれの選手の全日本最後の演技を見届けていました。

【大舞台でも落ち着いた演技で魅せられる強さ】

そんな中初のオリンピック出場を目指す若手選手として登場したのは、前回のオリンピックの翌シーズンに鮮烈なシニアデビューを果たし、ショートではその頃の爆発力を彷彿とさせる素晴らしい演技で3位となった佳菜子ちゃんでした。

美しい青のグラデーションの衣装を身にまとい、「Papa, Can You Hear Me?」のしっとりした旋律に乗せて、冒頭のトリプルトウループ-トリプルトウループのコンビネーションを綺麗に決め、続くトリプルルッツとトリプルループも決めて順調な滑り出しを見せました。

そしてステップではキレのある動きで観客を惹きつけ、後半もトリプルフリップからのコンビネーションを落ち着いて決めると、続くトリプルフリップとダブルアクセルも鮮やかに決め、失敗する気配がありませんでした。

その勢いのまま最後のジャンプ、トリプルサルコウからの3連続を軽やかに決めると、スパイラルから全身を大きく使った表現で魅了し、最後は美しいビールマンスピンで締めくくりました。

この「Papa, Can You Hear Me?」は私のハンドルネームの由来でもあるアメリカのドラマ「glee」で初めて聴いてからずっと気に入っていた曲でしたが、シニアデビューの「ジャンピン・ジャック」でのはつらつとした印象が強かった佳菜子ちゃんが、こういったしっとりした曲で魅せられるようになるとはあの頃は想像もつきませんでした。

パパ、私の声が聞こえる? featuring レイチェル

【無邪気な少女から大人のアスリートへの成長】

まだジュニアだった4年前のオリンピックシーズンのフリーでは、前の滑走だった明子ちゃんの高得点を自分のことのように喜んでいて、舞い上がりすぎたのか演技開始の位置を間違えたり最初のジャンプがシングルになったりとお茶目な一面を見せていたのが印象的でしたが、自分がオリンピックを目指す立場となったこの全日本ではもうあの頃の面影はありませんでした。

演技中はゾーンに入っているような無敵の状態に見え、演技が終わると満足げに何度もガッツポーズを繰り返すその姿は、もはや幼くあどけない少女ではなく、闘争心あふれる立派なアスリートに見えました。

元々彼女は長い手足を生かしたスピンやステップが上手いなと思っていたので、ジャンプが決まれば本当に爆発力のある選手だなと改めて感じるとともに、このしっとりした曲で一皮むけて大人の演技ができる選手へと成長したなと思いました。

この完成された演技に会場からは大歓声とともにスタンディングオベーションが送られ、得点も135点台という高得点を叩き出し、総合得点は200点を超え最終滑走者を残して2位となり、この熾烈な戦いとなった全日本で見事表彰台が確定しました。

シネマ・セレナーデ

こうして若手選手の成長を見届けた後、いよいよこの全日本を締めくくる最後の選手が登場し、オリンピックへの過酷な戦いの結末を見届ける様子は次回お伝えします。

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Wednesday, September 28, 2016

生観戦により孤独から解放された瞬間

ワールド・フィギュアスケート 19

オリンピックシーズンを現役最後のシーズンとして迎える選手は多く、特にこの2013年の全日本は多くの有力選手が最後の全日本として臨んでおり、私も覚悟を決めてそれぞれの最後を会場で見届けていました。

【覚悟を決めて見届けた大好きな選手の最後の姿】

そんな全日本最終日の女子フリーでは、明子ちゃんが現役最後の全日本を素晴らしい演技で締めくくるのを見届け、いよいよ私が8年間応援してきた選手の出番がやってきました。

それは女子初の4回転や二度の世界女王など数々の実績を積み重ね、出産を乗り越えて迎えたこの全日本で、ショートではノーミスの演技でその復活を印象付けた美姫ちゃんでした。

彼女の登場に会場中から多くの声援が送られ、その声援を聞いて涙を拭う彼女に演技直前にもかかわらず会場から温かい拍手が送られ、会場のファンのあまりの温かさに私も演技前からすでに感極まってしまいました。

そんな中「火の鳥」の迫力ある旋律に乗せて彼女の最後の演技が始まり、冒頭のトリプルルッツ-ダブルループを鮮やかに決めて全盛期の片鱗を見せましたが、続くトリプルサルコウはシングルになってしまいました。

しかしそこからダブルアクセル-トリプルトウループを決めて立て直し、2010年に優勝した全日本と同じレベルのコンビネーションジャンプをこの全日本でも見ることができて、彼女のジャンプの才能を会場で改めて感じることができました。

そして穏やかな曲調に変わった後半最初のジャンプ、トリプルルッツもシングルになってしまい、このときこれが彼女の現役最後の演技になるだろうと自分の中で覚悟が決まりました。

続くトリプルサルコウは綺麗に決まり、さらに2本目のトリプルサルコウはダブルトウループを付けてオーバーターンになりながらもコンビネーションにし、3回コンビネーションジャンプを入れるという意地を見せました。

そして最後のジャンプ、ダブルアクセルを鮮やかに決めると、最後はステップから空を飛んでいるようなスパイラルで演技を締めくくりました。

このとき彼女は本当にリンクから飛び立っていってしまったんだなと思い、会場から温かい拍手と声援が送られる中、心が空っぽになった気分で彼女がリンクから去るのを見届けました。

【第一線で戦い抜いた選手を送り出す温かい拍手】

キスアンドクライで涙を流す彼女の姿が映し出され、106点台という得点が発表されると会場からは温かい拍手が送られ、いつまでも止まらない拍手に彼女の涙も止まらず、私も人目を気にしていられないほど涙があふれてきて必死に涙を拭いながら拍手しました。

それまで周りにフィギュアのファンもほとんどいなかったので、彼女をお茶の間で一人応援してきましたが、このとき周りを見渡すと私以外にも泣いている人がいて、長年一人でファンを続けてきた孤独からようやく解放された気がしました。

明子ちゃんのような有終の美とはなりませんでしたが、ショートではノーミスの演技を観ることができて、そしてフリーではファンの温かさを感じることができて、勇気を出して全日本を観に来て良かったなと心から思いました。

彼女がいないここ数年は男子にすっかりのめり込んでいましたが、この全日本で何よりも観たかったのは彼女が滑っている姿で、これから先どんなに素晴らしい選手が出てこようとも、私の中では彼女がずっと一番好きな選手であることに変わりはありません。

戦メリで私にフィギュアの世界を教えてくれて、私の人生を大きく変えてくれた美姫ちゃんには感謝してもしきれません。

これまで厳しい世界でずっと第一線で活躍し続け、ファンにたくさんの希望を与えてくれたので、これからは娘さんとともに穏やかで充実した日々を過ごせるよう心から祈っています。


そんな大好きな選手の最後を見届けた後、いよいよ長かった全日本の戦いも終盤を迎える様子は次回お話しします。

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Monday, September 26, 2016

最後の全日本で奇跡を起こした選手

笑顔が未来をつくる――私のスケート人生

オリンピックの代表選考会となった2013年の全日本は、最終日の最終種目である女子フリーの最終グループまで有力選手がひしめき合っており、最後の最後まで目が離せない戦いとなりました。

そんな有力候補の先陣を切って登場した知子ちゃんの、シニアデビューとは思えない美しく洗練された演技に魅了され、その余韻にずっと浸っていたい気分でしたが、ここからベテラン勢が次々登場するため気持ちを切り替えて集中しました。

【様々な試練を乗り越えた選手が最後に見せた輝き】

シニアデビューの知子ちゃんに続いて登場したのは、現役最後のシーズンとして挑んだこの全日本で、ショートでは素晴らしい演技を見せて2位となり、いよいよ全日本最後の演技を迎える明子ちゃんでした。

純白でキラキラ輝くウエディングドレスのような衣装に身を包んで登場すると、「オペラ座の怪人」の優しい旋律に乗せて彼女の全日本最後の演技が始まり、曲が静かに盛り上がっていく中迎えた最初のジャンプ、トリプルフリップからの3連続を決めると同時に激しい曲調へと変化し疾走感を増していきました。

そのまま勢いに乗ってダブルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションを決めると、おなじみの迫力あるフレーズに乗せてトリプルルッツも鮮やかに決め、疾走感とともにどんどん観客を引き込んでいきました。

後半に入ると穏やかな曲調に変わり、得意のステップでは滑らかな動きで真っ白な衣装とともにリンクに溶け込んでいきそうなほど柔らかい雰囲気を醸し出し、再び曲が盛り上がっていく中トリプルフリップ、トリプルループと立て続けにジャンプを決めていきました。

さらにトリプルサルコウからのコンビネーションを決めると、スピードに乗ったダイナミックなスパイラルで壮大なクライマックスを見事に演出し、全身を大きく使って空を飛んでいるかのような疾走感とともにリンクを駆け回ると、最後のトリプルサルコウも鮮やかに決めて最高の形でエンディングを迎えました。

あまりにも感動的な演技に会場中が大歓声と拍手に包まれ、総立ちで彼女の全日本最後の演技を称える様子を目の当たりにし、この場に立ち会えて良かったなと幸せを感じながらスタンディングオベーションを送りました。

【最高の演技で全日本の最後を迎えられる幸せ】

どの選手も現役を引退するときが必ずやってきますが、その現役最後の全日本をショートフリーともに最高の形で締めくくるというのは誰にでもできることではなく、こうした奇跡は私にとって歴代最高得点の更新や世界初のジャンプ成功などの記録に残る偉業よりもはるかに感動を呼び、フィギュアスケートを観ていて良かったと心から思える幸せな時間でした。

この感動の演技で144点台というとんでもない得点を叩き出し、総合得点は210点越えという見事な有終の美を飾りましたが、私の中ではもう順位や点数などはどうでもよく、この奇跡を見せてくれた明子ちゃんにただただ感謝の気持ちでいっぱいでした。

Lloyd Webber: Phantasia/The Woman In White Suite

そんなベテランの奇跡を目の当たりにした後、いよいよ私が8年間応援してきた選手の最後の演技を見届ける様子は次回お伝えします。

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Saturday, September 24, 2016

世界一過酷な全日本で最も光った演技

ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年ISUグランプリシリーズ - ロステレコム杯Beautiful moments of ISU Grand Prix Cup of Rostelecom Moscow 2013 (ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年ISUグランプリシリーズ - ロステレコム杯Beautiful moments of figure skating)

4年に1度のオリンピック、その世界一過酷な代表選考会となった2013年の全日本もいよいよ最終日を迎え、今日全てが決まるんだと覚悟を決めて女子フリーへと向かいました。

女子フリーも男子と同じく最終グループに有力選手が固まっており、これが全日本最後の演技になる選手もいるかと思うと、6分間練習から一瞬たりとも目が離せませんでした。

【最初から最後まで観客を惹きつける驚異の才能】

そしてこの全日本最後の6分間練習が終わり、有力候補の先陣を切って最初に登場したのは、「戦場のメリークリスマス」に乗せた美しい演技でショート4位となり、シニアデビューにしてオリンピックを狙えるところまできた知子ちゃんでした。

「ポエタ」の荘厳な音楽とともに演技が始まり、冒頭のトリプルルッツ-トリプルトウループのコンビネーションを決めると、逆回転のスピンで序盤から観客を引き込み、トリプルフリップは軸が傾きましたが何とか着氷しました。

さらにトリプルループ、ダブルアクセルと立て続けにジャンプを決めていき、ここから静かな曲調へと変わり後半に入ると、ダブルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションを決めて安定感を見せました。

そして切なく静かな旋律に乗せて、しなやかな腕使いと柔らかい上半身の動きで洗練された見事なステップを見せ、会場からは自然と拍手が沸き起こる中、トリプルルッツからの3連続も落ち着いて決めました。

ここから美しいレイバックスピンで魅了し、静かに手を叩いて最後のジャンプ、トリプルサルコウも鮮やかに決めて曲はどんどん盛り上がっていきました。

クライマックスを迎える曲とともにスピードに乗り、美しく安定したスパイラルで観客を惹きつけると、その勢いのままに体全体を大きく使った疾走感あふれるステップでどんどん盛り上げ、最後のスピンが終わると音楽に合わせてピタッと止まるフィニッシュポーズでかっこよく締めくくりました。

あまりに素晴らしい演技に感動して鳥肌が立ち、演技が終わった瞬間から歓声と拍手が会場中に響き渡る中、私も立ち上がって全力で拍手を送りました。

【全ての動作が美しく洗練された完成度の高さ】

前日の男子フリーからこの女子フリーまで、この全日本では実績を積み重ねたベテランから将来が楽しみな若手までいろんな選手のフリーの演技を見てきましたが、私の目にはシニアデビューの彼女の演技が最も完成度が高く洗練された美しい演技に映りました。

それは単純にジャンプを全て決めたノーミスの演技だからというだけではなく、一つ一つの動きが洗練されていて、スピンやステップではどこを切り取っても美しく、一瞬たりとも目が離せない極上のプログラムに仕上がっていたからだと思います。

シニアデビューにしてここまで完成度の高い演技ができるなんて、これから彼女はどこまで進化していくんだろうと期待が膨らみ、彼女の成長をずっと見守っていきたいと強く思いました。

この鮮烈な演技で125点台という高得点を出し総合得点も190点を超え、シニアデビューの彼女が一気にオリンピックへのハードルを引き上げる素晴らしい戦いぶりを見せました。


そんな若手の素晴らしい演技の後、ベテラン勢の登場により女子も熾烈な戦いが繰り広げられる様子は次回からお話しします。

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Thursday, September 22, 2016

一年で様変わりした日本男子の勢力図

ワールド・フィギュアスケート 55

世界一過酷なオリンピック選考会となった2013年の全日本二日目は、女子ショートから男子フリーまで次々とドラマが巻き起こる長い長い一日でしたが、ついに男子フリーの最終滑走者を残すのみとなりました。

【世界一過酷な男子の最終決戦の結末】

男子フリーを締めくくる最終滑走として登場したのは、大ちゃんや織田くんとともに3強として前回のオリンピックに出場するなど長い間日本男子を引っ張り、ショート3位で再びオリンピックを狙える位置につけた小塚くんでした。

「序奏とロンド・カプリチオーソ」に乗せて全日本の男子最後の演技が始まり、緊張の中迎えた冒頭の4回転を何とかオーバーターンでこらえ、続くトリプルアクセルを鮮やかに決めると、トリプルルッツからの3連続も決めて順調な滑り出しを見せました。

そして後半に入り最初のジャンプ、トリプルアクセルからのコンビネーションを決めると、トリプルフリップにトリプルサルコウと落ち着いてジャンプを決めていき、さらに上品で軽やかなステップで魅了し会場からは自然と手拍子が上がりました。

いよいよ曲は終盤に入ると、2本目のトリプルルッツでまさかの転倒、会場からはああっと声が上がりましたが、最後はイーグルからダブルアクセル-ダブルトウループのコンビネーションを決めて美しい高速スピンで演技を締めくくりました。

ショートと同じく冒頭の4回転を何とかこらえ、このまま大きなミスなくまとめるかと思ったところでまさかの転倒というのは、彼の前に滑った町田くんと同じく最後に拍子抜けしてしまうような展開でしたが、上品な音楽に乗せて彼の上質な滑りを楽しめる素敵な作品でした。

そしていよいよ最終順位が決まる得点発表では、174点台という点数が発表され、彼はショートの3位という順位を守り全日本の表彰台が確定しました。

【若き才能が溢れる中でも輝きを放つベテランの魅力】

上位5選手が250点以上という過去最高レベルの戦いとなった全日本男子シングルは、羽生くん優勝、町田くん2位、小塚くん3位という結果で、1年前に私が初めて生観戦したスケートアメリカの表彰台と同じ顔ぶれとなりました。

1年前のスケートアメリカを見に行ったときはフライトの時間が迫っていて、日本勢が独占した表彰台を見ることなく会場を後にしたのが心残りだったので、ようやくこの3人の表彰台が見られるのかと思うと、あのときのスケアメがこの全日本に導いてくれたのかなと感慨深いものがありました。

しかしその一方で、この日表彰台に上がった3人以上に印象に残ったのは、若手に食らいついていこうとベテランながら2本の4回転に挑み、最後まであきらめず自らの個性を存分に生かし輝きを放っていた織田くんと大ちゃんの演技でした。

男子シングルにのめりこむきっかけとなった羽生くんや、同い年の選手として特別な想いで応援していた町田くんが、1年前のスケートアメリカから急成長を遂げてオリンピック代表に選ばれるというのは、私がずっと望んでいたことでした。

しかしこの全日本では小塚くんのショートの7拍子のリズムに乗せた軽快な滑り、織田くんのフリーの猫足着氷で次々と決める美しいジャンプ、そして大ちゃんのフリーの血に染まりながらも観客を惹きつける華麗な表現を目の当たりにして、日本男子に長年君臨してきた3強の魅力に今さらながら気づいてしまいました。

これまで応援してきた羽生くんと町田くんの躍進により、そんなかつての3強がオリンピックの代表枠を争わなければならないという現実は辛いものがあり、3枠では足りない・・・・・・4枠でも足りない・・・・・・5枠あればみんなが幸せになれたのに・・・・・・5人とも入賞できる力があるのにと、やりきれない気持ちを胸に抱えたまま会場を後にしました。


そんな複雑な想いを抱えたまま全日本最終日となり、いよいよ女子の戦いも決着のときを迎える女子フリーの様子は次回お伝えします。

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Wednesday, September 21, 2016

新たな芽が次々出てくる日本男子の成長

フィギュアスケートDays Plus 2013 Winter 男子シ

有力選手が次々と力をつけ群雄割拠の時代となった日本の男子シングルは、オリンピックシーズンの全日本で世界一過酷な戦いを繰り広げる中、フリーでは大ちゃんの悲壮感あふれる演技に会場中が心を揺さぶられていました。

【台風の目となった日本男子の新たな才能】

そんな大ちゃんの次に登場したのは、彼に憧れて大学までずっと彼の後を追ってきて、今やそんな憧れの選手とオリンピック代表枠を争うまでに成長した町田くんでした。

それまで大ちゃんの演技の余韻を引きずっていましたが、町田くんの成長をずっと見てきて彼を全力で応援しようと心に決めていたので、気持ちを切り替えて彼の成功を心から祈りました。

初めての生観戦で一目ぼれした「火の鳥」の旋律を1年ぶりに生で聴いて、興奮が高まっていく中最初の4回転を何とかこらえて、さらに緊張感が高まる2本目の4回転をコンビネーションにして鮮やかに決め、着氷後に鳥のようにぴょんっと跳び上がる彼とともによっしゃあとガッツポーズしました。

ここから勢いに乗って曲も迫力を増していく中、手と首を大きく使った音ハメが素晴らしく、その疾走感あふれる演技にどんどん引き込まれていき、その勢いのままトリプルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションを華麗に決めました。

後半に入って優しい曲調に変わると柔らかい表現で惹きつけ、2本目のトリプルアクセルを決めると着氷後も美しい振付で魅了し、スピンでは手を羽のようにひらひらと優雅にはためかせ、指先まで綺麗で繊細な表現に思わず見とれてしまいました。

穏やかな曲調の中トリプルループを決め、トリプルルッツもこらえると再び曲は盛り上がっていき、トリプルフリップからの3連続を決め勢いに乗って最後のジャンプ、トリプルサルコウを決めて最高の形でエンディングを迎えました。

ついに実力を出し切ることができたと感慨に浸っていると、最後のステップの途中でいきなりつまずいてしまい、あまりに突然のことにあっけにとられ、頭が整理できず放心状態のまま演技が終わりました。

演技後も気持ちが整理できない中、とりあえずジャンプのミスなく大きな山は越えたなということだけはわかり、他の観客と一緒に立ち上がって拍手を送っていると、少しずつ緊張が解けじわじわと安心感で満たされていくのを感じました。

【一人の人間が急成長する姿を見られる幸せ】

この最後に拍子抜けするような感覚は、2011年のグランプリファイナルで一目ぼれした羽生くんの「ロミオ+ジュリエット」以来で、あのときも素晴らしい演技に感動していると最後のジャンプでつまずいてしまい、あっけにとられていたのを思い出して懐かしくなりました。

それでも有力選手の中でショートフリー通してジャンプを予定通り全て決めたのは彼だけで、この厳しい戦いの中でここまで実力を出し切れるようになるなんて、1年前にスケートアメリカで初めて「火の鳥」を観たときには想像もつかなかったなと思い、この1年で本当に強くなったなと一人の人間の成長に心を動かされました。

芸術性に強さが加わったこの「火の鳥」で183点台という素晴らしい得点を叩き出し、この時点で羽生くんに続く2位となり最終滑走者を残して表彰台が確定し、これまでの努力が報われコーチとともに喜びをかみしめる様子に、ここに至るまでの道のりを思い出しこみ上げてくるものがありました。


そんな日本男子の成長を感じた後、いよいよ迎える全日本の男子フリーの結末は次回お話しします。

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Tuesday, September 20, 2016

誰よりも多くの人を感情移入させる選手

高橋大輔 The Real Athlete DVD

世界一過酷なオリンピック選考会と言われた2013年の全日本は、多くのベテラン選手が現役最後のシーズンとして臨んでおり、男子フリーでは織田くんが自分らしく全日本最後の演技を終えるのを見届け、会場が盛り上がる中一人切なさに襲われていました。

【最後までもがき続けた選手の切なくも美しい姿】

そんな織田くんに続いて登場したのは、彼とともに長年日本男子を牽引し続け、日本における男子シングルの人気を一気に押し上げた功労者でもある大ちゃんでした。

怪我を抱えていて万全のコンディションではなかったものの、ショートでは何とか4位に踏みとどまりオリンピックへの可能性をつなげ、満身創痍でフリーに臨む彼の登場に、会場中のファンがD1SKと書かれたタオルとともに最大限の声援を送りました。

「ビートルズ・メドレー」の優しい旋律に乗せて演技が始まり、会場中が見守る中挑んだ最初の4回転で転倒、その瞬間ああっと声が上がり自然に応援の拍手が沸き起こり、観客の応援を後押しに2本目の4回転に挑みましたが回り切れずに着氷してしまいました。

しかしそこからトリプルアクセルを決めて意地を見せ、曲調が変わると持ち前の表現力豊かなステップでがらりと空気を変え、一挙手一投足に音を乗せ無駄な動作が一つもない洗練された動きで魅了し、会場からも歓声が上がっていました。

そして曲が一区切りし動きを止めて手を伸ばした瞬間、その手が血で赤くにじんでいるのが見え、ハッとしたところで曲調が変わり、傷を負いながらも滑り続ける姿にどんどん感情移入していきました。

後半に入って最初のジャンプ、トリプルアクセルで手をつきながらも何とかダブルトウループにつなげ、さらにトリプルルッツからの3連続を決めると会場からは歓声が上がりました。

しかし続くトリプルループがダブルになってしまい、もう足が限界にきているのが伝わってきて観るのが辛くなりましたが、次のトリプルフリップを決めると穏やかな曲調になって雰囲気がまたがらりと変わり、柔らかい動きで観客を惹きつけていきました。

そして最後のジャンプ、トリプルサルコウを決めると曲はどんどん盛り上がっていき、クライマックスでは自由にはばたく鳥のように全身を大きく使い、体中からあふれる想いが伝わってくる圧巻の滑りでした。

終わった瞬間全てを悟ったかのように笑顔を見せる様子が切なく、満身創痍の中最後まで滑り切った彼の姿に、会場中のファンが立ち上がってその勇姿を称え、声援と拍手がしばらく鳴りやみませんでした。

そして血でにじんだ手がモニターに映し出されると会場がどよめき、キスアンドクライではショートと同じく泣きそうな表情で、170点台という得点が発表され会場が静まり返る中、噛みしめるようにうなずく様子は正直見ていられないほど辛かったです。

【誰よりも多くのファンを魅了してきた本当の理由】

改めて地上波で放送された演技を観てみると、実況の西岡アナや解説の本田武史さんも演技後は声を震わせながら話していて、いつも冷静な二人がここまで感情移入する様子に驚き、彼が男女問わずあれほど多くのファンを魅了する理由がわかった気がしました。

それまで大ちゃんは男前だから女性ファンが多いんだろうなとか、彼独特の芸術性や表現力に憧れる男子選手が多いんだろうなとか表面的なところしか見ていませんでしたが、容姿も演技も美しく非の打ちどころのない偶像というだけではなく、ときには弱さや脆さを見せる普通の人間だからこそあれだけ多くの人が彼を応援してきたんだなと納得しました。

フロム・イエスタディ・トゥ・ペニー・レイン/ セルシェル・プレイズ・ビートル

そんな誰もが応援したくなるような演技に心を揺さぶられた後、いよいよ男子の戦いが終盤を迎える様子は次回お伝えします。

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