世界一過酷なオリンピック選考会と言われた2013年の全日本は、多くのベテラン選手が現役最後のシーズンとして臨んでおり、男子フリーでは織田くんが自分らしく全日本最後の演技を終えるのを見届け、会場が盛り上がる中一人切なさに襲われていました。
【最後までもがき続けた選手の切なくも美しい姿】
そんな織田くんに続いて登場したのは、彼とともに長年日本男子を牽引し続け、日本における男子シングルの人気を一気に押し上げた功労者でもある大ちゃんでした。怪我を抱えていて万全のコンディションではなかったものの、ショートでは何とか4位に踏みとどまりオリンピックへの可能性をつなげ、満身創痍でフリーに臨む彼の登場に、会場中のファンがD1SKと書かれたタオルとともに最大限の声援を送りました。
「ビートルズ・メドレー」の優しい旋律に乗せて演技が始まり、会場中が見守る中挑んだ最初の4回転で転倒、その瞬間ああっと声が上がり自然に応援の拍手が沸き起こり、観客の応援を後押しに2本目の4回転に挑みましたが回り切れずに着氷してしまいました。
しかしそこからトリプルアクセルを決めて意地を見せ、曲調が変わると持ち前の表現力豊かなステップでがらりと空気を変え、一挙手一投足に音を乗せ無駄な動作が一つもない洗練された動きで魅了し、会場からも歓声が上がっていました。
そして曲が一区切りし動きを止めて手を伸ばした瞬間、その手が血で赤くにじんでいるのが見え、ハッとしたところで曲調が変わり、傷を負いながらも滑り続ける姿にどんどん感情移入していきました。
後半に入って最初のジャンプ、トリプルアクセルで手をつきながらも何とかダブルトウループにつなげ、さらにトリプルルッツからの3連続を決めると会場からは歓声が上がりました。
しかし続くトリプルループがダブルになってしまい、もう足が限界にきているのが伝わってきて観るのが辛くなりましたが、次のトリプルフリップを決めると穏やかな曲調になって雰囲気がまたがらりと変わり、柔らかい動きで観客を惹きつけていきました。
そして最後のジャンプ、トリプルサルコウを決めると曲はどんどん盛り上がっていき、クライマックスでは自由にはばたく鳥のように全身を大きく使い、体中からあふれる想いが伝わってくる圧巻の滑りでした。
終わった瞬間全てを悟ったかのように笑顔を見せる様子が切なく、満身創痍の中最後まで滑り切った彼の姿に、会場中のファンが立ち上がってその勇姿を称え、声援と拍手がしばらく鳴りやみませんでした。
そして血でにじんだ手がモニターに映し出されると会場がどよめき、キスアンドクライではショートと同じく泣きそうな表情で、170点台という得点が発表され会場が静まり返る中、噛みしめるようにうなずく様子は正直見ていられないほど辛かったです。
【誰よりも多くのファンを魅了してきた本当の理由】
改めて地上波で放送された演技を観てみると、実況の西岡アナや解説の本田武史さんも演技後は声を震わせながら話していて、いつも冷静な二人がここまで感情移入する様子に驚き、彼が男女問わずあれほど多くのファンを魅了する理由がわかった気がしました。それまで大ちゃんは男前だから女性ファンが多いんだろうなとか、彼独特の芸術性や表現力に憧れる男子選手が多いんだろうなとか表面的なところしか見ていませんでしたが、容姿も演技も美しく非の打ちどころのない偶像というだけではなく、ときには弱さや脆さを見せる普通の人間だからこそあれだけ多くの人が彼を応援してきたんだなと納得しました。
そんな誰もが応援したくなるような演技に心を揺さぶられた後、いよいよ男子の戦いが終盤を迎える様子は次回お伝えします。
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