かつてないほど選手層が厚くなっていた2013年、ソチオリンピック代表を決める全日本選手権は、世界一過酷なオリンピック代表争いといっても過言ではありませんでした。
8年間フィギュアスケートを観てきて、ずっと第一線で活躍していたベテランの選手から最近頭角を現してきた期待の選手まで、これだけ有力選手が集まる試合はもう二度と見れないかもしれないと思い、意を決して全日本のチケットを取りました。
そしてついに迎えた全日本初日、これまでの現地観戦では感じたことのない緊張で生きた心地がしませんでしたが、しっかり見届けようと気を引き締めて男子ショートへと向かいました。
【長年フィギュアを見続けようやく出会った同い年の選手】
日本男子はもはや誰を応援していいのかわからないほど有力選手がひしめき合っていましたが、その中で私と同い年の選手がいました。それは私が1年前に初めて生観戦したときから惹きつけるものがあり、それから1年経ったオリンピックシーズンに見違えるほど成長していた、町田樹さんです。
それまで多くの選手の活躍を見てきましたが、同世代の選手は多いのに同い年の選手は一人もいないのかと少し寂しく感じていて、初めて彼の鮮烈な演技を目の当たりにしてから気になっていろいろ調べてみると、何と同い年で誕生日も数日違いということがわかって感激しました。
ようやく同い年の選手に巡り合えて、しかもそれが初観戦のときに引き付けられた選手とあって、彼の活躍が自分のことのように嬉しく、同い年の子が1年でこんなに変われるんだと勇気づけられていました。
【自ら運命を切り開いていく姿に胸を打たれた瞬間】
そんな町田くんが男子ショートでは有力選手の中で最初に登場し、極限の緊張感で胸が張り裂けそうになりながらも、ただただうまくいくことを祈って見つめていました。そしてついに「エデンの東」の優しい旋律が流れ出し、ゆっくりと動き出して最初の4回転へと向かっていく彼を見つめている時間はとてつもなく長く感じられ、絶対決めてほしいと願っていた最初の4回転を着氷し、さらに3回転を付けてコンビネーションが決まった瞬間「よし!」と小さく囁きガッツポーズしている自分がいました。
しかし次はトリプルアクセルだとすぐに気を引き締め、祈りながら見つめたトリプルアクセルも美しく決める彼を見て、このシーズンのテーマにしていた「ティムシェル」という言葉を思い出し、まさに自分の運命を自分で切り開いていく姿がそこにはありました。
そして後半に入りいよいよ最後のジャンプ、トリプルルッツも見事に決めて、クライマックスを迎える曲調と共にこちらも感情が高まり、最後は興奮と感動で胸がいっぱいでした。
演技を終えると彼はゆっくりと握りしめたこぶしを引き寄せ、その後力強くガッツポーズして顔を覆い、かみしめるように何度もガッツポーズする様子を見て感極まってしまい、泣きながらスタンディングオベーションを送りました。
この「エデンの東」という作品に込められたテーマを見事に体現した彼は、93点台という素晴らしい得点でオリンピックへの大きな一歩を踏み出し、20年かけてようやくここまで来た遅咲きの彼に絶対にオリンピックに行ってほしいと思い、彼を全力で応援しようと心に決めました。
町田くんのスケート人生を懸けた全身全霊の演技で幕を開けた男子のオリンピック代表争いはここからさらに熾烈を極め、目まぐるしく変わる展開に心を揺さぶられる様子は次回お伝えします。
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