有力選手が次々と力をつけ群雄割拠の時代となった日本の男子シングルは、オリンピックシーズンの全日本で世界一過酷な戦いを繰り広げる中、フリーでは大ちゃんの悲壮感あふれる演技に会場中が心を揺さぶられていました。
【台風の目となった日本男子の新たな才能】
そんな大ちゃんの次に登場したのは、彼に憧れて大学までずっと彼の後を追ってきて、今やそんな憧れの選手とオリンピック代表枠を争うまでに成長した町田くんでした。それまで大ちゃんの演技の余韻を引きずっていましたが、町田くんの成長をずっと見てきて彼を全力で応援しようと心に決めていたので、気持ちを切り替えて彼の成功を心から祈りました。
初めての生観戦で一目ぼれした「火の鳥」の旋律を1年ぶりに生で聴いて、興奮が高まっていく中最初の4回転を何とかこらえて、さらに緊張感が高まる2本目の4回転をコンビネーションにして鮮やかに決め、着氷後に鳥のようにぴょんっと跳び上がる彼とともによっしゃあとガッツポーズしました。
ここから勢いに乗って曲も迫力を増していく中、手と首を大きく使った音ハメが素晴らしく、その疾走感あふれる演技にどんどん引き込まれていき、その勢いのままトリプルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションを華麗に決めました。
後半に入って優しい曲調に変わると柔らかい表現で惹きつけ、2本目のトリプルアクセルを決めると着氷後も美しい振付で魅了し、スピンでは手を羽のようにひらひらと優雅にはためかせ、指先まで綺麗で繊細な表現に思わず見とれてしまいました。
穏やかな曲調の中トリプルループを決め、トリプルルッツもこらえると再び曲は盛り上がっていき、トリプルフリップからの3連続を決め勢いに乗って最後のジャンプ、トリプルサルコウを決めて最高の形でエンディングを迎えました。
ついに実力を出し切ることができたと感慨に浸っていると、最後のステップの途中でいきなりつまずいてしまい、あまりに突然のことにあっけにとられ、頭が整理できず放心状態のまま演技が終わりました。
演技後も気持ちが整理できない中、とりあえずジャンプのミスなく大きな山は越えたなということだけはわかり、他の観客と一緒に立ち上がって拍手を送っていると、少しずつ緊張が解けじわじわと安心感で満たされていくのを感じました。
【一人の人間が急成長する姿を見られる幸せ】
この最後に拍子抜けするような感覚は、2011年のグランプリファイナルで一目ぼれした羽生くんの「ロミオ+ジュリエット」以来で、あのときも素晴らしい演技に感動していると最後のジャンプでつまずいてしまい、あっけにとられていたのを思い出して懐かしくなりました。それでも有力選手の中でショートフリー通してジャンプを予定通り全て決めたのは彼だけで、この厳しい戦いの中でここまで実力を出し切れるようになるなんて、1年前にスケートアメリカで初めて「火の鳥」を観たときには想像もつかなかったなと思い、この1年で本当に強くなったなと一人の人間の成長に心を動かされました。
芸術性に強さが加わったこの「火の鳥」で183点台という素晴らしい得点を叩き出し、この時点で羽生くんに続く2位となり最終滑走者を残して表彰台が確定し、これまでの努力が報われコーチとともに喜びをかみしめる様子に、ここに至るまでの道のりを思い出しこみ上げてくるものがありました。
そんな日本男子の成長を感じた後、いよいよ迎える全日本の男子フリーの結末は次回お話しします。
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