オリンピックシーズンの集大成となった2014年の世界選手権では2日目の女子ショートで真央ちゃんが世界記録を更新しましたが、世界一の実力がありながらオリンピックでその実力を発揮できない不器用さが美姫ちゃんと重なり、こういう不器用さも日本女子の愛すべきところだなとしみじみと感じ、いよいよ3日目を迎えて勝負の男子フリーへと向かいました。
日本男子が控える最終グループを前に、第3グループで現役最後の試合としてこの世界選手権に臨むジェレミー・アボットが登場し、会場はアメリカかと思うほどの大歓声に包まれ、演技前にはおじさんの大声での声援に拍手が起きるのを見てアボットの人気を実感しました。
【現役最後と決めた選手の渾身の演技】
「エクソジェネシス」の優しい旋律に乗せてアボットの演技が始まり、冒頭の4回転トウループを見事に決めると、続くトリプルアクセルは何とかこらえてダブルトウループをつけ、トリプルフリップも決めて順調な滑り出しを見せました。そして音楽が盛り上がってきたところでダブルアクセルを決めると、続くトリプルアクセルも見事に決め、さらに畳みかけるようにトリプルサルコウを決めると、音楽とともに会場の興奮も高まっていきました。
さらにトリプルルッツ-トリプルトウループ-ダブルトウループを決めると、最後のダブルアクセル-ダブルトウループも決めて、再び優しい曲調になると立ち止まって手をつく独特の振付で歓声を呼び、演技が終わる前から会場は総立ちでとんでもない歓声に包まれました。
【点数以上の感動を呼んだ選手】
壮大な音楽に乗せて畳みかけるようにジャンプを決めていく様子は、アボットのスケート人生の集大成を見ているようで、こんなに感動して幸せな気分になる演技はなかなか観られないなと思い、私も立ち上がって全力で拍手を送りました。しかし得点は166点台と思ったほど伸びず、アボットも首を横に振って納得していない様子がスクリーンに映り、良い演技だったにもかかわらず得点が伸びないというのはジュベールで何度も経験してきましたがやはり切なく、天井席だったから最初のジャンプは4回転に見えたけど実は3回転だったのかななどと想像を巡らせていました。
改めて確認してみるとやはり最初のジャンプは4回転でしたが、オリンピックのショートで激しく転倒してフリーでトリプルループを飛べなかったときと同様この世界選手権でもトリプルループの代わりにダブルアクセルを2回飛んでおり、さらにトリプルルッツからの3連続でも回転不足を取られ、オリンピックでの怪我がまだ響いているのかなと感じました。
しかし現役最後と決めた試合で自分の力を出し切れたことが何よりも素晴らしく、特にアボットは体が大きく手足が長いのに無駄な動きがなく洗練された印象で、これまで体の大きな選手はダイナミックな演技が得意な印象がありましたが、長い手足を見事にコントロールしてあれだけ繊細な演技ができるのがアボットの凄さだなと思いました。
そしてこのシーズンで現役を引退する予定だったアボットはこの世界選手権のフリーで大歓声を受けたことで現役続行を決め、演技前に声援を送っていたおじさんはアボットのお義父さんだったことを後で知りましたが拍手していた観客は全て知っていたんだなと思うと、日本の観客は知識だけでなくどの国の選手にも温かいところが本当に素晴らしく、選手の心を動かす大きな原動力になるんだなと感銘を受けました。
こうして最終グループを前にすでに会場は最高潮の盛り上がりを見せていましたが、いよいよ日本男子が登場する最終グループを迎える様子は次回お話しします。
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