Thursday, July 28, 2016

生観戦で唯一無二の魅力を再認識した選手


万全の態勢で観戦に臨んだ初めての世界選手権では、波乱の幕開けとなった男子ショートを目の当たりにし、日本男子の3枠維持とお気に入りの選手の健闘を祈りつつ、いよいよ勝負の男子フリーの日を迎えました。

男子ショートの前は初めての世界選手権の観戦に浮き足立っていましたが、日本男子3枠の危機という予想外の展開でフリーを迎えることとなり、ショートとフリーを通して観戦するのが初めてだった私は、これまで味わったことのない緊張感とともに会場へと向かいました。


【苦しみながらも底力を見せつけた全身全霊の演技】

お気に入りの選手の中で最初の滑走となったのは、まさかの前回の世界選手権で銅メダルを獲得した羽生くんでした。

確かに前回の世界選手権もショートで出遅れて、フリーでは最終グループに入れませんでしたが、このシーズンはショートで何度も世界記録を更新していたので、こんなに早い滑走順になるとは予想していませんでした。

このとき怪我を抱えていて状態が良くなかった上に、日本男子の3枠も危ういというプレッシャーのかかる状況で、見ているこちらも胃が痛くなるような緊張感の中、ただただバナーを握りしめて祈ることしかできませんでした。

そして静かに響き始めた「ノートルダム・ド・パリ」の旋律に乗せて、最初の4回転トウループを成功させて音楽も盛り上がってくる中、鬼門の4回転サルコウも何とか降りて前半は大きなミスなく乗り切りました。

そしてこの作品で私の一番のお気に入りの部分である、心がざわめくような曲調とともに後半の演技に入りましたが、ここからも何とかこらえながら次々とジャンプを決めていき、追いつめられたときに発揮する人間の底力を目の当たりにしました。

最後のジャンプを決めると会場の興奮は最高潮となり、演技が終わったときには一つのドラマを見終えたような感覚で、背水の陣で臨んだであろう羽生くんの心情を思い、涙をこらえながら精一杯バナーを振り続けました。

ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年   Beautiful Moments of Figure Skating Year 2013  2015/7/8 (Beautiful Moments of Figure Skating)

【音楽に命を吹き込み一つの物語を生み出す選手】

前回の世界選手権はお茶の間観戦でしたが、その時も彼のフリーを見て映画を鑑賞したような満足感で満たされ、音楽と彼の生き様が重なることによってその作品が彼の色に染まり、一つの物語として感情移入させられるのが彼の最大の魅力だと思います。

この全身全霊の演技を目の当たりにし、作品にどんどん引き込まれていくのを肌で感じ、彼の唯一無二の魅力を再認識しました。


この段階ですでに心が揺さぶられ気力を奪われていましたが、さらに予測不能の展開を迎える最終グループの様子は次回お話しします。

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村

Saturday, July 23, 2016

世界選手権デビューは波乱の幕開け


お気に入りの男子選手にケヴィンが加わり、俄然気合を入れて世界選手権の初観戦に臨むべく、試合前日は宿泊先のホテルでバナー作りに取り組んでいました。

これまでは小さい国旗や布にマジックで名前を書き込むという即席バナーでしたが、今回は遠くからでも見えるよう大きめの国旗を用意し、さらにラメの入った色付きの紙で選手の名前を一文字ずつ作り、それぞれの選手の国旗に貼り付けていきました。


こうして準備万端で会場に乗り込み、前回と同じくリンクが遠いなと思いつつ、初めての世界選手権ということで興奮を抑えきれませんでした。


【次々と主役が入れ替わる白熱の試合】

そしていよいよ試合が始まり、カナダ人の物凄い声援に迎えられて登場したケヴィンは、「チャンバーメイド・スイング」の音楽に乗せて果敢に2本の4回転に挑み、2本目の4回転の着氷で少しミスが出た以外はクリーンに滑り切りました。

世界で初めてショートで2本の4回転を成功した選手として誇りを持ち、自国開催でプレッシャーのかかるワールドでも自分のスタイルを崩さず、カナダ人の観客の前で良い演技を見せられたことに感動し、大声援を送るカナダ人に混ざってバナーを振り続けました。

そしてケヴィンがパーソナルベストを更新し会場が盛り上がる中、次はジュベールだと気持ちを切り替えてバナーを用意し、ファンになってから6年を経て、ようやくジュベールの演技を拝むこととなりました。

長く応援してきた選手だけあって登場したときの感動はひとしおで、天井席にもかかわらず一目見た瞬間に鳥肌が立ち、「本物のジュベールだ!」と興奮していたのを今でも覚えています。

ケヴィンへの物凄い声援の後でしたがジュベールは動じることなく、「ジェネシス」の音楽に乗せて4回転を含むジャンプを全て決め、最後は観客をあおるようにガッツポーズしました。

選手として決して若くはないにもかかわらず4回転にこだわり続け、元世界王者としての貫禄を見せつけるような演技に、カナダ人の観客も熱い声援を送っており、私も生でジュベールのノーミス演技を見て有頂天になり、無心でバナーを振り続けました。

【海外勢の活躍と日本勢に立ち込める暗雲】

そして羽生くんの出番に備えてバナーを用意しつつ、世界新記録を更新し続けてきた「パリの散歩道」をようやく見られると期待していましたが、鉄板だったショートでまさかのミスが続き、信じられないような得点と順位に動揺が隠せませんでした。

そんな不穏な空気の中次に登場したのはデニス・テンでしたが、「アーティスト」の音楽に乗せた彼の演技は素晴らしく、4回転などのジャンプを全て決めただけでなく、彼の優雅な表現にも魅せられました。

これは当然スタンディングオベーションだろうと思いましたが、彼が当時カナダであまり有名ではなかったのか周りは誰も立ち上がらず、一人立ち上がる勇気もなく座ったまま精一杯拍手を送りました。

すると90点を超える高得点が出て、自分の目は間違ってなかったなと少し救われました。

そして最終滑走のパトリック・チャンの登場で会場は最高潮の盛り上がりとなりましたが、彼はその自国開催のプレッシャーに負けることなく、「エレジー」の音楽に乗せて素晴らしい滑りを見せ、カナダ人の期待に見事に応えて見せました。

そして当然のようにパトリック1位、そしてケヴィンが見事3位となり、カナダ勢にとっては順調な滑り出しとなりましたが、日本勢は高橋大輔さんが4位に踏みとどまったものの、羽生くん9位、無良崇人選手11位と、まさかの3枠が危うい状況となりました。


こうして波乱続きの男子ショートが終わり、不安を抱えながら迎えた男子フリーの様子は次回お伝えしたいと思います。

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村

Monday, July 18, 2016

世界選手権デビューへ向けて気になる選手

クロノ・トリガー(特典なし)

明子ちゃんの珠玉の作品を目の当たりにし、現地観戦の魅力を知ってしまった私は、翌年2013年の世界選手権がカナダ開催とわかり、またまた勢いでチケットを取りました。

今回の世界選手権は春休み期間中だったため、男女ショートフリー全て観戦することにしましたが、世界選手権ということでチケットの値段がとんでもなく高かったので、泣く泣く天井席を取ることにしました。

【ゲーム好きの心をつかむ選手の登場】

この世界選手権では特に男子で応援したい選手が多く、男子の3選手に絞って本格的に手持ちバナーを作りました。

まずは男子で初めて一目ぼれしたブライアン・ジュベール、そして私を男子フィギュアの世界に引き込んだ羽生結弦選手、さらに直前の四大陸選手権で素晴らしい演技をしたケヴィン・レイノルズです。

私はアニメ音楽やゲーム音楽が好きで、たまたま「クロノ・トリガー」の音楽で滑るのを見て、初めてケヴィンの存在を知りました。

クロノ・トリガー(特典なし)

そのときは選曲が良いのに加えて4回転を含む難易度の高いジャンプを軽々と飛び、さらにゲームの世界から出てきたような容姿も相まって、まさにクワドエルフというあだ名がぴったりだなと思いました。

カナダではパトリック・チャンが一時代を築いていましたが、ケヴィンもポテンシャルはかなり高いにもかかわらず、ジャンプの難易度が高すぎるせいか、なかなか試合で実力を出し切れず歯がゆさを感じていました。

【日本中のフィギュアファンの心をつかんだ演技】

そんな中迎えた大阪開催の四大陸選手権では、優勝候補の羽生くんがミスをしてしまい、優勝争いは混戦となりましたが、そんな中ケヴィンの出番がやってきました。

ケヴィンは「ピアノ協奏曲第4番」の音楽に乗せて次々と4回転を決め、初めてフリーで3本の4回転に成功しただけでなく、宮本賢二さん振付の長い手足が映える洗練された身体表現で魅了し、ようやくノーミスの演技を見せることができました。

演技が終わった瞬間の下から突き上げるガッツポーズ、そして観客の物凄い熱狂を目の当たりにし、本人そしてファンが待ち望んだ演技がようやく見れたんだなと、会場で見ているわけではないにもかかわらず感極まってしまいました。


この演技でケヴィンは羽生くんを抑えて優勝し、シニア初タイトルを飾りましたが、表彰式の際には日本のファンに「おめでとう!」「コングラチュレーション!」などと、自国選手でないにもかかわらず凄い声援をもらっていました。

海外の選手にもしっかり声援を送る日本のファンに感銘を受けただけでなく、日本語を学んだり日本のゲーム音楽を使ったりと日本好きのケヴィンだからこそ、ここまで日本のファンに愛されるんだろうなとしみじみ感じました。


この演技により男子のお気に入りの選手がまた一人増えて迎えた世界選手権、一人一人の演技に一喜一憂する男子ショートの様子は次回お話しします。

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村

Wednesday, July 13, 2016

現地観戦に目覚めるきっかけとなった選手


羽生くん目当てで現地観戦への道を踏み出したものの、ほろ苦い観戦デビューとなったスケートアメリカでしたが、その後に行われるスケートカナダでも気になる選手がいました。


【現地観戦へと誘う選手の魅力】

その選手は私の大好きな音楽「ファイヤーダンス」で滑るのを見て以来気になり始め、さらに「ハンガリアンラプソディー」での躍動感あふれるステップに魅了された、鈴木明子さんでした。


私がフィギュアスケートを観る際には音楽に対するこだわりが特に強く、好きな選手でも音楽が好みでないとなかなか作品を好きになれないのですが、明子ちゃんの選曲は私の音楽の好みと合うことが多く、さらに身体表現がずば抜けており、一瞬でその作品に引き込む魅力がありました。

そんな明子ちゃんが出場するとわかったスケートカナダにどうしても行きたいと思い、一人の選手を目当てにするのはリスクがあると前回の経験でわかっていながらも、また勢いでチケットを取ってしまいました。

今回も休日のフリーのみの観戦で夜行バス移動という強行日程の上に、カナダはフィギュアファンが多いのか天井席しか取れませんでしたが、投げられないだろうと思いながらも一応ぬいぐるみを用意し、白の布地に英語で名前を書いただけの即席手持ちバナーも作成しました。

そして夜行バスでカナダとの国境を越える際の入国審査では、安いバスでの国境越えのためか厳しく尋問され、英語がわからず戸惑っていると「はっきりしゃべりなさい!」と怒鳴られたため、こちらも怒鳴るように質問に答え、ほとんど怒鳴り合いのような状態でした。

なんとかつたない英語で質問に答えた後、かばんの中身を全て開けられ、ぬいぐるみを見て不思議そうにパスポートをチェックし、「誕生日でもないのに何でこんな物持ってるの?」と怪しまれつつも、何とか入国審査を無事終えることができました。


こうして苦労しながらも何とかカナダの会場に到着し、前回と比べてあまりのリンクの遠さに驚きつつ、無事に会場にたどり着いて一安心しました。


天井席のためか周りはカナダ人ばかりでアウェーでしたが、隣の席のカナダ人のおばあさんが私の持っているバナーに気付き、アジア系の選手が演技すると「ほらあの人じゃないの?バナー見せたら!」と言ってくれて、「いやあの選手じゃないんだけどな・・・・・・。」と思いながらもその気遣いが嬉しかったです。


【現地観戦の醍醐味を感じる極上の作品】

そしていよいよ明子ちゃんの演技、美しい「O」の音楽を際立てる滑らかなステップ、そして盛り上がる曲調とともに全身を使った身体表現で引き込み、天井席だったにもかかわらず鳥肌が立ち、最後には涙しました。

隣のおばあさんもカナダ人選手だけ応援しているのかと思いきや、明子ちゃんの演技の途中で「ビューティフォー」とささやいており、カナダ人のおばあさんまでも虜にしていました。

演技の序盤にジャンプでミスがあったにもかかわらず、その表現の素晴らしさにあまりにも感動し、天井席で本人には見えないだろうとわかっていながらも、立ち上がって全力でバナーを振りました。

この「O」は音楽・演技・衣装全てが私の好みにぴったりはまり、生で感動を味わったのもあってか女子フリーで一番好きな作品となり、わざわざラスベガスまで本場のシルク・ドゥ・ソレイユを見に行き、サウンドトラックまで買ってしまうほどのお気に入りとなりました。

O

ここで現地観戦に目覚め、ついに世界選手権の現地観戦へと踏み出すことになりますが、世界選手権デビューの様子は次回お伝えしたいと思います。

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村

Friday, July 8, 2016

海外で人生初のフィギュア生観戦


羽生くんの引力により男子フィギュアの世界に引きずり込まれた私は、偶然にも2012年羽生くんとほぼ同時期に北米に渡っており、スケートアメリカに彼が出ると聞いて、勢いでチケットを取りました。

【準備万端で臨んだ初めての現地観戦】

スケートアメリカは思ったよりチケットが安く、しかも前の方の席ががら空きだったので、かなり良い席を取ることができました。

ただ大学に通っていた私は平日見に行くのは難しく、ショートは泣く泣く諦めフリーのみ観戦することにして、しかも終わったらすぐ会場を出ないと帰りの飛行機に間に合わないという、かなりの強行日程でしたが羽生くん見たさで即決しました。

Disney Pumpkin Pooh Bean Bag by Halloween Plush by Halloween Plush [並行輸入品]

この時期はハロウィンが近かったこともあり、かぼちゃをかぶったプーさんのぬいぐるみを投げ入れ用に購入し、さらに日本国旗も手に入れ彼の名前を書き入れた即席の手持ちバナーを作り、空港では他の日本人選手へのぬいぐるみも購入し万全の状態で会場に到着しました。


会場でまず驚いたのは日本人の数で、私の周りの席はほとんどが日本人でした。

そして自分の席がリンクにあまりに近いことにも驚き、こんな近距離で選手の演技が見れるのかと興奮していました。


すると私の隣の席の方がやってきてその方も日本人らしく、その後いろいろお話しさせていただくうちに、彼女は小塚崇彦さんのファンの寄せ書き入りの日本国旗を持って来ており、多くのファンを代表して来ている凄い方だということがわかりました。

【現地観戦デビューは予想外の結末】

そしてついに試合が始まり、後半グループの6分間練習で、初めて羽生くんを含む日本人選手を生で見た時の興奮は今でも覚えています。


まず日本人選手の先陣を切ったのは町田樹さんで、ファンから「たっきーがんば!」と声援を受けていました。

彼の演技をしっかり見たのはこの時が初めてでしたが、ミスがあったものの惹きつけられる魅力があり、その時の「火の鳥」は何度も動画を見返すほど、私にとってお気に入りの作品になりました。

そして小塚くんの出番になると隣の女性が、「たかちゃんがんばー!」と大声で声援を送り、それを皮切りに続々と声援が上がっていきました。

隣の女性は小塚くんの演技中ずっと両手を合わせたお祈りポーズで、ジャンプが決まった瞬間だけ拍手しすぐお祈りポーズに戻っていましたが、近くの席にいた別の小塚くんファンも全く同じ行動を取っていて、ファンの本気の想いをかいま見ることができました。

結果小塚くんは素晴らしい演技で、隣の女性は演技後寄せ書き入りの国旗を振り、その後国旗をリンクにそっと投げ入れているのが印象的でした。

そして最後が羽生くんでしたが、私は声援を送る勇気すら出せず、手持ちのバナーを振って応援するのが精一杯でした。

そして演技序盤の4回転は目の前で転倒してその後もミスが続き、大自爆の演技に呆然としつつも一応プーさんは投げ入れました。

結果は小塚くん優勝、羽生くん2位、町田くん3位と、日本勢が表彰台を独占するという素晴らしい成績でしたが、帰りの飛行機の時間が迫っていた私は表彰式も見れず、羽生くん目当てで来た私にとってはほろ苦い初観戦となりました。

ワールド・フィギュアスケート 55

そんな初観戦だったにもかかわらず、すぐに次の試合のチケットを取り、2度目の観戦に臨む様子は次回お話ししたいと思います。

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村

Sunday, July 3, 2016

大好きな選手の休養中に心を動かされた選手

ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2012年 Beautiful Moments of Figure Skating (Beautiful Moments of Figure Skating)

大好きな美姫ちゃんが休養を発表した2011年、あまり力を入れずボーっと見ていたグランプリファイナルで、日本人選手の鮮烈な演技を目の当たりにしました。

【真剣なアスリートと無邪気な少年の2つの顔を持つ選手】

それはたまたま見ていたファイナルの男子フリーで、ドラマチックな音楽に乗せ4回転を含む高難度ジャンプを次々に決め、ステップでは儚さと荒々しさを兼ね備えた独特の個性で魅了した、羽生結弦選手の「ロミオ+ジュリエット」でした。

ロミオ&ジュリエット [DVD]

高難度ジャンプを次々と決めてジャンプの音ハメも素晴らしく、これはノーミスかと期待していたら最後のジャンプでぐらついてしまい、最後のポーズで両手を広げた後ムンクの叫びのようにペチンと頬を覆い、演技中の鬼気迫る表情とのギャップに一目ぼれしてしまいました。

ブロッコリーハイブリッドスリーブ エドヴァルド・ムンク「叫び」 リバイバル

採点待ちでこのムンクの叫びの表情が画面に映し出されたとき、その真似をして頬を覆っている姿も愛嬌があり、点数が出たときにはイエーイと大声を出して喜び、阿部奈々美コーチと抱き合う姿はほほえましかったです。

このプログラムは阿部コーチの振付と編曲が素晴らしく、10代の彼にしか出せない儚さと荒々しさを見事に表現していたと思います。

その後行われた全日本では、フリーの最後のジャンプでまたぐらついてしまい、同じミスをしたのが許せないのか本気で悔しそうな表情をしていましたが、それでも3位となり初めて表彰台に上がり、世界選手権への出場を決めました。

【脆さと強さと美しさを全てさらけ出した渾身の演技】

そして迎えた世界選手権では惜しくも最終グループ入りを逃し迎えたフリー、ここでも彼はジャンプを次々と決めて見せ場のステップで魅了し順調かと思われたそのとき、突然ビターンと派手に転倒、あまりのことに驚き思わず「頑張れ!」と念を送ってしまいました。

しかしそこからすぐさまトリプルアクセル-トリプルトウループを決め、見事なリカバリーを見せて鬼気迫る表情で最後のステップに入り、勝負となる最後のジャンプも見事に成功させ、ようやく全てのジャンプをノーミスで揃えることができました。

演技が終わると凄い形相で右手を突き上げ、俺が世界一だと言わんばかりに人差し指を高々と上げる姿には恐ろしさも感じつつ、その後観客にお辞儀する前に余韻を噛みしめるように目を閉じた時の美しい表情、そして阿部コーチとの抱擁は映画以上に感動的なシーンでした。

ワールド・フィギュアスケート 53

そしてこのフリーで物凄い追い上げを見せた結果、ショート7位からごぼう抜きして3位まで追い上げ、初出場で表彰台に上がるという快挙を成し遂げました。

今や世界新記録を更新し続ける偉大な選手となった羽生くんですが、私はこのシーズンの「ロミオ+ジュリエット」が男子フリーでは一番好きで、彼の個性が音楽や振付と見事に一体化したこのときの彼にしかできない演技で、私を男子フィギュアの世界に引き込んだとても大切な作品です。

ロミオ&ジュリエット ロミオ&ジュリエット(2)

そんな素敵な作品に出会い男子フィギュアにのめりこんでいった私が、ついに翌シーズン初の生観戦へと踏み出す様子を次回はお話しします。

にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ
にほんブログ村