ようやく日本での生観戦が実現したNHK杯では、男子フリーで日本勢が素晴らしい結果を残し、良い流れで女子フリーを迎えましたが、序盤でまさかの事態が待ち受けていました。
【国内観戦で初めてアクシデントに遭遇】
それは第一滑走のエレーネ・ゲデバニシビリが演技を終えて得点発表を待ち、第二滑走の長洲未来選手がウォーミングアップを行っているときでした。得点がなかなか発表されず会場からも得点発表を促す手拍子が巻き起こる中、採点システムにトラブルが発生しているとのアナウンスがあり、想定外のハプニングに動揺が隠せませんでした。
このトラブルによる突然の一時中断という状況の中、未来ちゃんは黙々とウォーミングアップを続けており、会場からは「未来ちゃん頑張れ!」など温かい声援が送られ、日本の観客の優しさに心を打たれました。
そしてスタッフの方が何度も未来ちゃんに話しかけており、「この曲は長洲未来さんのリクエストです。」と未来ちゃんリクエストの曲を流したり、「長洲選手のエキシビションの出演が決まりました。」とエキシビションに招いたりと、スタッフの心遣いが感じられるアナウンスが流れるたびに観客も歓声を上げていました。
このトラブルで結局20分も待たされることになり、未来ちゃんは本来の実力が出し切れませんでしたが、難しい状況でも最後まで滑り切った未来ちゃんに、会場は総立ちで最大限の賛辞を送りました。
大事なオリンピックシーズンの試合でトラブルが起きてしまったのは問題ですが、その後のスタッフや観客の皆さんのフォローを見ていると、日本人の優しい心遣いに感動している自分がいました。
【若さを全く感じさせない上質の演技】
そして女子フリーで日本勢の先陣を切ったのは、このNHK杯でシニアデビューとなった宮原知子選手でした。シニアの試合しか見ていなかった私は全日本で3位だったことしか知りませんでしたが、ショートで私の大好きな「戦場のメリークリスマス」の曲に乗せて滑るのを見て、この曲の切なさや繊細さが伝わってくるような演技に引き付けられました。
そんな知子ちゃんのフリーに期待を抱き演技が始まるのを心待ちにしていましたが、競技中断で待ち時間が長かったからか名前がコールされてもウォーミングアップを続け、演技開始までの残り時間が迫る中コーチとギリギリまで話していて冷や冷やしましたが、コーチのところから一瞬でスタート位置につき残り1秒でポーズを取り一安心しました。
そんな演技前から動揺したフリーは「ポエタ」の迫力ある旋律で始まり、冒頭のジャンプでミスが出たもののその他の要素は素晴らしく、シニアデビューの選手とは思えないほど洗練されたしなやかな腕の動きで、このフリーでも切なさと繊細さを醸し出して曲に溶け込む美しい演技でした。
この若さでこれほど上質の作品を生み出す彼女の類まれなる芸術性に感銘を受け、日本からこんなに素晴らしい選手が出てきたことを心から嬉しく思いました。
【日本を背負ってきた選手の風格漂う演技】
そしていよいよ大本命の真央ちゃんが登場し、会場からは大ちゃん以来の物凄い声援が巻き起こり、日本を背負ってきた彼女の存在の大きさを感じました。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」の静かな旋律とともに滑り出したフリーは、ジャンプでいくつかミスが出たものの曲の盛り上がりとともに迫力を増していき、荘厳で重厚な曲に負けない力強く貫禄のある演技で観客を魅了しました。
真央ちゃんは前のオリンピックシーズンにもラフマニノフの「鐘」で滑っており、その頃はこういう曲調は若い彼女には少し重すぎるかなと思っていたのですが、再びオリンピックシーズンにラフマニノフの荘厳な曲で堂々と滑る彼女を見て、この4年間でこういう曲が似合うほどの風格を身に付けたんだなと感銘を受けました。
この堂々たる演技で真央ちゃんは見事優勝し、日本人男女でアベック優勝という素晴らしい結果となったNHK杯は、日本人選手の魅力と日本の観客の温かさを肌で感じることができ、フィギュア大国としての日本を誇りに思えた幸せな時間でした。
オリンピックシーズンに日本の強さを見せつける素晴らしい試合を堪能した後、オリンピックにおいて日本勢の脅威となる選手に初めて心を奪われ、フィギュアスケートの神髄を味わうことになる演技について次回はお伝えします。
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