羽生くんの全身全霊の演技に心を揺さぶられ、すでに満足感で満たされていた世界選手権の男子フリーですが、まだまだ上位選手が控えているため、気持ちを切り替えて最終グループに臨みました。
【世界選手権で感じたカナダ独特の空気】
最終グループには地元カナダの2選手が入り、まず前回の世界王者パトリックが登場しました。ショートでは物凄い声援に見事に応える素晴らしい演技を見せたパトリックでしたが、再び大歓声に迎えられたフリーではミスを連発してしまい、演技が終わった時は周りのカナダ人も「こりゃダメだ・・・・・・。」とつぶやいていました。
しかしカナダ人は演技内容に落胆していたにもかかわらず、一斉に立ち上がってスタンディングオベーションを送っており、普段は内容の良い演技にしかスタンディングオベーションをしない私も、周りにつられて立ち上がって拍手しました。
このときはアメリカとカナダでしか観戦経験がありませんでしたが、どんな演技内容でも自国選手には全員にスタンディングオベーションを送るというのは、カナダ独特の文化だなと日本で観戦を重ねた今でも思います。
【カナダの観客を唸らせた元世界王者の貫禄】
そんな独特の文化に触れつつ次の滑走のジュベールに向けて気合を入れ直し、これが彼にとって最後の世界選手権の演技になるとは知らず、ただただ良い演技ができるようにと固唾を飲んで見守りました。ドラマチックな「グラディエーター」の音楽に乗せて、冒頭の4回転を決めると勢いに乗り次々とジャンプを降りていき、さらに2本目の4回転でも何とかコンビネーションを付けると、そこからもジャンプを次々と成功させ大きなミスなく滑り切りました。
演技を終えるとショートと同じく観客をあおるように大きくガッツポーズし、会場も自国選手でないにもかかわらず最高潮の盛り上がりを見せ、長年憧れていたジュベールの貫禄の演技を目の当たりにした私は、夢のような気分でバナーを振り続けました。
このとき私はもちろんほとんどの観客が気づいていませんでしたが、おそらく予定していた4回転サルコウが3回転になった影響で、ザヤックルールに抵触しジャンプ1本が無効となってしまい、見た目には素晴らしい演技内容にもかかわらず得点が伸びませんでした。
あまりに低い得点に客席からはブーイングが巻き起こり、私も得点に納得できず悔しさを感じていましたが、それ以上に自国選手びいきのカナダ人がブーイングしてくれたことに感動し、この悔しさをカナダ人と共有できて元気づけられました。
ジュベールの人気はただ単に元世界王者だからというだけではなく、今大会でも2度の4回転に挑むなど4回転へのこだわりを持ち続け、周りに流されることなく自分のスタイルを貫いてきたことで、一流選手としての貫禄を身に付けてきたこれまでの努力の賜物だと思います。
後にこれがジュベールにとって最後の世界選手権だったと知り切なさに襲われましたが、彼がカナダで自国選手と同等の支持を得ているのを肌で感じることができ、彼は世界選手権優勝やフリーで3度の4回転成功など素晴らしい功績を残しつつも、記録よりも記憶に残る選手だなと実感しました。
これはスポーツと芸術の融合であるフィギュアスケートにおいては重要なことで、このような選手と出会えることがフィギュアスケートの醍醐味だと思います。
生観戦独特の空気とともに押し寄せる感情の波にこの時点で飲まれそうになっていましたが、最終グループではこの後さらなるドラマが待ち構えており、長くなってしまいますので結末は次回お伝えしたいと思います。
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