私が男子フィギュアに注目して見始めたのは2011年以降ですが、その頃から男子フィギュア界に君臨し続けている選手がいました。
それは地元カナダでのオリンピック以降4回転を身に付け、上質のスケーティングを武器に世界選手権を3連覇した、パトリック・チャンです。
しかし彼が世界選手権で完璧な演技をするのを見たことがなかった私は、彼の世界王者としての実力がいまいちわかっておらず、これまであまり注目して見ていませんでした。
そんなパトリックがオリンピックシーズン序盤に、世界記録を更新したという演技をたまたま目にしました。
【男子フィギュアの頂点に君臨する世界王者の圧巻の滑り】
それは2戦とも羽生くんとの直接対決となったグランプリシリーズで、ショートフリー共に圧巻の演技で世界最高得点を塗り替えた、エリック・ボンパール杯でのフリー「四季」でした。静かに始まり盛り上がっていく曲とともにどんどん加速し、トップスピードから繰り出す大きな4回転を2本立て続けに決めると、有名な迫力あるフレーズとともにトリプルアクセルも見事に決めて、曲負けしない圧巻の滑りで観客を惹きつけていきました。
後半になると曲はスローパートに入り穏やかになる一方、パトリックはここでも広告が読めないほどのトップスピードでしたが、途切れることなくするすると滑っていくのを見るのは心地よく、その滑りで見事に曲の優雅さを表現していました。
そして再び盛り上がる曲とともに両腕を使った効果的な振付で引き込んでいき、最後のジャンプを決めクライマックスへと向かう曲とともに、ぐんぐんスピードを上げ大きく体を使って観客をどんどん惹きつけ、全身で表現する見事なクライマックスには鳥肌が立ちました。
この「四季」はCMなどで聴いたことがある程度でそこまで思い入れはありませんでしたが、極上の滑りと独特の振付で曲の魅力を最大限に引き出したパトリックの演技を見て、これまでクラシックにあまり興味がなかったにもかかわらず、全楽章の音源を探し出して聴くほどこの曲が大好きになりました。
【滑りを極めた選手が見せるフィギュアスケートの真骨頂】
私はもともと映画やミュージカルが好きなこともあり、これまで好きになった男子スケーターはジュベール、羽生くんそして町田くんといった、オーラや表現力でドラマチックに魅せるタイプの選手がほとんどだったため、スケーティングそのもので魅了するパトリックのような選手は新鮮でした。しかし「フィギュアスケート」とはそもそも「滑る」競技であるため、滑る技術を極めたパトリックはフィギュアスケートの王道を行く選手であり、フィギュアスケートの真骨頂を見せている彼だからこそ、男子フィギュア界で世界王者として君臨してきたのだと納得しました。
パトリックの滑らかなスケーティングから生み出される柔らかい表現は、優雅で上品なクラシックの曲に自然と溶け込んでいき、曲そのものの良さを引き出し珠玉の作品に仕上げたこの「四季」は、クラシックの曲に乗せた演技としては最高峰のものだと思います。
こうしてグランプリシリーズでは世界王者が圧巻の滑りを見せましたが、グランプリファイナルの男子シングルでは3人の日本人選手の出場が決まり、彼らに期待がかかる日本開催のファイナルについて次回はお話しします。
![にほんブログ村 その他スポーツブログ スケート・フィギュアスケートへ](http://sports.blogmura.com/skating/img/skating125_41_z_snowtree.gif)
にほんブログ村