Friday, August 26, 2016

様々な想いで彩られた極上の芸術作品

ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年   Beautiful Moments of Figure Skating Year 2013  2015/7/8 (Beautiful Moments of Figure Skating)

オリンピックシーズンにグランプリファイナルが日本で開催されるという、日本のフィギュア界に追い風が吹いている状況の中、日本勢にとっては悲喜こもごもの男子ショートを終え、いよいよ勝負のフリーを迎えました。

【追い詰められたときに力を発揮できる強さ】

ショート最下位でフリー第一滑走となったのは、まさかの日本勢トップでファイナル進出を決めた町田くんでした。

固唾を飲んで見守ったフリーの「火の鳥」では、冒頭の4回転トウループを綺麗に決めると、2本目の4回転に2回転を付けてコンビネーションにして、初めて4回転を2本とも完璧に成功させました。

続くトリプルアクセルに3回転を付ける予定が2回転になったものの、前半のジャンプにミスが出なかったことで勢いに乗り、後半のジャンプも一つ一つ丁寧に決めていき、細かい手の動きを織り交ぜた華麗な振付で観客を魅了していきました。

後半は3連続のジャンプが2連続になりましたが、それ以外は予定通りの構成で全てのジャンプを綺麗に決め、フィニッシュでためてポーズを取った後、両手で顔を覆いうずくまりました。

前日のショートの不調から立て直すのがどれだけ大変だったか、感極まる彼を見ているとその想いが伝わってくるようで、見ているこちらまで感極まってしまいました。

【演じる人と見守る人それぞれの想い】

このファイナルでも解説の佐野稔さんが「火の鳥が飛び立ちましたよ!」と大絶賛で、実況のアナウンサーも思わず「まつき」と名前を間違えるほど大興奮でしたが、町田くんだけでなく稔さんも涙しているとのアナウンサーの言葉を聞いて、長年町田くんを見守ってきた稔さんの想いが伝わってきました。

演技後のインタビューでは日本開催のため恩師や家族が見に来ていると話しており、さらに日本のファンも見守る中ショートで力を出せなかったことが悔しく、フリーに全てをぶつけて今までの想いを身体表現で語ったとの言葉に、日本開催の試合にかける強い想いがこの美しい演技を生んだのかと感銘を受けました。

このときの「火の鳥」はジャンプを含む全ての要素を加点付きで綺麗にまとめ、中盤のキャメルスピンで右手を羽のようにひらひらとはためかせたり、トリプルルッツの直後に両手をくるくると華麗に回したりと、細かい振付も丁寧に表現していて美しく洗練された極上の作品に仕上がっていました。


そんな様々な想いがこもった芸術作品を堪能した後は、いよいよ熾烈な優勝争いが佳境を迎えますが、思いがけない展開となったフリーの続きは次回お話しします。

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Tuesday, August 23, 2016

日本開催の試合で見た天国と地獄

羽生結弦「覚醒の時」 (通常版) [DVD]

グランプリシリーズは世界王者パトリックが歴代最高得点を次々と塗り替え、圧巻の演技で当然のように総合1位でグランプリファイナル進出を決めましたが、日本勢もこれまでにないほど選手層が厚くなり全大会で日本人が表彰台に上がり、日本からは3選手がグランプリファイナル進出を決めました。

【世界最高の選手層を誇る日本男子】

日本人でトップとなったのはスケートアメリカでの大躍進で勢いに乗り、ロステレコム杯でも優勝してパトリックと同じく2戦2勝という結果で、総合2位となり文句なしにファイナル進出を決めた町田くんでした。

これまで世界選手権の代表にも選ばれたことのなかった彼が、オリンピックシーズンに日本勢トップでファイナルに進んだという事実は、日本の男子フィギュアの選手層の厚さを示すと同時に、オリンピック代表争いの過酷さを物語っていました。

続いて総合3位でファイナル進出を決めたのは、2戦パトリックと当たるという難しい状況の中、彼の世界記録更新の演技を目の当たりにしながらも、2戦とも2位に踏みとどまった羽生くんでした。

そして日本人3番手で出場を決めたのは、NHK杯で貫禄の演技を見せ見事優勝した大ちゃんでしたが、残念ながら怪我のため欠場することになりました。

そんな大ちゃんの代わりに繰り上がりで出場することになったのは、同じくNHK杯で素晴らしい演技を見せ2位となった織田くんでした。

日本人選手の欠場を日本人選手がカバーすることになったというのは、これも日本の男子シングルの層の厚さを示しており、さらにNHK杯で大ちゃんと織田くんの活躍を生で観た私は、より感慨深いものがありました。

【日本開催のファイナルは波乱の幕開け】

福岡での開催となったファイナルでは日本勢に大きな期待がかかる中、最初に登場した織田くんは最初の4回転で転倒したものの、その後はうまく立て直して何とか80点台に乗せ、4回転で転倒して目が覚めたというコメントが印象的でした。

その後も各選手ミスが出て調子が上がらない中、羽生くんがもはや鉄板ともいえる「パリの散歩道」で、再び歴代最高得点を更新する素晴らしい演技を見せ、一皮むけて貫禄のある選手に成長したなとしみじみ感じました。

その次の滑走となったのは日本勢トップの町田くんでしたが、冒頭の4回転トウループが2回転になってしまった上に、最後のジャンプにも2回転トウループを付けたためノーカウントとなってしまい、技術点をほとんど稼げず信じられないような得点で最下位となってしまいました。

結局ショートでは羽生くん以外の選手はミスが出て調子が上がらず、羽生くんがぶっちぎりのトップでフリーを迎えることになりました。


日本開催のファイナルを最高の演技でスタートした羽生くんの直後に、シーズン初めの勢いからは信じられないほどの不調で最下位に沈んだ町田くんという、日本人にとっては立て続けに天国と地獄を味わうようなショートとなりましたが、さらにドラマチックな展開となったフリーについては次回お伝えします。

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Wednesday, August 17, 2016

世界王者が世界王者たる所以

ワールド・フィギュアスケート 58

私が男子フィギュアに注目して見始めたのは2011年以降ですが、その頃から男子フィギュア界に君臨し続けている選手がいました。

それは地元カナダでのオリンピック以降4回転を身に付け、上質のスケーティングを武器に世界選手権を3連覇した、パトリック・チャンです。

しかし彼が世界選手権で完璧な演技をするのを見たことがなかった私は、彼の世界王者としての実力がいまいちわかっておらず、これまであまり注目して見ていませんでした。

そんなパトリックがオリンピックシーズン序盤に、世界記録を更新したという演技をたまたま目にしました。

【男子フィギュアの頂点に君臨する世界王者の圧巻の滑り】

それは2戦とも羽生くんとの直接対決となったグランプリシリーズで、ショートフリー共に圧巻の演技で世界最高得点を塗り替えた、エリック・ボンパール杯でのフリー「四季」でした。

静かに始まり盛り上がっていく曲とともにどんどん加速し、トップスピードから繰り出す大きな4回転を2本立て続けに決めると、有名な迫力あるフレーズとともにトリプルアクセルも見事に決めて、曲負けしない圧巻の滑りで観客を惹きつけていきました。

後半になると曲はスローパートに入り穏やかになる一方、パトリックはここでも広告が読めないほどのトップスピードでしたが、途切れることなくするすると滑っていくのを見るのは心地よく、その滑りで見事に曲の優雅さを表現していました。

そして再び盛り上がる曲とともに両腕を使った効果的な振付で引き込んでいき、最後のジャンプを決めクライマックスへと向かう曲とともに、ぐんぐんスピードを上げ大きく体を使って観客をどんどん惹きつけ、全身で表現する見事なクライマックスには鳥肌が立ちました。

この「四季」はCMなどで聴いたことがある程度でそこまで思い入れはありませんでしたが、極上の滑りと独特の振付で曲の魅力を最大限に引き出したパトリックの演技を見て、これまでクラシックにあまり興味がなかったにもかかわらず、全楽章の音源を探し出して聴くほどこの曲が大好きになりました。

【滑りを極めた選手が見せるフィギュアスケートの真骨頂】

私はもともと映画やミュージカルが好きなこともあり、これまで好きになった男子スケーターはジュベール、羽生くんそして町田くんといった、オーラや表現力でドラマチックに魅せるタイプの選手がほとんどだったため、スケーティングそのもので魅了するパトリックのような選手は新鮮でした。

しかし「フィギュアスケート」とはそもそも「滑る」競技であるため、滑る技術を極めたパトリックはフィギュアスケートの王道を行く選手であり、フィギュアスケートの真骨頂を見せている彼だからこそ、男子フィギュア界で世界王者として君臨してきたのだと納得しました。

パトリックの滑らかなスケーティングから生み出される柔らかい表現は、優雅で上品なクラシックの曲に自然と溶け込んでいき、曲そのものの良さを引き出し珠玉の作品に仕上げたこの「四季」は、クラシックの曲に乗せた演技としては最高峰のものだと思います。


こうしてグランプリシリーズでは世界王者が圧巻の滑りを見せましたが、グランプリファイナルの男子シングルでは3人の日本人選手の出場が決まり、彼らに期待がかかる日本開催のファイナルについて次回はお話しします。

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Sunday, August 14, 2016

フィギュア大国日本に誇りを感じられる幸せ

フィギュアスケートファン2014

ようやく日本での生観戦が実現したNHK杯では、男子フリーで日本勢が素晴らしい結果を残し、良い流れで女子フリーを迎えましたが、序盤でまさかの事態が待ち受けていました。

【国内観戦で初めてアクシデントに遭遇】

それは第一滑走のエレーネ・ゲデバニシビリが演技を終えて得点発表を待ち、第二滑走の長洲未来選手がウォーミングアップを行っているときでした。

得点がなかなか発表されず会場からも得点発表を促す手拍子が巻き起こる中、採点システムにトラブルが発生しているとのアナウンスがあり、想定外のハプニングに動揺が隠せませんでした。

このトラブルによる突然の一時中断という状況の中、未来ちゃんは黙々とウォーミングアップを続けており、会場からは「未来ちゃん頑張れ!」など温かい声援が送られ、日本の観客の優しさに心を打たれました。

そしてスタッフの方が何度も未来ちゃんに話しかけており、「この曲は長洲未来さんのリクエストです。」と未来ちゃんリクエストの曲を流したり、「長洲選手のエキシビションの出演が決まりました。」とエキシビションに招いたりと、スタッフの心遣いが感じられるアナウンスが流れるたびに観客も歓声を上げていました。

このトラブルで結局20分も待たされることになり、未来ちゃんは本来の実力が出し切れませんでしたが、難しい状況でも最後まで滑り切った未来ちゃんに、会場は総立ちで最大限の賛辞を送りました。

大事なオリンピックシーズンの試合でトラブルが起きてしまったのは問題ですが、その後のスタッフや観客の皆さんのフォローを見ていると、日本人の優しい心遣いに感動している自分がいました。

【若さを全く感じさせない上質の演技】

そして女子フリーで日本勢の先陣を切ったのは、このNHK杯でシニアデビューとなった宮原知子選手でした。

シニアの試合しか見ていなかった私は全日本で3位だったことしか知りませんでしたが、ショートで私の大好きな「戦場のメリークリスマス」の曲に乗せて滑るのを見て、この曲の切なさや繊細さが伝わってくるような演技に引き付けられました。

そんな知子ちゃんのフリーに期待を抱き演技が始まるのを心待ちにしていましたが、競技中断で待ち時間が長かったからか名前がコールされてもウォーミングアップを続け、演技開始までの残り時間が迫る中コーチとギリギリまで話していて冷や冷やしましたが、コーチのところから一瞬でスタート位置につき残り1秒でポーズを取り一安心しました。

そんな演技前から動揺したフリーは「ポエタ」の迫力ある旋律で始まり、冒頭のジャンプでミスが出たもののその他の要素は素晴らしく、シニアデビューの選手とは思えないほど洗練されたしなやかな腕の動きで、このフリーでも切なさと繊細さを醸し出して曲に溶け込む美しい演技でした。

この若さでこれほど上質の作品を生み出す彼女の類まれなる芸術性に感銘を受け、日本からこんなに素晴らしい選手が出てきたことを心から嬉しく思いました。

Poeat

【日本を背負ってきた選手の風格漂う演技】

そしていよいよ大本命の真央ちゃんが登場し、会場からは大ちゃん以来の物凄い声援が巻き起こり、日本を背負ってきた彼女の存在の大きさを感じました。

ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」の静かな旋律とともに滑り出したフリーは、ジャンプでいくつかミスが出たものの曲の盛り上がりとともに迫力を増していき、荘厳で重厚な曲に負けない力強く貫禄のある演技で観客を魅了しました。

真央ちゃんは前のオリンピックシーズンにもラフマニノフの「鐘」で滑っており、その頃はこういう曲調は若い彼女には少し重すぎるかなと思っていたのですが、再びオリンピックシーズンにラフマニノフの荘厳な曲で堂々と滑る彼女を見て、この4年間でこういう曲が似合うほどの風格を身に付けたんだなと感銘を受けました。

この堂々たる演技で真央ちゃんは見事優勝し、日本人男女でアベック優勝という素晴らしい結果となったNHK杯は、日本人選手の魅力と日本の観客の温かさを肌で感じることができ、フィギュア大国としての日本を誇りに思えた幸せな時間でした。


オリンピックシーズンに日本の強さを見せつける素晴らしい試合を堪能した後、オリンピックにおいて日本勢の脅威となる選手に初めて心を奪われ、フィギュアスケートの神髄を味わうことになる演技について次回はお伝えします。

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Thursday, August 11, 2016

日本で人気選手が出場する試合を生観戦

NHK杯国際フィギュアスケート競技大会 公式メモリアルブック (教養・文化シリーズ)

日本でフィギュアのチケットを取るのは至難の業だと聞いていましたが、海外でしか観戦経験がなかったため日本の会場の雰囲気も味わってみたいと思い、友達もチケットが取れたら一緒に行きたいとのことで、オリンピックシーズンのNHK杯のチケットを2枚申し込んでみました。

このNHK杯は高橋大輔さんや浅田真央選手など人気の選手が出場するということで、競争率が高くチケットを取るのは難しいだろうなと予想していましたが、幸運なことに狙っていた土曜日のチケットを取ることができ、男女シングルともにフリーを観戦できることになりました。


【お茶の間観戦で目に留まった演技】

ショートの演技はテレビやネットで事前にチェックしていましたが、中でも織田信成さんのショート「コットンクラブ」が特に気に入って、彼は前のオリンピックシーズンの「チャールズ・チャップリンメドレー」といい、コミカルな演技が本当に上手いなと改めて感じました。

さらに4回転を含むジャンプを全て成功させる素晴らしい内容で、本人ものびのびと滑っていて本当に楽しめる演技で、高得点を期待し会場からも得点発表を促す手拍子が上がっていましたが、発表された得点はまさかの82点台でした。

演技内容と得点があまりに剥離していたため、会場からも「えー!?」と不満の声が上がっており、本人の凍り付いた表情を見てやりきれない気持ちになりました。

どうやら4回転が回転不足を取られていたようですが、素人目には完璧なジャンプに見えたため納得できず、気になってファンの方々の感想をいろいろ調べてみると、素人の私だけでなく多くのファンがこの採点はおかしいと訴えていました。

The Cotton Club: Original Motion Picture Soundtrack

【暗雲を全て吹き飛ばした爽快な演技】

こんな不可解な採点を目の当たりにしたため、フリーこそは織田くんが報われることを願い、ひたすら祈りながら彼の演技を見守りました。

フリーの「ウィリアム・テル序曲」では最初の4回転が3回転に抜けてしまいましたが、2本目の4回転を綺麗に決めるとその後のジャンプも次々と猫足着氷で決めていき、最後まで無事に滑り終えることができてほっと一安心しました。

ただショートのトラウマがあったためハラハラしながら得点発表を待ち、本人も両手を合わせて祈りながら得点を待っている様子でしたが、今回は170点台の高得点が出て本人も嬉しそうで、最後に彼の笑顔が見れて良かったと心から思いました。

【意表を突いた選曲に戸惑う会場】

そして優勝候補の大ちゃんの前に登場したのは、ショートで2位のハビエル・フェルナンデスでした。

このシーズンの彼の演技を見るのはこれが初めてでしたが、「ピーター・ガン」の楽しげな音楽に乗せて滑るのを見て、今シーズンも得意のコミカル路線で行くんだなと思っていると、突然お色気モードの曲調になりあっけにとられました。

フィギュアを見始めてから様々な演技を見てきましたが、こんな曲調で演技する選手を見たことがなかったため戸惑いを隠せず、さらに友達と見ていたため余計に気まずさを感じてしまい、思わず「凄い選曲やな・・・・・・。」と演技中につぶやいてしまいました。

他の観客も曲に戸惑っていたからかあるいはミスが多かったからか、あまり盛り上がらず得点も伸びませんでしたが、オリンピックシーズンにかなり冒険したなと感じるこのプログラムは、今後どんな作品に仕上がるんだろうと逆に楽しみになりました。


【人気者の登場に歓喜する会場】

そしていよいよ大本命の大ちゃんの出番となり、会場はとんでもない大声援に包まれ、彼の日本での人気ぶりを肌で感じることができました。

「ビートルズ・メドレー」に乗せて演技が始まると、美しく華麗な表現で演技中にたびたび歓声が上がるほど観客を魅了し、ジャンプでいくつかミスが出たにもかかわらず会場は総立ちでした。

彼もこの2年ほど前の「ブルース・フォー・クルック」など選曲で冒険する印象があり、この「ビートルズ・メドレー」も面白い選曲だなと思いましたが、どんな曲調でも自分の色に染める表現力は唯一無二のものだなと思いました。

フロム・イエスタディ・トゥ・ペニー・レイン/ セルシェル・プレイズ・ビートル

そして結果は大ちゃん優勝、織田くん2位となり、日本勢にとって素晴らしい結果となりました。

この勢いで女子も日本人選手が活躍することを祈りつつ、女子のフリーを見届ける様子は次回お話しします。

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Monday, August 8, 2016

一目見た時から気になっていた選手の覚醒

ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2012年 Beautiful Moments of Figure Skating (Beautiful Moments of Figure Skating)

2012年に初めてフィギュアの試合を生観戦した時から、中毒的にハマって何度も繰り返し見てしまう演技がありました。

それは完璧な内容ではなかったにもかかわらず、躍動する手の動きと迫力ある首の動きにより、ダイナミックな曲調を見事に表現していた、町田樹さんの「火の鳥」でした。

【1年前に見た選手の目まぐるしい成長ぶり】

そんな町田くんが1年後のオリンピックシーズンに、同じスケートアメリカの舞台で大躍進していると聞き、さらにフリーは前のシーズンから持ち越しの「火の鳥」だと知り、気になってフリーの演技を見てみました。

そこにいたのは1年前から見違えるように成長し、4回転をバンバン決めて自信に満ち溢れ、一回りも二回りも強くなった町田くんの姿でした。

冒頭で2本の4回転を決めると勢いに乗り、盛り上がる曲調に見事に音ハメされた手と首の動きで観客を惹きつけ、トリプルアクセルからのコンビネーションも見事に決め、素晴らしい滑り出しを見せました。

そして後半もトリプルアクセルを綺麗に決めると、指先まで洗練された繊細な動きで優雅な曲調を引き立て、再び盛り上がる曲調と共に次々とジャンプを決めていき、最後のジャンプを決めると最高潮の盛り上がりとなりました。

最後のジャンプを終えてから演技が終わるまでは、1年前に初めて生で観た時のことを思い出し、1年でここまで成長できるんだと感銘を受け、こみ上げてくるものがありました。

【火の鳥と相性が良い居酒屋解説】

1年前の演技は佐野稔さん解説の動画を繰り返し見ていて、1年後のこの演技も稔さんの解説で見ていましたが、ジャンプが決まるたびに「綺麗でしたねー!」、「凄い!」などと褒めちぎり、演技が終わった瞬間「偉い!」と叫んでいました。

ファンの間では「居酒屋解説」などと呼ばれ、技術的な解説をほとんどしないため賛否両論ありますが、感情をむき出しにして思ったことをそのまま口に出す稔さんの解説は、こういったダイナミックな演技には合ってるなと個人的には思いました。

1年前のスケートアメリカでも解説をしていた稔さんは、「この1年間で町田くんは成長しまくりましたね!」と、実況のアナウンサーも苦笑いするほどのフランクな表現で称えていて、彼の成長に感銘を受けているのが伝わってきました。

そして演技後のインタビューで初めてしゃべる町田くんを観ましたが、しっかりした口調で率直な気持ちと強気な目標を語っており、「絶対にオリンピックスポットを勝ち取りたいと思います!」と宣言するのを見て、目標に向かって突き進む彼を応援したいと強く思いました。


オリンピックシーズンは新たな日本人選手の覚醒とともに幕を開けましたが、これまで次々と有力選手を輩出してきたフィギュア大国日本で、大激戦と言われているチケット争いに初参戦し、ようやく生観戦へと踏み出す様子を次回はお伝えします。

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Friday, August 5, 2016

世界選手権デビューは予想外の結末


ジュベールの貫禄の演技とそれを惜しみなく賞賛する観客の熱気を目の当たりにし、押し寄せる感情の波に飲まれそうになっていた世界選手権の男子フリーですが、まだ最終グループは終わってないんだと気合を入れ直して最終局面に臨みました。

【ロンドンワールド最大の番狂わせ】

ジュベールの低得点に対するブーイングで会場が異様な空気に包まれる中、ショートで素晴らしい演技を見せ2位につけたテンくんが登場しました。

ショートと合わせて二部作となっている「アーティスト」の音楽に乗せ、冒頭の4回転とそれに続く2本のトリプルアクセルを美しく決めて勢いに乗ると、素晴らしい音感で見事に緩急をつけた表現で惹きつけ、音楽の魅力を最大限に引き出し観客を引き込んでいきました。

そして後半のジャンプも3回転が1つ2回転になった以外は全て完璧に決め、最後のジャンプを決めると荒ぶるステップで会場を盛り上げ、選手と会場が一体化した最高のエンディングを迎えました。

ショートではノーミスでもスタンディングオベーションが少なかったテンくんですが、フリーでは観客の心を見事につかみ会場は総立ちで、やっと彼が認められたと嬉しくなりました。

本人も会心の演技に何度もガッツポーズを繰り返し、氷にキスして喜びをかみしめていました。

これはすごい得点が出そうだと期待していると、170点を超える高得点が出て会場は大興奮となり、さらに最終滑走者を残し暫定2位となり表彰台が確定すると、会場から大きな悲鳴が巻き起こりました。

私もようやくテンくんが世界の舞台で結果を出せたんだと感無量になり、順位が出た瞬間他の観客と同じく悲鳴を上げ、いろんな思いがこみ上げ号泣してしまいました。

一つの才能が花開く瞬間はこれだけ感動的なものなんだと肌で感じ、覚醒する瞬間をこの世界選手権で見せてくれたテンくんには本当に感謝しています。

羽生くんやジュベールは音楽を自分の色に染めることによって観客を引き込むタイプですが、テンくんは抜群の音感で音楽の魅力を最大限に引き出し、どんなに荒ぶっても一つ一つの動きが音をうまくとらえており、体から音を奏でているかのような表現で魅了するタイプの選手だと思います。

この世界選手権だけで男子シングルの様々な個性を感じることができ、フィギュアスケートって面白いなと改めて実感しました。


【カナダ勢の活躍と新たな選手の躍進】

そしてテンくんの大躍進に盛り上がる中最終滑走で登場したのは、自国開催の世界選手権のショートで自己最高の演技を見せ、カナダ人の観客の期待に見事に応えたケヴィンでした。

ショートと同様に物凄い歓声で迎えられたケヴィンでしたが、フリーではパトリックと同じくミスが重なり、四大陸選手権の再現とはなりませんでした。

ですがショート3位の得点と合わせて最終順位は5位と自己最高の成績を収め、パトリックもショート1位の貯金で逃げ切り見事3連覇し、カナダ勢は素晴らしい結果となりました。


そして日本勢は羽生くんが4位で最高順位となり表彰台は逃しましたが、大ちゃんが6位で無良くんが8位という結果で、みんなの頑張りが実り無事3枠を確保することができました。

そしてショートとフリーで見事に「アーティスト」の作品を完成させたテンくんは、ショート2位でフリーは1位という素晴らしい成績で、総合で2位となり世界選手権初のメダルを獲得しました。


今回の世界選手権は様々な番狂わせがあり予想外の結果となりましたが、お気に入りの選手の素晴らしい演技を生で見ることができ、さらに新たな選手の躍進を目撃することができて、見に来て良かったと心から思いました。


そして次のオリンピックシーズンではまた新たな選手の躍進を目の当たりにし、その選手にどんどんハマっていくことになるのですが、そのきっかけとなった演技について次回はお話ししたいと思います。

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Tuesday, August 2, 2016

フィギュアスケートの醍醐味


羽生くんの全身全霊の演技に心を揺さぶられ、すでに満足感で満たされていた世界選手権の男子フリーですが、まだまだ上位選手が控えているため、気持ちを切り替えて最終グループに臨みました。

【世界選手権で感じたカナダ独特の空気】

最終グループには地元カナダの2選手が入り、まず前回の世界王者パトリックが登場しました。

ショートでは物凄い声援に見事に応える素晴らしい演技を見せたパトリックでしたが、再び大歓声に迎えられたフリーではミスを連発してしまい、演技が終わった時は周りのカナダ人も「こりゃダメだ・・・・・・。」とつぶやいていました。

しかしカナダ人は演技内容に落胆していたにもかかわらず、一斉に立ち上がってスタンディングオベーションを送っており、普段は内容の良い演技にしかスタンディングオベーションをしない私も、周りにつられて立ち上がって拍手しました。

このときはアメリカとカナダでしか観戦経験がありませんでしたが、どんな演技内容でも自国選手には全員にスタンディングオベーションを送るというのは、カナダ独特の文化だなと日本で観戦を重ねた今でも思います。

【カナダの観客を唸らせた元世界王者の貫禄】

そんな独特の文化に触れつつ次の滑走のジュベールに向けて気合を入れ直し、これが彼にとって最後の世界選手権の演技になるとは知らず、ただただ良い演技ができるようにと固唾を飲んで見守りました。

ドラマチックな「グラディエーター」の音楽に乗せて、冒頭の4回転を決めると勢いに乗り次々とジャンプを降りていき、さらに2本目の4回転でも何とかコンビネーションを付けると、そこからもジャンプを次々と成功させ大きなミスなく滑り切りました。

演技を終えるとショートと同じく観客をあおるように大きくガッツポーズし、会場も自国選手でないにもかかわらず最高潮の盛り上がりを見せ、長年憧れていたジュベールの貫禄の演技を目の当たりにした私は、夢のような気分でバナーを振り続けました。

このとき私はもちろんほとんどの観客が気づいていませんでしたが、おそらく予定していた4回転サルコウが3回転になった影響で、ザヤックルールに抵触しジャンプ1本が無効となってしまい、見た目には素晴らしい演技内容にもかかわらず得点が伸びませんでした。

あまりに低い得点に客席からはブーイングが巻き起こり、私も得点に納得できず悔しさを感じていましたが、それ以上に自国選手びいきのカナダ人がブーイングしてくれたことに感動し、この悔しさをカナダ人と共有できて元気づけられました。

ジュベールの人気はただ単に元世界王者だからというだけではなく、今大会でも2度の4回転に挑むなど4回転へのこだわりを持ち続け、周りに流されることなく自分のスタイルを貫いてきたことで、一流選手としての貫禄を身に付けてきたこれまでの努力の賜物だと思います。

Brian Joubert sur papier glacé

後にこれがジュベールにとって最後の世界選手権だったと知り切なさに襲われましたが、彼がカナダで自国選手と同等の支持を得ているのを肌で感じることができ、彼は世界選手権優勝やフリーで3度の4回転成功など素晴らしい功績を残しつつも、記録よりも記憶に残る選手だなと実感しました。

これはスポーツと芸術の融合であるフィギュアスケートにおいては重要なことで、このような選手と出会えることがフィギュアスケートの醍醐味だと思います。


生観戦独特の空気とともに押し寄せる感情の波にこの時点で飲まれそうになっていましたが、最終グループではこの後さらなるドラマが待ち構えており、長くなってしまいますので結末は次回お伝えしたいと思います。

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