Wednesday, February 15, 2017

【最新】機内で味わう試合さながらの緊張感


チェコのオストラバで開かれるヨーロッパ選手権を観戦するため、公式練習が始まる前日の早朝に飛行機でプラハへと旅立ちましたが、プラハ空港に到着する予定の8時20分を過ぎても、飛行機はまだプラハの上空にいました。

【プラハに着陸できない飛行機】

そもそも飛行機が動き出してから離陸するまでに時間がかかり、離陸の時点で20分以上予定時刻を過ぎていたので、予定通りの時間には着かないだろうなと思っていましたが、パイロットの機内アナウンスで異変に気付きました。

パイロットの方によると空港周辺は霧が濃く、空港から着陸許可が出ない状態なので、15分ほど空港からの連絡を待ち、許可が出たら着陸するとのことでした。

燃料は十分あるので9時か10時頃には着陸できるようにしたいとのことでしたが、窓の外を見てみると確かに真っ白で、もし霧が晴れなかったら引き返すのだろうかと不安になり、祈るように窓の外を見つめていました。

しばらくすると再び機内アナウンスがあり、まだ霧が晴れないから45分から50分ほど上空で待機して空港からの連絡を待つとのことで、これはプラハにすらたどり着けないかもしれないと、いよいよ本格的に不安になってきました。

しかし数分後に再びパイロットの機内アナウンスが流れ、熱で少し霧を飛ばして着陸できる状態になったのでこれから着陸するとのことで、無事着陸できそうで良かったと一安心し、プラハに着いてからの日程を確認していました。

そして飛行機は徐々に高度を下げて着陸態勢へと入りましたが、突然方向転換して再び上昇し始め、多分旋回してるんだろうなと自分に言い聞かせていると、再び機内アナウンスが流れました。

何と再び霧が濃くなって着陸できなくなったため、また15分ほど上空で待機するとのことで、あの急上昇はやはり着陸を断念したからなのかと嫌な予感が当たってしまい、着陸できず引き返すという最悪のシナリオが頭をよぎりました。

【最悪の天候とパイロットの頑張り】

どうか霧が晴れますようにと願いながら窓の外を見つめていると、再びパイロットの機内アナウンスが流れ、空港から許可が出たのでもう一度着陸にチャレンジしてみるとのことで、今度こそうまくいきますようにと祈っていました。

再び飛行機は高度を下げて着陸態勢へと入りましたが、霧で視界がどんどん悪くなっていき、もはやスケーターを応援するかのように、パイロットの方に「頑張れ!」と念を送っていました。

視界は悪いものの何とか地上の景色は見渡せる状態で、どんどん地面が近づいていくのがわかり、「もう少し、頑張れ!」と心の中で応援していると、ようやく空港の地面が見えました。

そしてガタッという音で無事着陸したことがわかり、演技を終えたスケーターに拍手するようにパイロットの方にも拍手を送りたくなり、音を出さずにエア拍手していると何と乗客から本物の拍手が沸き起こり、私も精一杯拍手して乗客みんなでパイロットの頑張りを称えました。

こんなにハラハラするフライトは生まれて初めてで試合に行く前からスケーターの演技を見届けているような緊張感を味わいましたが、着陸したときも遠くが見えないほど霧が濃かったので、もう予定時刻から1時間遅れたことなどどうでもよく、こんな状況の中見事に着陸したパイロットの方を心から称えたいなと思いました。


こうしてパイロットの頑張りのおかげで何とかプラハまでたどり着き、いよいよ目的地のオストラバへと向かう様子は次回お話しします。

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Friday, January 20, 2017

【最新】初めてのユーロ観戦に向けて


来週からチェコのオストラバでヨーロッパ選手権が行われるということで、今回初めてユーロを現地観戦する予定なので、フィン杯のときと同様これまでの観戦記録を一旦中断し、タイトルに【最新】とつけて最新の観戦記録を綴りたいと思います。

今年のユーロの日程は公式練習が1月23日から始まり、試合は25日から28日の4日間にわたって開催され、エキシビションは29日に行われるということで、今回は初日の公式練習から最終日のエキシビションまでしっかり観てきたいと思います。

【ユーロのチケット購入方法】

まずはユーロのチケットについてですが、オールイベントチケットを買えば公式練習からエキシビションまで全て観られますが、最初は全日程観られるかわからなかったのでとりあえず男子のショートとフリーとエキシビションが観られるように、27日から29日のデイリーチケットをオンラインで購入しました。

デイリーチケットでは公式練習は観られないかもしれないなと思っていましたが、何とデイリーチケットしか持っていない人や試合のチケットを持っていない人でも、公式練習のチケットは初日の23日から会場のオストラバアリーナのレジで1日200円程度で購入できるとのことだったので、フィン杯で公式練習を堪能した私は迷わず初日の公式練習から見学することにしました。

【オストラバまでの移動手段】

続いてオストラバまでの交通機関についてですが、最初は最寄りのオストラバ空港まで飛行機で行く予定でしたが、値段を調べてみるとプラハ空港まで飛行機で行ってそこから列車でオストラバへ行く方が2万円ほど安くなることがわかったので、プラハからオストラバまで列車で移動することにしました。


プラハ空港から30分おきに出ているAirport Express(AE)というバスがプラハ中央駅まで乗り換えなしで直通なので、値段は普通の路線バスの倍近くしますが、それでも300円程度で乗れるということで、フィンランドのバスに悪戦苦闘した私は素直にこのバスに乗りたいと思います。


そしてプラハ中央駅でバスを降りるとチケット売り場へとつながるエレベーターがあるということなので、そのエレベーターに乗ってチケット売り場へと向かい、オストラバ=スヴィノフ駅までのチケットを1500円前後で購入し、プラハからオストラバまで3時間ほどかけて列車で移動したいと思います。


オストラバの交通機関は24時間乗り放題のチケットに加え、7日以上の場合は指定日数分乗り放題のチケットも販売しているとのことなので、移動のたびにチケットを買わなくて済むように、滞在する9日間乗り放題のチケットをあらかじめ購入しておきたいと思います。

会場まではトラムを利用することになると思いますが、最寄りのSport Arena駅には2・3・7・11・19番のトラムが止まるので、宿の最寄りのトラム乗り場からSport Arena駅までトラムで移動し、そこから徒歩5分ほどで会場のオストラバアリーナに到着します。


前回フィンランドでは交通機関をうまく使いこなせず悪戦苦闘したので、今回チェコに行くのが初めてなのもあり事前に下調べを済ませ、さらにコリャダくんの人形とバナーも完成させて準備万端で現地入りする予定ですが、全て予定通りスムーズにいくかどうかはわからないので現地で起こったことをそのまま綴っていきたいと思います。



次回からいよいよ今年初めての大きな国際試合、ユーロの観戦記録を綴っていきたいと思います。

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Wednesday, January 18, 2017

おそロシア時代の到来を確信した演技

パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 オリジナル・サウンドトラック

オリンピックシーズンの集大成となった2014年の世界選手権を3日間現地観戦し、男子はソチオリンピックの金メダリストである羽生くんが激戦を制し、羽生くんのスケート人生において大きな意味を持つワールドのタイトルを勝ち取る瞬間を目の当たりにしましたが、女子フリーだけは現地で観られなかったので自宅で見届けていました。

女子はショートで世界記録を更新した真央ちゃんを始め、カロリーナ・コストナーやユリア・リプニツカヤなどオリンピックのメダリスト達が注目を集める中、女子フリーで目を引いたのはソチオリンピックにも出場していなかったロシアの若手、アンナ・ポゴリラヤでした。

【ロシア女子の脅威を感じた演技】

「パイレーツ・オブ・カリビアン」の迫力ある音楽に乗せてポゴちゃんの演技が始まると、15歳とは思えない大人びた雰囲気と独特のオーラに惹きつけられ、冒頭のトリプルルッツ-トリプルトウループを鮮やかに決めると、さらに畳みかけるようにトリプルループ-シングルループ-トリプルサルコウの3連続も見事に決めました。

序盤から高難度ジャンプが続く見ごたえのあるプログラムにあっという間に引き込まれていき、2本目のトリプルルッツも軽やかに決めると、長い手足を生かしたスピンや全身を大きく使ったステップで惹きつけ、そのダイナミックな演技は曲の迫力にも負けておらず大器の片鱗を感じました。

そして神秘的な曲調に変わり後半に入ると、トリプルループに片手を上げたダブルトウループをつけて美しく決めて、さらにダブルアクセルを決めるとスタイルの良さが映えるスパイラルで魅了し、2本目のダブルアクセルとトリプルフリップも決めて恐るべき安定感を見せました。

続いて美しいレイバックスピンを披露すると再び迫力ある曲調に変わり、最後は長い脚を高速で勢いよく回すド迫力のスピンで、手足が長すぎてコントロールしきれていない様子でしたが、粗さがありながらも15歳とは思えない堂々たる演技で観客を魅了しました。

【ロシア女子の台頭を確信した瞬間】

この「パイレーツ・オブ・カリビアン」は迫り来る恐ろしさを感じるような曲調のプログラムでしたが、ダイナミックな演技で曲負けしないオーラを放つポゴちゃんにただならぬものを感じ、また後半の神秘的な曲調では15歳とは思えないほど妖艶で謎めいた雰囲気に惹きつけられ、このプログラムにはロシア女子の底知れぬ怖さと魅力が詰め込まれているなと感じました。

この圧巻の演技で131点台という高得点を叩き出してフリーでは3位となり、総合得点は4位で惜しくも表彰台を逃しましたがフリーの技術点では優勝した真央ちゃんを上回ってトップとなり、このシーズンのオリンピックと世界選手権ではロシア女子は2枠しかありませんでしたが、ポゴちゃんのこの演技を観てこれから女子はおそロシアの時代がやってくるなと確信しました。


ここまで2014年の世界選手権について振り返ってきましたが来週からヨーロッパ選手権を観戦する予定なので、次回からはヨーロッパ選手権についてお話ししたいと思います。

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Monday, January 16, 2017

日本の観客の恐るべき適応能力の高さ

Vol. 7-Crime Scene

2014年のソチオリンピックの後にさいたまで行われた世界選手権では、3日目の男子フリーで日本男子が壮絶な優勝争いを繰り広げ、ショート3位の羽生くんがフリーで追い上げてショート1位の町田くんと0.33点差でトップに躍り出るというドラマチックな展開となりましたが、羽生くんに続いてショート2位のハビエルが登場しました。

日本男子を破って優勝する可能性のあるハビエルに対し、アボットのときと同じように会場から大声援が送られるのを見て、日本の観客は何て温かいんだろうと感動し、生で観るのはNHK杯以来となるハビエルのフリーを楽しみにしていました。

【会場を盛り上げるエンターテイナーの演技】

「ピーター・ガン」のリズミカルな音楽に乗せてハビエルの演技が始まり、冒頭の4回転トウループを鮮やかに決めると、4回転サルコウはオーバーターンになりながらも何とかダブルトウループをつけ、トリプルアクセルも決めて順調な滑り出しを見せました。

そしてコミカルな曲に乗せてスピンとステップを披露し、妖しげな曲調に変わると会場の興奮が徐々に高まり、サックスの旋律に合わせた色気あふれる振付で「ヒュー!」と歓声が上がる中、後半の4回転サルコウを軽やかに決めました。

しかしトリプルルッツ-ダブルトウループのルッツがシングルに抜けてしまい、「あー・・・・・・。」と残念そうな声が会場に響く中、続くトリプルループは綺麗に決めて立て直すと、トリプルフリップ-シングルループ-トリプルサルコウの3連続も決めました。

再びコミカルな曲に変わると会場から手拍子が上がり、リズミカルな音楽に合わせた手拍子で盛り上がる中スピンとコレオシークエンスを披露し、トリプルサルコウも見事に決めると、最後のスピンが終わる前から会場は大歓声に包まれました。

NHK杯のフリーでは妖しげな曲調になると私自身戸惑いを隠せず、他の観客も戸惑っていたからか会場はあまり盛り上がりませんでしたが、この世界選手権では観客も大歓声で見せ場を盛り上げていて、日本の観客は適応能力も素晴らしいなと思いました。

初めてNHK杯でこのフリーを観たときはオリンピックシーズンにとんでもないプログラムを持ってきたなと感じていましたが、この世界選手権でさらに完成度を高めたフリーを改めて観てみると、最初から最後まで様々な展開があってワクワクするプログラムだなと感じ、試合とは思えないほど楽しんでいる自分がいました。

【激戦を勝ち抜いた価値ある優勝】

ハビエルはこの誰もが楽しめるフリーで179点台という高得点を叩き出し、最終結果は羽生くん優勝、町田くん2位、ハビエル3位となりました。

この世界選手権ではソチオリンピックの金メダリストである羽生くんが0.33点差で辛うじて優勝を勝ち取り、これから羽生くんの時代がやってくるんだろうなと思っていましたが、まさかこの後2シーズン続けて世界選手権で優勝を逃すとは思わず、今となってはこのとき優勝しておいたのは羽生くんにとって凄く大きかったなと思います。

Harlem Nocturne (Instrumental) (1996 Digital Remaster)

こうして男子の激しい戦いが終わり私は一度さいたまを離れますが、自宅でお茶の間観戦した女子フリーで印象に残った演技について次回はお伝えします。

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Friday, January 13, 2017

世界のトップを争う日本男子の黄金期

改訂版 - ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2014年ISU世界選手権 Beautiful Moments of ISU World Figure Skating Championships 2014 Saitama Japan (Beautiful Moments of Figure Skating)

オリンピックシーズンにさいたまで行われた2014年の世界選手権では、3日目の男子フリーで町田くんが2シーズンかけて熟成させた「火の鳥」を見事に演じ切り、最後にして最高の「火の鳥」を観ることができましたが、その町田くんと優勝を争う羽生くんの登場で会場は再び熱気に包まれました。

ソチオリンピックの金メダリストとしてこの世界選手権に臨み、誰もが優勝候補の筆頭だと思っていましたが、ショートでは珍しく4回転トウループで転倒してしまい、ショート1位の町田くんとは7点差のショート3位でフリーを迎えました。

【逆転優勝を狙って死力を尽くしたフリー】

「ロミオとジュリエット」の激しい旋律に乗せて羽生くんの演技が始まると、冒頭の4回転サルコウを何とかこらえ、続く4回転トウループを鮮やかに決めると、トリプルフリップも決めて順調な滑り出しを見せました。

穏やかな曲調に変わって後半に入ると、トリプルアクセル-トリプルトウループを何とかこらえ、2本目のトリプルアクセルは両手を上げたダブルトウループをつけて美しく決めると、続くトリプルループも綺麗に決めました。

しかしトリプルルッツの着氷で乱れてしまい、ヒヤッとしましたがシングルループとトリプルサルコウを何とかつけてコンビネーションにつなげると、最後のトリプルルッツも見事に決め、見せ場のイナバウアーで会場は最高潮の盛り上がりとなりました。

【2シーズンで見せた急成長と強さの秘訣】

演技を終えると力尽きたのかそのままリンクにしゃがみ込み、2シーズン前のロミオとジュリエットでも最後にばてていたのを思い出しましたが、あれから2シーズンでとんでもない成長を見せたなと思うと感慨深く、会場も総立ちで羽生くんの勇姿を称えました。

このフリーではこらえるジャンプが多かった印象ですが、1年前の世界選手権のフリーでもジャンプをこらえながらも何とか最後まで滑りきっていたのが印象的で、それまで試合でなかなか決まらなかった4回転サルコウを、2年連続で世界選手権のフリーで降りるというのは驚異的だなと思いました。

そして初出場の世界選手権から3年連続でフリーのジャンプを全て降りていてピークを合わせるのが上手いなと感銘を受けましたが、世界選手権ではショートで出遅れてフリーで挽回するというパターンが続いていて、ソチオリンピックでは金メダルだったもののショート1位で迎えたフリーでミスが続き不本意な演技となってしまったので、追われるより追う立場になったときに底力を発揮するんだなと羽生くんの強さの秘訣を見た気がしました。

この渾身のフリーで191点台という高得点を叩き出し、総合得点は282.59点で町田くんと何と0.33点差で辛うじてトップに躍り出るというとんでもない逆転劇を見せ、町田くんの心情を思うと少し切なさも感じましたが、世界選手権で日本男子が優勝争いを繰り広げるという歴史的瞬間に立ち会えるなんて凄く幸せなことだなと思いました。


こうして男子フリーでは日本人同士で激しい優勝争いを繰り広げる中、もう一人の優勝候補の登場で会場が再び熱気に包まれる様子は次回お話しします。

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Wednesday, January 11, 2017

空中戦に突入した今でも恋しくなる演技

改訂版 - ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2014年ISU世界選手権 Beautiful Moments of ISU World Figure Skating Championships 2014 Saitama Japan (Beautiful Moments of Figure Skating)

オリンピックシーズンを締めくくる2014年の世界選手権がさいたまで行われましたが、3日目の男子フリーではアボットの渾身の演技にアメリカかと思うほどの大歓声が沸き起こり、どの国の選手にも惜しみなく声援を送る日本の観客の温かさを肌で感じ、いよいよ日本男子が登場する最終グループを迎えました。

まずはショート1位でフリーを迎える町田くんが日本男子の先陣を切って登場すると、2年前のスケートアメリカで「火の鳥」を滑る姿を目の前で見ていた私は、あのときのスケアメと同じ衣装で登場する姿にこみ上げてくるものがあり、2シーズンかけて磨き上げてきた「火の鳥」の完成形が見られることをただただ願って見つめていました。

【2シーズンかけて熟成させた火の鳥の最後】

いよいよ激しい音楽に乗せて「火の鳥」の最後の演技が始まり、冒頭の4回転トウループを何とかこらえると、2本目の4回転トウループはダブルトウループをつけて綺麗に決め、続くトリプルアクセル-トリプルトウループも鮮やかに決めました。

そして優しい曲調に変わって後半に入り、2本目のトリプルアクセルを何とかこらえると、足換えキャメルスピンでは鳥が羽ばたくように右手をひらひらと優雅にはためかせ、トリプルループはオーバーターンになりながらも何とかこらえました。

こらえるジャンプが続いて心配になりましたが、続くトリプルルッツは美しく決めて着氷後も両手をくるくると華麗に回す振付で魅了し、トリプルフリップ-ダブルトウループ-ダブルループの3連続も軽やかに決めると、最後のトリプルサルコウも見事に決めました。

ジャンプを無事に終えてすでに感極まっていましたが、全日本でもジャンプを全て決めたものの最後のコレオシークエンスの途中でつまずいてしまったので最後まで油断できず、コレオシークエンスから最後のスピンまで無事に終えるのを見届け、フィニッシュポーズを見てようやく「火の鳥」が完成したんだと感無量でした。

【2年間の成長とこだわりを感じさせる演技】

フィニッシュとともに大歓声が沸き起こり、会場は総立ちで町田くんの勇姿を称え、私も2シーズンかけて完成させた「火の鳥」の最後を見届けることができて感激し、天井席でしたが立ちあがって精一杯拍手を送りました。

この演技が観られただけでも満足でしたが、184.05点という全日本より高い得点でパーソナルベストを更新し、2年前のスケアメでは154.17点だったことを思うと、あれから2シーズンが経ち再び同じ衣装で滑って30点も高い得点を出すなんて夢のようでただただ胸がいっぱいでした。

ワールド・フィギュアスケート 55

そして何よりもこの作品がやっと完成したなと思えたのは予定通りのジャンプを全て飛んだ上で、キャメルスピンで右手をはためかせたりトリプルルッツの着氷後に両手を回したりといった細かいところまで洗練された演技ができたというのが大きく、特に町田くんの「火の鳥」ではトリプルルッツに限らずジャンプ着氷後に独特の振付が盛り込まれているところが大好きで、さらに美しいキャメルスピンでは最初からレベル3の構成でレベルよりも芸術性を大事にしているんだろうなというこだわりを感じました。

あれから男子フィギュアはどんどん進化していき、今や様々な種類の4回転が飛び交う空中戦に突入し、さらにスピンやステップでもレベル4を揃えることが求められるというとんでもなくハイレベルな時代となりましたが、そんな現在の男子ではなかなか見られないような芸術性を追求していた町田くんの演技が今でも時々恋しくなります。

JOE HISAISHI CLASSICS 3:ウィリアムテル序曲/亡き王女のためのパヴァーヌ/組曲「くるみ割り人形」/火の鳥 1919版

こうして町田くんの「火の鳥」の完成形を見届けた後、さらにドラマチックな展開を迎える様子は次回お伝えします。

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Monday, January 9, 2017

選手の心を動かす日本の観客の温かさ

ザ・レジスタンス

オリンピックシーズンの集大成となった2014年の世界選手権では2日目の女子ショートで真央ちゃんが世界記録を更新しましたが、世界一の実力がありながらオリンピックでその実力を発揮できない不器用さが美姫ちゃんと重なり、こういう不器用さも日本女子の愛すべきところだなとしみじみと感じ、いよいよ3日目を迎えて勝負の男子フリーへと向かいました。

日本男子が控える最終グループを前に、第3グループで現役最後の試合としてこの世界選手権に臨むジェレミー・アボットが登場し、会場はアメリカかと思うほどの大歓声に包まれ、演技前にはおじさんの大声での声援に拍手が起きるのを見てアボットの人気を実感しました。

【現役最後と決めた選手の渾身の演技】

「エクソジェネシス」の優しい旋律に乗せてアボットの演技が始まり、冒頭の4回転トウループを見事に決めると、続くトリプルアクセルは何とかこらえてダブルトウループをつけ、トリプルフリップも決めて順調な滑り出しを見せました。

そして音楽が盛り上がってきたところでダブルアクセルを決めると、続くトリプルアクセルも見事に決め、さらに畳みかけるようにトリプルサルコウを決めると、音楽とともに会場の興奮も高まっていきました。

さらにトリプルルッツ-トリプルトウループ-ダブルトウループを決めると、最後のダブルアクセル-ダブルトウループも決めて、再び優しい曲調になると立ち止まって手をつく独特の振付で歓声を呼び、演技が終わる前から会場は総立ちでとんでもない歓声に包まれました。

【点数以上の感動を呼んだ選手】

壮大な音楽に乗せて畳みかけるようにジャンプを決めていく様子は、アボットのスケート人生の集大成を見ているようで、こんなに感動して幸せな気分になる演技はなかなか観られないなと思い、私も立ち上がって全力で拍手を送りました。

しかし得点は166点台と思ったほど伸びず、アボットも首を横に振って納得していない様子がスクリーンに映り、良い演技だったにもかかわらず得点が伸びないというのはジュベールで何度も経験してきましたがやはり切なく、天井席だったから最初のジャンプは4回転に見えたけど実は3回転だったのかななどと想像を巡らせていました。

改めて確認してみるとやはり最初のジャンプは4回転でしたが、オリンピックのショートで激しく転倒してフリーでトリプルループを飛べなかったときと同様この世界選手権でもトリプルループの代わりにダブルアクセルを2回飛んでおり、さらにトリプルルッツからの3連続でも回転不足を取られ、オリンピックでの怪我がまだ響いているのかなと感じました。

しかし現役最後と決めた試合で自分の力を出し切れたことが何よりも素晴らしく、特にアボットは体が大きく手足が長いのに無駄な動きがなく洗練された印象で、これまで体の大きな選手はダイナミックな演技が得意な印象がありましたが、長い手足を見事にコントロールしてあれだけ繊細な演技ができるのがアボットの凄さだなと思いました。

そしてこのシーズンで現役を引退する予定だったアボットはこの世界選手権のフリーで大歓声を受けたことで現役続行を決め、演技前に声援を送っていたおじさんはアボットのお義父さんだったことを後で知りましたが拍手していた観客は全て知っていたんだなと思うと、日本の観客は知識だけでなくどの国の選手にも温かいところが本当に素晴らしく、選手の心を動かす大きな原動力になるんだなと感銘を受けました。


こうして最終グループを前にすでに会場は最高潮の盛り上がりを見せていましたが、いよいよ日本男子が登場する最終グループを迎える様子は次回お話しします。

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Friday, January 6, 2017

世界一のスケートと愛すべき不器用さ

改訂版 - ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2014年ISU世界選手権 Beautiful Moments of ISU World Figure Skating Championships 2014 Saitama Japan (Beautiful Moments of Figure Skating)

オリンピックシーズンの集大成となる世界選手権が全日本と同じさいたまで開かれるということでチケットを何とか確保し、初日は男子ショートの最終グループの途中からしか観られませんでしたが、素敵な演技をいくつも観ることができて短くも充実した時間を過ごし、いよいよ2日目を迎えて期待を胸に女子ショートへと向かいました。

ソチオリンピックで金メダルを争ったアデリナ・ソトニコワとキム・ヨナが不在の世界選手権で、女子の注目は何といっても真央ちゃんでしたが、ソチオリンピックのショートではミスが続いて信じられない順位に沈んでしまったので、ここであのときの悔しさを晴らすことができればいいなと願っていました。

【オリンピックの雪辱を果たすショート】

「ノクターン」の軽やかな音楽に乗せて真央ちゃんの演技が始まり、明るいピアノの音色とは裏腹に会場は冒頭のトリプルアクセルに向けて緊張感が高まっていきましたが、トリプルアクセルを見事に決めると割れんばかりの大歓声が沸き起こり、会場が一つになった気がして鳥肌が立ちました。

続いてトリプルフリップも鮮やかに決めるとそのまま流れるようにスピンに入り、後半のトリプルループ-ダブルループも軽やかに決めると、ステップではこぼれ落ちるピアノの音を一つ一つ拾っていくような柔らかい表現が心地よく、最後のスピンまでピアノのきらきらした音色と一体化して曲の世界観を見事に表現していました。

【軽やかに塗り替えられる世界記録】

会心の演技に会場は総立ちで歓声を送り、花やぬいぐるみが雨のように降り注ぐこの日一番の盛り上がりを見せましたが、トリプルアクセルを入れた高難度のプログラムにもかかわらず、最初から最後まで流れるような演技で曲の世界観に自然と溶け込んでいたのが何よりも凄いなと思いました。

そして78.66点という得点が発表されると会場は再び割れんばかりの大歓声に包まれましたが、私はこれまで聞いたことのない得点に「もしかして世界記録?」と何となく感づき、あんなに軽やかな演技で世界最高得点が出せるなんて信じられないとあっけにとられつつ、もしこれがオリンピックでできていればという思いもこみ上げてきました。

こんなにさらっと世界記録が出せる真央ちゃんはこのとき間違いなく世界一の女子スケーターだったと思いますが、前回バンクーバーオリンピックで銀メダルに終わった後の世界選手権で優勝していたこともあり、美姫ちゃんと同様なかなかオリンピックにうまくピークを合わせられないもどかしさはありますが、そんな不器用なところも日本女子の愛すべきところなのかなと感じました。


こうして女子ショートでは真央ちゃんの世界記録更新という歴史的瞬間を目の当たりにしましたが、翌日の男子フリーでさらなるドラマを目撃する様子は次回お伝えします。

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Wednesday, January 4, 2017

フィギュアを純粋に楽しむということ

クロックス

ソチオリンピックは真央ちゃんの渾身の演技に感銘を受け、フィギュアへの向き合い方を考え直す大きな転機となりましたが、オリンピックシーズンの集大成となる世界選手権が日本で開催されるということで、激しいチケット争奪戦に加わり女子フリー以外は何とかチケットを確保することができました。

しかし初日は大学の卒業式と重なってしまい、東北地方に住んでいた私は卒業式が終わると急いで家に帰って支度を済ませ、慌てて新幹線に乗り込み世界選手権が行われるさいたまへと向かいましたが、途中で乗り換えを間違えかなりの時間をロスしてしまいました。

車内で初日の男子ショートの滑走順を見つめながら、もう最終グループ前の町田くんの演技には間に合わないなと諦め、せめて最終グループの羽生くんの演技に間に合えばいいなと願いつつ、前回全日本を観に行ったときの記憶を頼りに新幹線と電車を乗り継ぎ何とかさいたまスーパーアリーナに到着しました。

【会場に入って感じた違和感】

会場に入ると羽生くんのショートの曲が聞こえ、入口から遠い天井席を取ってしまった自分を恨みつつ、急いでエスカレーターに乗り自分の席へ向かうとちょうど演技が終わるところで、演技後の観客の様子で何かあったんだなとわかりました。

ノーミスの演技ならもっと会場は盛り上がってたはずだろうと思いつつ、演技の振り返り映像を見ると4回転で転倒しているところが映り、ああこのミスがあったからかと納得し、この転倒を見なくて済んだのはある意味ラッキーだったのかなと思うことにしました。

しかしミスがあっても91点台の高得点で2位につけ、さすがソチオリンピックの金メダリストだなと思いつつ、1位は町田くんだったらいいなと願いながら、次のペーター・リーベルスの演技を迎えました。

【ソチオリンピックで最も印象に残った男子の演技】

ソチオリンピックの男子は優勝した羽生くんも含め、どの選手もミスが出る大混戦となりましたが、そんな中で個人的に一番印象に残ったのは、リーベルスさんのショートの演技でした。

「クロックス」の美しく疾走感のある音楽と爽やかなブルーが映える綺麗なグラデーションの衣装が凄く好みで、音楽から衣装までまさに私の理想を具現化したようなこの作品を、オリンピックという大きな舞台で4回転からのコンビネーションを含め全てミスなくこなし、それほど名前の知られていなかったリーベルスさんの鮮烈な演技が男子では一番輝いて見えました。

その作品を生で観られるということで期待していると、曲が流れた瞬間からオリンピックの記憶が走馬灯のように蘇り、4回転トウループなどのジャンプでミスはありましたが、綺麗な音楽や衣装を純粋に楽しむというフィギュアを観始めた頃の初心を思い出させてくれる素敵な演技でした。

続いてハビエルが得意のコミカルな曲に乗せて4回転サルコウを鮮やかに決めると、その後もミスなくこなし96点台の高得点で2位につけ、さらに最終滑走のハン・ヤンもトリプルアクセルに4回転トウループと迫力あるジャンプを次々と決めて、ノーミスの素晴らしい演技で男子ショートは幕を閉じました。

そして最終結果が映し出されたスクリーンを目を凝らして見てみると、町田くんが何と98点台というとんでもない得点でトップに立っていて、見届けることはできなかったけど無事良い演技ができたんだなと一安心し、男子ショートは少ししか観られませんでしたが素敵な演技をいくつも観られて幸せな気分で会場を後にしました。


こうして短くも充実した時間を過ごすことができた男子ショートを終え、翌日から本格的に観戦する様子は次回お話しします。

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Monday, January 2, 2017

本当の意味でのフィギュアファンとは

改訂版 - "Beautiful moments of figure skating Winter Olympic Games Sochi 2014 (Revised Edition)' ソチオリンピック2014年フィギュアスケート写真集 (Beautiful moments of figure skating Winter Olympic Games Sochi 2014)

世界一過酷なオリンピック代表選考会となった2013年の全日本を経ていよいよ2014年のソチオリンピックを迎えましたが、大好きな美姫ちゃんがいないオリンピックを観るのは初めてで、特に女子は誰を応援するというわけでもなくフラットな目線で観ていましたが、ショートでは予想外の展開に驚きを隠せませんでした。

それは金メダルが期待されていた真央ちゃんが冒頭のトリプルアクセルで転倒してしまい、さらに最後のトリプルループからのコンビネーションがダブルループに抜けてコンビネーションにできず、立て続けのミスで得点を大きく失い、ショート16位という信じられない順位に沈んでしまったことでした。

トップの選手達とは20点近く離されてしまい、金メダルどころか表彰台すら絶望的な状況でフリーを迎え、第2グループという誰も予想していなかった滑走順で登場した真央ちゃんを、テレビの前で固唾を呑んで見つめていました。

【背水の陣で臨んだ決死のフリー】

「ピアノ協奏曲第2番」に乗せて真央ちゃんの演技が始まり、冒頭のトリプルアクセルを見事に決めると、続くトリプルフリップ-トリプルループのコンビネーションも決め、さらにトリプルルッツも決めて順調な滑り出しを見せました。

そしていよいよ大事な後半に入り、ダブルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションを決めると、続くトリプルサルコウも鮮やかに決めて、畳みかけるようにジャンプを次々と決めていく真央ちゃんに夢中になっていました。

さらに盛り上がる音楽とともに緊張感が高まる中、トリプルフリップ-ダブルループ-ダブルループの3連続も決めていよいよ最後のジャンプ、トリプルループを見事に決めると鳥肌が立ち、最後のステップはあまりに神々しく一人の人間が神になる瞬間を目撃している気がしました。

しかし演技が終わり涙する真央ちゃんを見て、ああやっぱり人間なんだなと思って涙がにじみ、演技後しばらく言葉を発しなかった実況のアナウンサーが、「これが浅田・・・・・・真央です。」と絞り出すように言った言葉が頭から離れませんでした。

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2014年 3/13号 [雑誌]

女子では誰も飛んでいなかったトリプルアクセルにショートから果敢に挑み、フリーでは全種類のトリプルジャンプを入れるという史上最高難度のジャンプ構成を見事にやってのけ、確実に勝ちに行く構成ではなく自分のこだわりを守り抜く構成を選んだ真央ちゃんは、誰よりもアスリートらしいアスリートだなと思いました。

【フィギュアに対する意識が変わった瞬間】

この圧巻の演技で142点台と自己最高得点を叩き出し6位まで順位を上げましたがもう得点や順位などはどうでもよく、演技後には杉浦アナが涙声で言葉を詰まらせながら話していたのが印象的で、真央ちゃんの人気はトリプルアクセルが飛べるからとか純粋で可愛らしいからとかそんな単純なものではなく、苦しみもがきながらも自分を貫き続ける姿が多くの人の心を動かしてきたんだなと実感しました。

私はフィギュアを観始めたときからずっと美姫ちゃんに夢中でしたが、美姫ちゃんへの思い入れが強すぎるあまり他の女子選手の演技としっかり向き合っていなかった気がして、これまでの私はフィギュアファンではなく美姫ちゃんファンだったのかなと感じ、これからは全ての選手と向き合う本当のフィギュアファンになりたいなと思わせてくれた真央ちゃんの演技でした。

ラフマニノフ : ピアノ協奏曲 第2番 | 第3番 (Rachmaninov : Concertos pour piano 2 & 3 / Boris Berezovsky (piano), Dmitri Liss (direction), Orchestre Philharmonique de l'oural) [輸入盤]
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こうしてフィギュアに対する見方が変わったオリンピックを経て、オリンピックシーズンの集大成となる世界選手権の観戦に臨む様子は次回お伝えします。

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