Friday, September 30, 2016

一皮むけて大人の選手に成長した瞬間

ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年ISUグランプリシリーズ - ロステレコム杯Beautiful moments of ISU Grand Prix Cup of Rostelecom Moscow 2013 (ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年ISUグランプリシリーズ - ロステレコム杯Beautiful moments of figure skating)

オリンピック代表を決める最終選考会となった2013年の全日本では、最終種目の女子フリーも最終グループとなり、現役最後のシーズンとして臨んだベテラン勢の演技に一喜一憂しながら、それぞれの選手の全日本最後の演技を見届けていました。

【大舞台でも落ち着いた演技で魅せられる強さ】

そんな中初のオリンピック出場を目指す若手選手として登場したのは、前回のオリンピックの翌シーズンに鮮烈なシニアデビューを果たし、ショートではその頃の爆発力を彷彿とさせる素晴らしい演技で3位となった佳菜子ちゃんでした。

美しい青のグラデーションの衣装を身にまとい、「Papa, Can You Hear Me?」のしっとりした旋律に乗せて、冒頭のトリプルトウループ-トリプルトウループのコンビネーションを綺麗に決め、続くトリプルルッツとトリプルループも決めて順調な滑り出しを見せました。

そしてステップではキレのある動きで観客を惹きつけ、後半もトリプルフリップからのコンビネーションを落ち着いて決めると、続くトリプルフリップとダブルアクセルも鮮やかに決め、失敗する気配がありませんでした。

その勢いのまま最後のジャンプ、トリプルサルコウからの3連続を軽やかに決めると、スパイラルから全身を大きく使った表現で魅了し、最後は美しいビールマンスピンで締めくくりました。

この「Papa, Can You Hear Me?」は私のハンドルネームの由来でもあるアメリカのドラマ「glee」で初めて聴いてからずっと気に入っていた曲でしたが、シニアデビューの「ジャンピン・ジャック」でのはつらつとした印象が強かった佳菜子ちゃんが、こういったしっとりした曲で魅せられるようになるとはあの頃は想像もつきませんでした。

パパ、私の声が聞こえる? featuring レイチェル

【無邪気な少女から大人のアスリートへの成長】

まだジュニアだった4年前のオリンピックシーズンのフリーでは、前の滑走だった明子ちゃんの高得点を自分のことのように喜んでいて、舞い上がりすぎたのか演技開始の位置を間違えたり最初のジャンプがシングルになったりとお茶目な一面を見せていたのが印象的でしたが、自分がオリンピックを目指す立場となったこの全日本ではもうあの頃の面影はありませんでした。

演技中はゾーンに入っているような無敵の状態に見え、演技が終わると満足げに何度もガッツポーズを繰り返すその姿は、もはや幼くあどけない少女ではなく、闘争心あふれる立派なアスリートに見えました。

元々彼女は長い手足を生かしたスピンやステップが上手いなと思っていたので、ジャンプが決まれば本当に爆発力のある選手だなと改めて感じるとともに、このしっとりした曲で一皮むけて大人の演技ができる選手へと成長したなと思いました。

この完成された演技に会場からは大歓声とともにスタンディングオベーションが送られ、得点も135点台という高得点を叩き出し、総合得点は200点を超え最終滑走者を残して2位となり、この熾烈な戦いとなった全日本で見事表彰台が確定しました。

シネマ・セレナーデ

こうして若手選手の成長を見届けた後、いよいよこの全日本を締めくくる最後の選手が登場し、オリンピックへの過酷な戦いの結末を見届ける様子は次回お伝えします。

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Wednesday, September 28, 2016

生観戦により孤独から解放された瞬間

ワールド・フィギュアスケート 19

オリンピックシーズンを現役最後のシーズンとして迎える選手は多く、特にこの2013年の全日本は多くの有力選手が最後の全日本として臨んでおり、私も覚悟を決めてそれぞれの最後を会場で見届けていました。

【覚悟を決めて見届けた大好きな選手の最後の姿】

そんな全日本最終日の女子フリーでは、明子ちゃんが現役最後の全日本を素晴らしい演技で締めくくるのを見届け、いよいよ私が8年間応援してきた選手の出番がやってきました。

それは女子初の4回転や二度の世界女王など数々の実績を積み重ね、出産を乗り越えて迎えたこの全日本で、ショートではノーミスの演技でその復活を印象付けた美姫ちゃんでした。

彼女の登場に会場中から多くの声援が送られ、その声援を聞いて涙を拭う彼女に演技直前にもかかわらず会場から温かい拍手が送られ、会場のファンのあまりの温かさに私も演技前からすでに感極まってしまいました。

そんな中「火の鳥」の迫力ある旋律に乗せて彼女の最後の演技が始まり、冒頭のトリプルルッツ-ダブルループを鮮やかに決めて全盛期の片鱗を見せましたが、続くトリプルサルコウはシングルになってしまいました。

しかしそこからダブルアクセル-トリプルトウループを決めて立て直し、2010年に優勝した全日本と同じレベルのコンビネーションジャンプをこの全日本でも見ることができて、彼女のジャンプの才能を会場で改めて感じることができました。

そして穏やかな曲調に変わった後半最初のジャンプ、トリプルルッツもシングルになってしまい、このときこれが彼女の現役最後の演技になるだろうと自分の中で覚悟が決まりました。

続くトリプルサルコウは綺麗に決まり、さらに2本目のトリプルサルコウはダブルトウループを付けてオーバーターンになりながらもコンビネーションにし、3回コンビネーションジャンプを入れるという意地を見せました。

そして最後のジャンプ、ダブルアクセルを鮮やかに決めると、最後はステップから空を飛んでいるようなスパイラルで演技を締めくくりました。

このとき彼女は本当にリンクから飛び立っていってしまったんだなと思い、会場から温かい拍手と声援が送られる中、心が空っぽになった気分で彼女がリンクから去るのを見届けました。

【第一線で戦い抜いた選手を送り出す温かい拍手】

キスアンドクライで涙を流す彼女の姿が映し出され、106点台という得点が発表されると会場からは温かい拍手が送られ、いつまでも止まらない拍手に彼女の涙も止まらず、私も人目を気にしていられないほど涙があふれてきて必死に涙を拭いながら拍手しました。

それまで周りにフィギュアのファンもほとんどいなかったので、彼女をお茶の間で一人応援してきましたが、このとき周りを見渡すと私以外にも泣いている人がいて、長年一人でファンを続けてきた孤独からようやく解放された気がしました。

明子ちゃんのような有終の美とはなりませんでしたが、ショートではノーミスの演技を観ることができて、そしてフリーではファンの温かさを感じることができて、勇気を出して全日本を観に来て良かったなと心から思いました。

彼女がいないここ数年は男子にすっかりのめり込んでいましたが、この全日本で何よりも観たかったのは彼女が滑っている姿で、これから先どんなに素晴らしい選手が出てこようとも、私の中では彼女がずっと一番好きな選手であることに変わりはありません。

戦メリで私にフィギュアの世界を教えてくれて、私の人生を大きく変えてくれた美姫ちゃんには感謝してもしきれません。

これまで厳しい世界でずっと第一線で活躍し続け、ファンにたくさんの希望を与えてくれたので、これからは娘さんとともに穏やかで充実した日々を過ごせるよう心から祈っています。


そんな大好きな選手の最後を見届けた後、いよいよ長かった全日本の戦いも終盤を迎える様子は次回お話しします。

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Monday, September 26, 2016

最後の全日本で奇跡を起こした選手

笑顔が未来をつくる――私のスケート人生

オリンピックの代表選考会となった2013年の全日本は、最終日の最終種目である女子フリーの最終グループまで有力選手がひしめき合っており、最後の最後まで目が離せない戦いとなりました。

そんな有力候補の先陣を切って登場した知子ちゃんの、シニアデビューとは思えない美しく洗練された演技に魅了され、その余韻にずっと浸っていたい気分でしたが、ここからベテラン勢が次々登場するため気持ちを切り替えて集中しました。

【様々な試練を乗り越えた選手が最後に見せた輝き】

シニアデビューの知子ちゃんに続いて登場したのは、現役最後のシーズンとして挑んだこの全日本で、ショートでは素晴らしい演技を見せて2位となり、いよいよ全日本最後の演技を迎える明子ちゃんでした。

純白でキラキラ輝くウエディングドレスのような衣装に身を包んで登場すると、「オペラ座の怪人」の優しい旋律に乗せて彼女の全日本最後の演技が始まり、曲が静かに盛り上がっていく中迎えた最初のジャンプ、トリプルフリップからの3連続を決めると同時に激しい曲調へと変化し疾走感を増していきました。

そのまま勢いに乗ってダブルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションを決めると、おなじみの迫力あるフレーズに乗せてトリプルルッツも鮮やかに決め、疾走感とともにどんどん観客を引き込んでいきました。

後半に入ると穏やかな曲調に変わり、得意のステップでは滑らかな動きで真っ白な衣装とともにリンクに溶け込んでいきそうなほど柔らかい雰囲気を醸し出し、再び曲が盛り上がっていく中トリプルフリップ、トリプルループと立て続けにジャンプを決めていきました。

さらにトリプルサルコウからのコンビネーションを決めると、スピードに乗ったダイナミックなスパイラルで壮大なクライマックスを見事に演出し、全身を大きく使って空を飛んでいるかのような疾走感とともにリンクを駆け回ると、最後のトリプルサルコウも鮮やかに決めて最高の形でエンディングを迎えました。

あまりにも感動的な演技に会場中が大歓声と拍手に包まれ、総立ちで彼女の全日本最後の演技を称える様子を目の当たりにし、この場に立ち会えて良かったなと幸せを感じながらスタンディングオベーションを送りました。

【最高の演技で全日本の最後を迎えられる幸せ】

どの選手も現役を引退するときが必ずやってきますが、その現役最後の全日本をショートフリーともに最高の形で締めくくるというのは誰にでもできることではなく、こうした奇跡は私にとって歴代最高得点の更新や世界初のジャンプ成功などの記録に残る偉業よりもはるかに感動を呼び、フィギュアスケートを観ていて良かったと心から思える幸せな時間でした。

この感動の演技で144点台というとんでもない得点を叩き出し、総合得点は210点越えという見事な有終の美を飾りましたが、私の中ではもう順位や点数などはどうでもよく、この奇跡を見せてくれた明子ちゃんにただただ感謝の気持ちでいっぱいでした。

Lloyd Webber: Phantasia/The Woman In White Suite

そんなベテランの奇跡を目の当たりにした後、いよいよ私が8年間応援してきた選手の最後の演技を見届ける様子は次回お伝えします。

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Saturday, September 24, 2016

世界一過酷な全日本で最も光った演技

ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年ISUグランプリシリーズ - ロステレコム杯Beautiful moments of ISU Grand Prix Cup of Rostelecom Moscow 2013 (ビューティフル・モーメント・オブ・フィギュアスケート 2013年ISUグランプリシリーズ - ロステレコム杯Beautiful moments of figure skating)

4年に1度のオリンピック、その世界一過酷な代表選考会となった2013年の全日本もいよいよ最終日を迎え、今日全てが決まるんだと覚悟を決めて女子フリーへと向かいました。

女子フリーも男子と同じく最終グループに有力選手が固まっており、これが全日本最後の演技になる選手もいるかと思うと、6分間練習から一瞬たりとも目が離せませんでした。

【最初から最後まで観客を惹きつける驚異の才能】

そしてこの全日本最後の6分間練習が終わり、有力候補の先陣を切って最初に登場したのは、「戦場のメリークリスマス」に乗せた美しい演技でショート4位となり、シニアデビューにしてオリンピックを狙えるところまできた知子ちゃんでした。

「ポエタ」の荘厳な音楽とともに演技が始まり、冒頭のトリプルルッツ-トリプルトウループのコンビネーションを決めると、逆回転のスピンで序盤から観客を引き込み、トリプルフリップは軸が傾きましたが何とか着氷しました。

さらにトリプルループ、ダブルアクセルと立て続けにジャンプを決めていき、ここから静かな曲調へと変わり後半に入ると、ダブルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションを決めて安定感を見せました。

そして切なく静かな旋律に乗せて、しなやかな腕使いと柔らかい上半身の動きで洗練された見事なステップを見せ、会場からは自然と拍手が沸き起こる中、トリプルルッツからの3連続も落ち着いて決めました。

ここから美しいレイバックスピンで魅了し、静かに手を叩いて最後のジャンプ、トリプルサルコウも鮮やかに決めて曲はどんどん盛り上がっていきました。

クライマックスを迎える曲とともにスピードに乗り、美しく安定したスパイラルで観客を惹きつけると、その勢いのままに体全体を大きく使った疾走感あふれるステップでどんどん盛り上げ、最後のスピンが終わると音楽に合わせてピタッと止まるフィニッシュポーズでかっこよく締めくくりました。

あまりに素晴らしい演技に感動して鳥肌が立ち、演技が終わった瞬間から歓声と拍手が会場中に響き渡る中、私も立ち上がって全力で拍手を送りました。

【全ての動作が美しく洗練された完成度の高さ】

前日の男子フリーからこの女子フリーまで、この全日本では実績を積み重ねたベテランから将来が楽しみな若手までいろんな選手のフリーの演技を見てきましたが、私の目にはシニアデビューの彼女の演技が最も完成度が高く洗練された美しい演技に映りました。

それは単純にジャンプを全て決めたノーミスの演技だからというだけではなく、一つ一つの動きが洗練されていて、スピンやステップではどこを切り取っても美しく、一瞬たりとも目が離せない極上のプログラムに仕上がっていたからだと思います。

シニアデビューにしてここまで完成度の高い演技ができるなんて、これから彼女はどこまで進化していくんだろうと期待が膨らみ、彼女の成長をずっと見守っていきたいと強く思いました。

この鮮烈な演技で125点台という高得点を出し総合得点も190点を超え、シニアデビューの彼女が一気にオリンピックへのハードルを引き上げる素晴らしい戦いぶりを見せました。


そんな若手の素晴らしい演技の後、ベテラン勢の登場により女子も熾烈な戦いが繰り広げられる様子は次回からお話しします。

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Thursday, September 22, 2016

一年で様変わりした日本男子の勢力図

ワールド・フィギュアスケート 55

世界一過酷なオリンピック選考会となった2013年の全日本二日目は、女子ショートから男子フリーまで次々とドラマが巻き起こる長い長い一日でしたが、ついに男子フリーの最終滑走者を残すのみとなりました。

【世界一過酷な男子の最終決戦の結末】

男子フリーを締めくくる最終滑走として登場したのは、大ちゃんや織田くんとともに3強として前回のオリンピックに出場するなど長い間日本男子を引っ張り、ショート3位で再びオリンピックを狙える位置につけた小塚くんでした。

「序奏とロンド・カプリチオーソ」に乗せて全日本の男子最後の演技が始まり、緊張の中迎えた冒頭の4回転を何とかオーバーターンでこらえ、続くトリプルアクセルを鮮やかに決めると、トリプルルッツからの3連続も決めて順調な滑り出しを見せました。

そして後半に入り最初のジャンプ、トリプルアクセルからのコンビネーションを決めると、トリプルフリップにトリプルサルコウと落ち着いてジャンプを決めていき、さらに上品で軽やかなステップで魅了し会場からは自然と手拍子が上がりました。

いよいよ曲は終盤に入ると、2本目のトリプルルッツでまさかの転倒、会場からはああっと声が上がりましたが、最後はイーグルからダブルアクセル-ダブルトウループのコンビネーションを決めて美しい高速スピンで演技を締めくくりました。

ショートと同じく冒頭の4回転を何とかこらえ、このまま大きなミスなくまとめるかと思ったところでまさかの転倒というのは、彼の前に滑った町田くんと同じく最後に拍子抜けしてしまうような展開でしたが、上品な音楽に乗せて彼の上質な滑りを楽しめる素敵な作品でした。

そしていよいよ最終順位が決まる得点発表では、174点台という点数が発表され、彼はショートの3位という順位を守り全日本の表彰台が確定しました。

【若き才能が溢れる中でも輝きを放つベテランの魅力】

上位5選手が250点以上という過去最高レベルの戦いとなった全日本男子シングルは、羽生くん優勝、町田くん2位、小塚くん3位という結果で、1年前に私が初めて生観戦したスケートアメリカの表彰台と同じ顔ぶれとなりました。

1年前のスケートアメリカを見に行ったときはフライトの時間が迫っていて、日本勢が独占した表彰台を見ることなく会場を後にしたのが心残りだったので、ようやくこの3人の表彰台が見られるのかと思うと、あのときのスケアメがこの全日本に導いてくれたのかなと感慨深いものがありました。

しかしその一方で、この日表彰台に上がった3人以上に印象に残ったのは、若手に食らいついていこうとベテランながら2本の4回転に挑み、最後まであきらめず自らの個性を存分に生かし輝きを放っていた織田くんと大ちゃんの演技でした。

男子シングルにのめりこむきっかけとなった羽生くんや、同い年の選手として特別な想いで応援していた町田くんが、1年前のスケートアメリカから急成長を遂げてオリンピック代表に選ばれるというのは、私がずっと望んでいたことでした。

しかしこの全日本では小塚くんのショートの7拍子のリズムに乗せた軽快な滑り、織田くんのフリーの猫足着氷で次々と決める美しいジャンプ、そして大ちゃんのフリーの血に染まりながらも観客を惹きつける華麗な表現を目の当たりにして、日本男子に長年君臨してきた3強の魅力に今さらながら気づいてしまいました。

これまで応援してきた羽生くんと町田くんの躍進により、そんなかつての3強がオリンピックの代表枠を争わなければならないという現実は辛いものがあり、3枠では足りない・・・・・・4枠でも足りない・・・・・・5枠あればみんなが幸せになれたのに・・・・・・5人とも入賞できる力があるのにと、やりきれない気持ちを胸に抱えたまま会場を後にしました。


そんな複雑な想いを抱えたまま全日本最終日となり、いよいよ女子の戦いも決着のときを迎える女子フリーの様子は次回お伝えします。

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Wednesday, September 21, 2016

新たな芽が次々出てくる日本男子の成長

フィギュアスケートDays Plus 2013 Winter 男子シ

有力選手が次々と力をつけ群雄割拠の時代となった日本の男子シングルは、オリンピックシーズンの全日本で世界一過酷な戦いを繰り広げる中、フリーでは大ちゃんの悲壮感あふれる演技に会場中が心を揺さぶられていました。

【台風の目となった日本男子の新たな才能】

そんな大ちゃんの次に登場したのは、彼に憧れて大学までずっと彼の後を追ってきて、今やそんな憧れの選手とオリンピック代表枠を争うまでに成長した町田くんでした。

それまで大ちゃんの演技の余韻を引きずっていましたが、町田くんの成長をずっと見てきて彼を全力で応援しようと心に決めていたので、気持ちを切り替えて彼の成功を心から祈りました。

初めての生観戦で一目ぼれした「火の鳥」の旋律を1年ぶりに生で聴いて、興奮が高まっていく中最初の4回転を何とかこらえて、さらに緊張感が高まる2本目の4回転をコンビネーションにして鮮やかに決め、着氷後に鳥のようにぴょんっと跳び上がる彼とともによっしゃあとガッツポーズしました。

ここから勢いに乗って曲も迫力を増していく中、手と首を大きく使った音ハメが素晴らしく、その疾走感あふれる演技にどんどん引き込まれていき、その勢いのままトリプルアクセル-トリプルトウループのコンビネーションを華麗に決めました。

後半に入って優しい曲調に変わると柔らかい表現で惹きつけ、2本目のトリプルアクセルを決めると着氷後も美しい振付で魅了し、スピンでは手を羽のようにひらひらと優雅にはためかせ、指先まで綺麗で繊細な表現に思わず見とれてしまいました。

穏やかな曲調の中トリプルループを決め、トリプルルッツもこらえると再び曲は盛り上がっていき、トリプルフリップからの3連続を決め勢いに乗って最後のジャンプ、トリプルサルコウを決めて最高の形でエンディングを迎えました。

ついに実力を出し切ることができたと感慨に浸っていると、最後のステップの途中でいきなりつまずいてしまい、あまりに突然のことにあっけにとられ、頭が整理できず放心状態のまま演技が終わりました。

演技後も気持ちが整理できない中、とりあえずジャンプのミスなく大きな山は越えたなということだけはわかり、他の観客と一緒に立ち上がって拍手を送っていると、少しずつ緊張が解けじわじわと安心感で満たされていくのを感じました。

【一人の人間が急成長する姿を見られる幸せ】

この最後に拍子抜けするような感覚は、2011年のグランプリファイナルで一目ぼれした羽生くんの「ロミオ+ジュリエット」以来で、あのときも素晴らしい演技に感動していると最後のジャンプでつまずいてしまい、あっけにとられていたのを思い出して懐かしくなりました。

それでも有力選手の中でショートフリー通してジャンプを予定通り全て決めたのは彼だけで、この厳しい戦いの中でここまで実力を出し切れるようになるなんて、1年前にスケートアメリカで初めて「火の鳥」を観たときには想像もつかなかったなと思い、この1年で本当に強くなったなと一人の人間の成長に心を動かされました。

芸術性に強さが加わったこの「火の鳥」で183点台という素晴らしい得点を叩き出し、この時点で羽生くんに続く2位となり最終滑走者を残して表彰台が確定し、これまでの努力が報われコーチとともに喜びをかみしめる様子に、ここに至るまでの道のりを思い出しこみ上げてくるものがありました。


そんな日本男子の成長を感じた後、いよいよ迎える全日本の男子フリーの結末は次回お話しします。

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Tuesday, September 20, 2016

誰よりも多くの人を感情移入させる選手

高橋大輔 The Real Athlete DVD

世界一過酷なオリンピック選考会と言われた2013年の全日本は、多くのベテラン選手が現役最後のシーズンとして臨んでおり、男子フリーでは織田くんが自分らしく全日本最後の演技を終えるのを見届け、会場が盛り上がる中一人切なさに襲われていました。

【最後までもがき続けた選手の切なくも美しい姿】

そんな織田くんに続いて登場したのは、彼とともに長年日本男子を牽引し続け、日本における男子シングルの人気を一気に押し上げた功労者でもある大ちゃんでした。

怪我を抱えていて万全のコンディションではなかったものの、ショートでは何とか4位に踏みとどまりオリンピックへの可能性をつなげ、満身創痍でフリーに臨む彼の登場に、会場中のファンがD1SKと書かれたタオルとともに最大限の声援を送りました。

「ビートルズ・メドレー」の優しい旋律に乗せて演技が始まり、会場中が見守る中挑んだ最初の4回転で転倒、その瞬間ああっと声が上がり自然に応援の拍手が沸き起こり、観客の応援を後押しに2本目の4回転に挑みましたが回り切れずに着氷してしまいました。

しかしそこからトリプルアクセルを決めて意地を見せ、曲調が変わると持ち前の表現力豊かなステップでがらりと空気を変え、一挙手一投足に音を乗せ無駄な動作が一つもない洗練された動きで魅了し、会場からも歓声が上がっていました。

そして曲が一区切りし動きを止めて手を伸ばした瞬間、その手が血で赤くにじんでいるのが見え、ハッとしたところで曲調が変わり、傷を負いながらも滑り続ける姿にどんどん感情移入していきました。

後半に入って最初のジャンプ、トリプルアクセルで手をつきながらも何とかダブルトウループにつなげ、さらにトリプルルッツからの3連続を決めると会場からは歓声が上がりました。

しかし続くトリプルループがダブルになってしまい、もう足が限界にきているのが伝わってきて観るのが辛くなりましたが、次のトリプルフリップを決めると穏やかな曲調になって雰囲気がまたがらりと変わり、柔らかい動きで観客を惹きつけていきました。

そして最後のジャンプ、トリプルサルコウを決めると曲はどんどん盛り上がっていき、クライマックスでは自由にはばたく鳥のように全身を大きく使い、体中からあふれる想いが伝わってくる圧巻の滑りでした。

終わった瞬間全てを悟ったかのように笑顔を見せる様子が切なく、満身創痍の中最後まで滑り切った彼の姿に、会場中のファンが立ち上がってその勇姿を称え、声援と拍手がしばらく鳴りやみませんでした。

そして血でにじんだ手がモニターに映し出されると会場がどよめき、キスアンドクライではショートと同じく泣きそうな表情で、170点台という得点が発表され会場が静まり返る中、噛みしめるようにうなずく様子は正直見ていられないほど辛かったです。

【誰よりも多くのファンを魅了してきた本当の理由】

改めて地上波で放送された演技を観てみると、実況の西岡アナや解説の本田武史さんも演技後は声を震わせながら話していて、いつも冷静な二人がここまで感情移入する様子に驚き、彼が男女問わずあれほど多くのファンを魅了する理由がわかった気がしました。

それまで大ちゃんは男前だから女性ファンが多いんだろうなとか、彼独特の芸術性や表現力に憧れる男子選手が多いんだろうなとか表面的なところしか見ていませんでしたが、容姿も演技も美しく非の打ちどころのない偶像というだけではなく、ときには弱さや脆さを見せる普通の人間だからこそあれだけ多くの人が彼を応援してきたんだなと納得しました。

フロム・イエスタディ・トゥ・ペニー・レイン/ セルシェル・プレイズ・ビートル

そんな誰もが応援したくなるような演技に心を揺さぶられた後、いよいよ男子の戦いが終盤を迎える様子は次回お伝えします。

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Sunday, September 18, 2016

長年男子を率いた選手の全日本の最後

フィギュアスケートdays vol.8 巻頭特集:2008全日本選手権/織田信成インタビュー

オリンピックシーズンの全日本二日目は、非常に見ごたえのあった女子ショートの後に勝負の男子フリーが控えるという、観る方にとっても心臓が持たないほど長い一日でしたが、そんな男子フリーもついに佳境を迎えました。

【最後の最後に自分らしさを出せた選手】

羽生くんの次に登場した有力候補は、現役最後のシーズンとして、ショート5位から逆転のオリンピック出場を狙う織田くんでした。

「ウィリアム・テル序曲」に乗せて彼の全日本最後の演技が始まり、今日こそは4回転が決まりますようにと祈りながら見つめた最初のジャンプ、4回転トウループ-トリプルトウループを猫足着氷で鮮やかに決め、興奮が高まっていく中迎えた2本目の4回転トウループはトリプルになりながらも何とかこらえました。

次のコンビネーションジャンプでトリプルトウループを飛ばないか心配でしたが、予定通りトリプルアクセル-ダブルトウループのコンビネーションにしてザヤックは回避できて安心しました。

そして演技は後半に入り、2本目のトリプルアクセルを柔らかく着氷すると、続くトリプルルッツ-シングルループ-トリプルサルコウの3連続も美しく、トリプルフリップも綺麗に決めて持ち前の美しいジャンプで観客を惹きつけました。

続くトリプルループも何とかこらえると、おなじみのメロディーに乗せて観客の手拍子がどんどん大きくなり、盛り上がってきたところで最後のジャンプ、ダブルアクセルを決めて笑顔で最後のステップを迎えました。

最後に笑顔でのびのび滑ることができて良かったなと思うと、嬉しさと同時に切なさが押し寄せてきて、手拍子しながら最後のスピンまでしっかりと目に焼き付けました。

最後まで笑顔で滑り切った素晴らしい演技に、終わった瞬間から観客は続々と立ち上がり、自分らしさとともにまとめ上げた彼の全日本の最後は、心に染み入る美しい時間でした。

【会場の和やかな空気の中一人噛みしめる切なさ】

この魂のこもった演技で178点台という高得点を出し、点数を見て笑顔で満足そうにうなずいていましたが、コーチのお母さんと抱き合った後には感極まったのか泣き顔に変わり、織田くんのトレードマークでもある泣き顔に会場からは笑いが起きていました。

しかしショートで決まらなかった4回転を決めるなど、全日本最後のフリーで意地を見せ自分らしく滑った織田くんの勇姿を見て切なくなり、いつもは微笑ましいなと思っていた彼の泣き顔を見ても、このときの私は笑うことができませんでした。


織田くんの素晴らしい演技に会場は盛り上がる一方、私自身は切なさに襲われていましたが、この後もまだまだ続く有力選手のドラマに心を揺さぶられる様子は次回お話しします。

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Saturday, September 17, 2016

ベテランから若手まで幅広い世代の活躍

フィギュアスケート2013-2014シーズンオフィシャルガイドブック (アサヒオリジナル)

オリンピックシーズンの全日本二日目は、次々と素晴らしい演技を見せる女子のメンタルの強さにただただ圧倒されているうちに、女子ショートも最終滑走者を残すのみとなりました。

【女子のメンタルの強さを示したハイレベルな戦い】

このとんでもなくハイレベルな戦いの最後を締めくくるのは、病気を乗り越えて前回のオリンピックへの出場を果たし、遅咲きながら世界選手権での銅メダルなど着実に実績を積み重ねてきた、鈴木明子さんでした。

私に生観戦の魅力を教えてくれた明子ちゃんにとって、これが現役最後の全日本になるとわかっていたので、この演技をしっかり目に焼き付けようと集中しました。

「愛の讃歌」の優しいメロディーに乗せて、20代後半で身に付けたトリプルトウループ-トリプルトウループのコンビネーションを降りると、トリプルフリップも鮮やかに決めて観客を引き込んでいきました。

後半で曲の盛り上がりに合わせて最後のジャンプ、ダブルアクセルを決めると会場からは大歓声が上がり、最後のスピンの途中からは拍手が鳴りやまず、演技が終わった瞬間観客が一斉に立ち上がりました。

女子のハイレベルな戦いを締めくくるにふさわしいベテランの円熟味のある演技に、会場中から拍手と歓声が沸き起こる様子には鳥肌が立ち、初めて明子ちゃんの演技を生で観たときに感じたように、彼女は観客を惹きつける才能がある唯一無二の選手だなと再認識しました。

明子ちゃんはこの演技で会場もどよめく70点台という高得点を出し、女子ショートの結果は真央ちゃん1位、明子ちゃん2位、佳菜子ちゃん3位となり、素晴らしい演技が続出で見ごたえのある戦いとなりました。


とんでもなくハイレベルな戦いに全精力を使い果たしてしまい、しばらくその余韻にぼーっと浸っていたいところでしたが、この後は男子フリーが控えていたので、何とか気持ちを切り替えて男子の戦いに集中しました。

【世界一過酷な男子の最終決戦の幕開け】

男子フリーは最終グループに有力選手が固まる中、その先陣を切ったのはショート1位で全日本連覇を狙う羽生くんでした。

グランプリファイナルでパトリックを破るという大金星を挙げたフリーの「ロミオとジュリエット」では、ファイナルで決まらなかった4回転サルコウに果敢に挑み、今回も転倒してしまいましたが、続く4回転トウループは何とかこらえて持ち直しました。

後半もトリプルアクセルからのコンビネーションなど高難度ジャンプを次々と決めて失敗する気配がなく、最後のトリプルルッツも何とかこらえると見せ場のイナバウアーで観客を引き込み、ファイナルと同じく4回転サルコウ以外は素晴らしい内容でした。

この演技でファイナルに引き続き190点台という素晴らしい得点を叩き出しましたが、ファイナルと同じく点が出過ぎだと思ったのか複雑な表情を見せ、満足していない様子でまだまだ伸びしろがあることを感じさせました。


女子から男子まで全日本をずっと観ていると、20代後半の明子ちゃんのようなベテランから10代の羽生くんのような若手まで、幅広い世代の選手が第一線で活躍できるというのは日本の強みだなと思いました。

こうして女子ショートから男子フリーへと続く長い一日もついに佳境を迎え、男子のオリンピック代表争いの最終決戦が繰り広げられる様子は次回お伝えします。

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Friday, September 16, 2016

日本女子のメンタルの強さと爆発力

ワールド・フィギュアスケート 46

オリンピックシーズンの全日本は二日目を迎え、女子ショートではいつか生で観てみたいと願っていた演技を次々と観ることができ、夢見心地の中まだまだ有力選手が控えていました。

【選手のイメージにぴったりの秀逸な作品】

美姫ちゃんの次に登場したのは、前回のオリンピックでの銀メダルや世界選手権優勝など数々の実績を残し、長年日本の女子フィギュアを引っ張ってきた、浅田真央選手でした。

真央ちゃんの登場とともに会場は大声援に包まれ、彼女はやはり日本のファンにとって特別な存在なんだなと実感しました。

「ノクターン」の明るいピアノの音色に乗せて演技が始まり、最初のトリプルアクセルを降りると会場からは大きな歓声が上がり、続くトリプルフリップも決めて勢いに乗っていきました。

さらに美しいスピンで魅了すると、後半のトリプルループからのコンビネーションも軽やかに決め、可憐に舞うステップも美しく、終盤ではピアノの旋律と見事に調和したスピンで最後まで観客を惹きつけました。

明るくきらきらしたピアノの音色に乗せて可憐に舞う姿はまさに私のイメージする真央ちゃんそのもので、この「ノクターン」は本当に彼女にぴったりの曲だなと思いながら、大歓声とともに次々と立ち上がる周りの観客と一緒にスタンディングオベーションを送りました。

真央ちゃんはこの美しく完成された演技で73点台という高得点とともに堂々のトップに躍り出て、過酷なオリンピック代表争いで一歩抜け出す素晴らしいスタートを切りました。

ショパン:夜想曲全集

【大舞台で持ち前の爆発力を見せる選手】

そして最終グループも終盤にさしかかる中登場したのは、世界ジュニアで優勝してシニアデビュー以降もジュニアの勢いそのままに駆け抜け、シニアとして初めてのオリンピックシーズンを迎える、村上佳菜子選手でした。

「ヴァイオリン・ミューズ」の激しい旋律に乗せて勢いよく最初のジャンプへ向かい、トリプルトウループ-トリプルトウループのコンビネーションを鮮やかに決めて最初から気迫を感じました。

後半のトリプルフリップとダブルアクセルも鮮やかに決め、ものすごい気迫で観客を惹きつける見事なステップを観ていると、シニアデビューのシーズンに「ジャンピン・ジャック」に乗せてうさぎのように元気に跳ね回っていた姿を思い出し、改めて爆発力のある選手だなと思いました。

素晴らしい演技に本人は終わった瞬間から顔をくしゃくしゃにして泣き出し、泣きながらお辞儀をする彼女を観て微笑ましいなと思いつつも、すごいプレッシャーだったんだろうなと思うとこちらまで泣けてきて、会場も明るい雰囲気になり総立ちで温かい声援と拍手を送りました。

キスアンドクライでくしゃくしゃの顔が映し出され会場から笑いが起きる中、67点台という素晴らしい得点が出てまた泣き出してしまい、その様子に再び会場から笑いが起きるという和やかな雰囲気で、感情をさらけ出す素直で天真爛漫なところがファンに愛されるんだなと感じました。

Violin Muse

オリンピックシーズンにもプレッシャーをものともしない素晴らしい演技の連続に、改めて女子のメンタルの強さを感じた全日本ですが、まだまだ目が離せない女子の戦いと、そこから息つく間もなく始まる男子の戦いについて次回はお話しします。

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Tuesday, September 13, 2016

長年の夢が次々と叶っていく幸せな時間

Merry Christmas, Mr. Lawrence: Soundtrack From The Original Motion Picture

オリンピックシーズンの全日本では、初日から男子の大熱戦を目の当たりにして、女子の戦いはどうなるだろうと想像するだけでも胃が痛くなりましたが、二日目も気を引き締めて会場に向かいました。

【フィギュアの世界を知った思い出の作品】

女子もオリンピック代表候補のトップ選手がひしめき合う大混戦の中、ショートで有力候補として最初に登場したのは、先シーズンの全日本でジュニア選手ながら3位となり初めて表彰台に上がった、宮原知子選手でした。

彼女のショートは8年前の全日本で美姫ちゃんが滑っていて、フィギュアを観るきっかけになった「戦場のメリークリスマス」ということもあり、特別な思いで見つめていました。

静かなピアノの旋律に乗せ、しなやかな動きで観客を惹きつけるステップから始まり、その美しいステップに会場からは自然と拍手が沸き起こりました。

そこから穏やかなメロディーラインに乗せてトリプルルッツからのコンビネーションを見事に決め、さらに美しいビールマンスピンで観客を魅了しました。

中盤では「ラストエンペラー」の疾走感ある曲へと変わり、勢いに乗ってトリプルフリップを決め、続くドーナツスピンも綺麗でただただ見とれていました。

そして再び「戦場のメリークリスマス」の曲に戻ると、盛り上がる曲調と共に自然と手拍子が大きくなり、曲の一番の盛り上がりでダブルアクセルを鮮やかに決めると、終盤の畳みかけるようなピアノの旋律に合わせた見事な逆回転スピンで最後まで観客を惹きつけました。

心が洗われる素敵な演技に観客は総立ちで、私もただただ感動してスタンディングオベーションを送り、しばらくこの美しい作品の余韻に浸っていました。

純粋無垢な少女が可憐に滑る姿を観て8年前に美姫ちゃんがこの曲に乗せて滑っていたのを思い出し、それ以来いつか生で戦メリの素敵な作品を観たいなと思っていましたが、知子ちゃんのステップ・ジャンプ・スピン全てが美しい完成されたプログラムを観て、ようやくその夢が叶ったんだなと幸せな気持ちで満たされました。

この完成度の高い演技に66点台という高得点が出て、ジュニアから上がったばかりの選手がオリンピック代表争いで素晴らしいスタートダッシュを見せました。

【8年越しの想いがついに実った瞬間】

そしていよいよ最終グループとなり、6分間練習で長年憧れていた美姫ちゃんの姿を見つけた瞬間、ああ本物の安藤美姫だと鳥肌が立ちました。

8年間憧れていた選手の演技がついに観れるなんて信じられないという気持ちで、心の準備もできないまま第一滑走の彼女の出番がやってきて、会場からの温かい声援を聞いてこれだけのファンが彼女を支えているんだと嬉しくなり、すでに感極まりそうになるのを何とかこらえてこれから始まる演技に集中しました。

「マイ・ウェイ」の優しい旋律と共についに彼女の演技が始まり、最初のジャンプまでただただ食い入るように見つめていましたが、トリプルトウループ-トリプルトウループのコンビネーションを見事に決め、あまりの嬉しさによっしゃあと声を殺して叫びガッツポーズしてしまいました。

さらに得意のトリプルルッツも鮮やかに決めて、彼女の華麗なジャンプが目の前で観られるという奇跡に感激してしまい、演技序盤ですでに夢見心地でした。

最後のジャンプも決まりますようにと祈りながら迎えた後半、美しいスパイラルからダブルアクセルを決めた瞬間、涙で目の前がかすんで演技がほとんど見えなくなりました。

そこからは最後まで涙が止まらず、演技が終わると会場からは温かいスタンディングオベーションが送られ、その光景にまた感動して涙を流しながら立ち上がって拍手を送りました。

得点も64点台と知子ちゃんに次ぐ高得点でしたが、何より美姫ちゃんのノーミスの演技を一度でいいから生で観てみたいという夢が叶ったことが嬉しくて、8年間フィギュアスケートを観てきた中で間違いなく一番幸せな時間でした。


そんな幸せの余韻に浸りながらも、まだまだ続く女子の熾烈な戦いを目の当たりにする女子ショートの続きは次回お伝えします。

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Monday, September 12, 2016

波乱の一日を締めくくる全日本名物

フィギュアスケートDays Plus 2011‐2012男子シングル読本

オリンピックシーズンの全日本を初めて生で観戦し、目の前で次々と巻き起こるトップ選手達のドラマに心を揺さぶられてきた男子ショートですが、そんな波乱の一日を締めくくる選手の登場で再び会場は熱気に包まれました。

【密かに楽しみにしていた全日本名物の登場】

豪華な顔ぶれの中最終滑走で登場したのは、日本男子のエンターテイナーとして観客を楽しませてきた全日本の名物選手、佐々木彰生さんでした。

私がフィギュアを見始めてからは高橋大輔・織田信成・小塚崇彦の男子3強時代が長く、さらに羽生結弦・町田樹と新たな選手の躍進もあり、日本男子のレベルの高さ故なかなかお茶の間で彼の演技を観る機会がなかったため、全日本はそんな個性あふれる選手の演技を観れるというのが一つの楽しみでもありました。

そんな全日本の密かな楽しみだった彰生さんの登場に会場からは大きな声援が送られ、彼の人気ぶりを肌で感じるとともに、この世界一過酷なオリンピック選考会で最終滑走を引き当てる彼はやはり持ってるなと思いました。

演技前の体を大きくひねった独特のポーズから、「風神」の勢いある旋律に乗せてキレの良い動きで観客を惹きつけ、序盤からいきなり大きな手拍子が沸き起こりました。

観客からの手拍子に後押しされ、勢いよく向かった最初のトリプルアクセルは転倒してしまいましたが、続くトリプルルッツからのコンビネーションは見事に決めて立て直しました。

後半も曲が盛り上がっていく中、全身を使ったキレのあるステップで会場を盛り上げ、自然と手拍子も大きくなっていきました。

キレキレのステップで勢いに乗って迎えた最後のジャンプ、トリプルフリップは片手を上げて華麗に決め、フィニッシュは二の腕を見せる独特のポーズで最後まで観客を楽しませました。

【張り詰めた空気を和ませる稀有な存在】

個人的には演技前とフィニッシュのポーズが面白いなと思っていて、それを楽しみに観ていたところがあったのですが、キレキレのステップや片手を上げたジャンプなど華麗な動きにも魅了され、手拍子しながら楽しんで観ることができました。

自身の名前が書かれたうちわを持って笑顔で採点を待つ姿には癒され、点数が出てガクッと肩を落とす様子も微笑ましく、あれだけ緊張感で張り詰めていた全日本をこんな和やかな形で締めくくれるのは彼しかいないなと確信し、改めて全日本になくてはならない存在だなと感じました。


こうして長かった一日が終わり、男子ショートの結果は羽生くん1位、町田くん2位、小塚くん3位でトップ3選手が全員90点以上という、これまで観たこともないほどハイレベルな全日本の幕開けとなりました。

しかし翌日の女子ショートではさらにハイレベルな戦いが待ち受けており、日本女子の強さを目の当たりにした女子ショートについては次回からお話しします。

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Sunday, September 11, 2016

会場でしか味わえない熱気と一体感

フィギュアスケートファン 2012 高橋大輔・小塚崇彦・安藤美姫・羽生・今井・世界のスケーター大 (COSMIC MOOK)

オリンピック代表候補の演技に一喜一憂してきた全日本の男子ショートは、羽生くんの貫禄あふれる演技を皮切りに続々と有力選手が登場しました。

【怪我との闘いに苦悩する選手と観客】

羽生くんに続いて登場したのは、前回のオリンピックで大怪我から見事に復帰して日本男子初となるメダルを獲得するなど、長年日本男子を引っ張り日本のフィギュア界に大きく貢献してきた高橋大輔さんでした。

彼が登場すると物凄い歓声と共にD1SKと書かれたタオルが会場を埋め尽くし、彼がどれだけ日本のファンに愛されているかというのを肌で感じることができ、これだけ熱気にあふれる会場の空気はもう二度と味わえないかもしれないと思い、この光景をしっかり目に焼き付けました。

怪我を抱えていて万全のコンディションとは言えなかったこの全日本のショートでは、最初の4回転で両足着氷になりながらも何とかこらえ、続くトリプルアクセルは成功したと思った瞬間転倒してしまい、ジャンプのたびに会場から歓声や悲鳴が上がっていました。

最後のトリプルルッツからのコンビネーションは何とか決まり、会場からは大歓声が上がっていましたが、最後のスピンでもふらつくなど怪我の影響で実力を出し切れず、見ていて辛くなる演技でした。

採点を待つ彼が呆然とした表情で今にも泣きそうなのを見てこちらまで切なくなり、転倒や回転不足の影響で点数も伸びず、羽生くんの演技後の興奮から一転して会場は重苦しい空気になりました。

【軽快なリズムで会場を一つにした演技】

そんな沈んだ空気の中登場したのは、スケート一家に生まれフィギュア界のサラブレッドとして期待され、長年日本代表として世界選手権銀メダルなど数々の実績を残してきた小塚崇彦さんでした。

冒頭の4回転を何とかオーバーターンでこらえると、「アンスクエア・ダンス」の7拍子のリズムに合わせて会場からも手拍子が上がり、私もこの独特なリズムに何とかついていこうと必死で周りに合わせて手拍子しました。

大きな手拍子で盛り上がる中トリプルアクセルを綺麗に決め、7拍子のリズムに乗った軽やかな滑りで魅了し、こちらも手拍子でリズムを取りプログラムの一部になったような気分で楽しめました。

そして前半が終わると曲調が変わり、こちらも手拍子を止めて一息つきながら見守る中迎えた後半のコンビネーションジャンプは、最初のトリプルルッツでオーバーターンしてしまい、これはまずいと思っていたら何とそこからトリプルトウループを付けて根性を見せました。

そして再び7拍子のリズムになると自然と観客から手拍子が上がり、私もこのリズムにだいぶ慣れてきて楽しんで手拍子に参加できるようになり、リズムを取りながら彼のつるつる滑る軽快で美しいステップを観るのは心地よく、最後まで楽しんで観ることができました。

ジャンプのミスを最小限に抑えて美しいステップやスピンで得点を稼いだ結果90点台の高得点が出て、本人は予想外の高得点に驚いて小動物のようにくるくる表情を変え、不思議そうに両手を広げて観客を笑わせていて、この素直で謙虚なところが日本のファンに愛される理由なんだろうなと微笑ましく思いました。

この「アンスクエア・ダンス」はお茶の間で観ても十分楽しめますが、やはり会場で手拍子に参加しながら観るのは格別で、選手と観客と音楽が一つになって作り上げる一体感を楽しめるこのプログラムは、会場まで観に来て良かったなと思える素敵な作品でした。


そんな会場を楽しませてくれた小塚くんの演技が終わり、会場全体に張り詰めていた緊張感もほぐれてきましたが、まだまだ観客を盛り上げる選手の登場に目が離せない男子ショートの続きは次回お伝えします。

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Saturday, September 10, 2016

立派に成長していく頼もしさと寂しさ

フィギュアスケートファン通信10 (メディアックスMOOK)

町田くんの全身全霊の演技に気力を使い果たしてしまい、序盤ですでに抜け殻のような状態になっていた全日本の男子ショートですが、ここから次々とオリンピックの有力候補が登場するため、何とか気持ちを奮い立たせて目の前の試合に集中しました。

【大舞台の重圧と闘う難しさ】

町田くんと同じグループで登場したのは、長年日本を背負って活躍してきた織田信成さんで、彼にはNHK杯での素晴らしい演技を再現してほしいと願っていました。

祈りながら見つめた最初の4回転は3回転になってしまい、そこからはザヤックを回避できるかハラハラしながら見つめていましたが、続くトリプルアクセルを決めて立て直し、最後のトリプルルッツに2回転を付けて何とかザヤックは回避できてほっとしました。

しかし4回転が決まらなかったからか表情は硬く得点も伸びず、特にオリンピックシーズンの大事な全日本ということもあり、とんでもないプレッシャーの中で良い演技をすることの難しさを肌で感じて切なくなり、改めて大事な試合で4回転を決めることの重要性を痛感しました。

【重圧をものともしない貫禄の演技】

最終グループを残してすでに山あり谷ありの展開で一日がとてつもなく長く感じていましたが、ついに最終グループとなりここから有力選手が次々に登場しました。

まず優勝候補として登場したのは、グランプリファイナルでパトリック・チャンを破って見事優勝し、オリンピックの金メダル候補として期待されていた羽生結弦選手でした。

前回の世界選手権を見に行ったとき、これまで世界記録を更新し続けてきた「パリの散歩道」を初めて生で観れると楽しみにしていたのですが、そのとき羽生くんは怪我を抱えていて状態が悪く、まさかのミスが続いて完成形を見ることは叶いませんでした。

今日こそ完成形が見たいと願いながら見つめたこの全日本では、最初の4回転を綺麗に決め、余裕すら感じるような魅せる演技で観客を引き込み、トリプルアクセルも美しく決めて失敗する気配がありませんでした。

そしてジャンプはコンビネーションを残すのみとなりましたが、最初のトリプルルッツで軸が大きく傾いてしまい、転倒するかと思いましたが何とかトリプルトウループを付け、一瞬ヒヤッとしましたが終わってみれば完璧な内容でした。

ようやくこの「パリの散歩道」の完成形を生で観れたのが嬉しく、さらにこれまでのような必死でがむしゃらに滑る姿はどこにもなく、余裕を持った魅せる演技ができるほどに成長した姿には大人の貫禄すら感じられ、何の不安もなく純粋に演技を楽しむことができました。

得点もついに大台の100点を突破し余裕のトップでショートを終えた彼を見て、プレッシャーにもびくともしないほど立派に成長した姿を頼もしく思いつつ、あのがむしゃらな姿はもう見れないのかなと少し寂しさも感じ、わが子の成長を見届ける親のような気分で大人になった彼を見つめていました。


目の前で巻き起こる様々なドラマにいろんな感情が渦巻き、気持ちを整理する余裕もない男子ショートですが、一息つく間もなくここから立て続けに有力選手が登場する様子は次回お話しします。

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Friday, September 9, 2016

20年かけて花開いた遅咲きの選手

エデンの東 新訳版 (1)  (ハヤカワepi文庫)

かつてないほど選手層が厚くなっていた2013年、ソチオリンピック代表を決める全日本選手権は、世界一過酷なオリンピック代表争いといっても過言ではありませんでした。

8年間フィギュアスケートを観てきて、ずっと第一線で活躍していたベテランの選手から最近頭角を現してきた期待の選手まで、これだけ有力選手が集まる試合はもう二度と見れないかもしれないと思い、意を決して全日本のチケットを取りました。

そしてついに迎えた全日本初日、これまでの現地観戦では感じたことのない緊張で生きた心地がしませんでしたが、しっかり見届けようと気を引き締めて男子ショートへと向かいました。

【長年フィギュアを見続けようやく出会った同い年の選手】

日本男子はもはや誰を応援していいのかわからないほど有力選手がひしめき合っていましたが、その中で私と同い年の選手がいました。

それは私が1年前に初めて生観戦したときから惹きつけるものがあり、それから1年経ったオリンピックシーズンに見違えるほど成長していた、町田樹さんです。

それまで多くの選手の活躍を見てきましたが、同世代の選手は多いのに同い年の選手は一人もいないのかと少し寂しく感じていて、初めて彼の鮮烈な演技を目の当たりにしてから気になっていろいろ調べてみると、何と同い年で誕生日も数日違いということがわかって感激しました。

ようやく同い年の選手に巡り合えて、しかもそれが初観戦のときに引き付けられた選手とあって、彼の活躍が自分のことのように嬉しく、同い年の子が1年でこんなに変われるんだと勇気づけられていました。

【自ら運命を切り開いていく姿に胸を打たれた瞬間】

そんな町田くんが男子ショートでは有力選手の中で最初に登場し、極限の緊張感で胸が張り裂けそうになりながらも、ただただうまくいくことを祈って見つめていました。

そしてついに「エデンの東」の優しい旋律が流れ出し、ゆっくりと動き出して最初の4回転へと向かっていく彼を見つめている時間はとてつもなく長く感じられ、絶対決めてほしいと願っていた最初の4回転を着氷し、さらに3回転を付けてコンビネーションが決まった瞬間「よし!」と小さく囁きガッツポーズしている自分がいました。

しかし次はトリプルアクセルだとすぐに気を引き締め、祈りながら見つめたトリプルアクセルも美しく決める彼を見て、このシーズンのテーマにしていた「ティムシェル」という言葉を思い出し、まさに自分の運命を自分で切り開いていく姿がそこにはありました。

そして後半に入りいよいよ最後のジャンプ、トリプルルッツも見事に決めて、クライマックスを迎える曲調と共にこちらも感情が高まり、最後は興奮と感動で胸がいっぱいでした。

演技を終えると彼はゆっくりと握りしめたこぶしを引き寄せ、その後力強くガッツポーズして顔を覆い、かみしめるように何度もガッツポーズする様子を見て感極まってしまい、泣きながらスタンディングオベーションを送りました。

この「エデンの東」という作品に込められたテーマを見事に体現した彼は、93点台という素晴らしい得点でオリンピックへの大きな一歩を踏み出し、20年かけてようやくここまで来た遅咲きの彼に絶対にオリンピックに行ってほしいと思い、彼を全力で応援しようと心に決めました。

EAST OF EDEN ORIGINAL SOUNDTRACK SCORES

町田くんのスケート人生を懸けた全身全霊の演技で幕を開けた男子のオリンピック代表争いはここからさらに熾烈を極め、目まぐるしく変わる展開に心を揺さぶられる様子は次回お伝えします。

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Thursday, September 8, 2016

男子フィギュア界の勢力図が変わった瞬間

ワールド・フィギュアスケート 62

オリンピックシーズンのグランプリファイナルで、男子フリーでは各選手がクラシックに乗せた個性的な演技で魅了していく中、いよいよ優勝が決まる最終局面を迎えました。

【力尽きるまで攻め続けた若き才能】

最終滑走はショートで圧倒的な演技を見せて世界記録を更新し、堂々の首位でフリーを迎えた日本期待の星羽生くんが登場し、赤や黄色などカラフルなストーンが散りばめられた女性が着るような華やかなデザインの衣装を、独特の中性的な雰囲気で見事に着こなしていました。

2シーズン前とは別バージョンの「ロミオとジュリエット」に乗せて、勢いよく最初の4回転サルコウに挑みましたが転倒、しかしすぐさま立ち上がり次の4回転トウループは見事に決め、続くトリプルフリップも決めて勢いに乗っていきました。

後半もトリプルアクセルからのコンビネーションを立て続けに決めると、高難度ジャンプを次々と成功させて最後のジャンプも決め、終盤の見せ場では美しいイナバウアーで観客を引き込みました。

珍しく最後のスピンでぐらつき、フィニッシュでは生まれたての小鹿のような状態で力尽きているのを見て、2シーズン前のロミオとジュリエットでも最後にばてていたのを思い出して懐かしくなりました。

【無敵の世界王者の地盤を揺るがす大金星】

この素晴らしい演技でパトリックを上回る193点台の高得点を出し、予想外の点数に本人は納得していない様子で表情を曇らせて首を横に振っていましたが、大事なオリンピックシーズンのグランプリファイナルで見事に優勝を決めました。

点数に納得していない彼を見て、以前全日本で自分の点が出過ぎだと言っていた小塚くんを思い出し、日本人選手はこういう素直で謙虚なところが良いなと思いました。

確かにホームということで点数が高くなったのかもしれませんが、ショートでの貯金があったのでこれがホームの試合でなくても彼が優勝していたと思います。

そして今までミスをしても圧倒的な実力で勝ち続けていたパトリックがほぼ完璧なフリーを見せたにもかかわらず、フリーでミスをした羽生くんがそのパトリックを破って優勝したというのが何より大きいと思います。

この大会でこれまでパトリックが絶対王者として君臨していた男子フィギュア界の勢力図が変わり、羽生くんがパトリックを脅かす存在になった瞬間を目の当たりにして、これは男子フィギュアの一大転機になったなと感じました。

そんな瞬間を目撃することができた観客の皆さんが羨ましいですし、上位3選手だけでなく町田くんの演技も素晴らしかったこの大会は、もし過去の男子の試合を一試合だけ生観戦できるなら間違いなくこの試合を選ぶと言えるほど、素晴らしい演技が多く見ごたえのある大会だったと思います。


そんな試合をお茶の間で見ていて現地観戦したい気持ちが抑えられず、ついに初めて全日本のチケットを取り、オリンピックシーズンの死闘を目撃する様子は次回お話しします。

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